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ラインブレイカー  作者: MAQ
2/5

“プロローグ2” 入学式にて


「諸君。本日は入学おめでとーございます。」


担任の先生がちょっとダルそうに言う。

まだ年は若いが元気はなく、目が眠そうに申し訳程度に空いている。


折角の晴れの門出なのにちょっとテンション下がるな。


田中元はそんな事を考えていた。


「私が君達の担任になった小井川蓮コイカワ レンです。

気軽にコイちゃんとかレンレンとか呼んだら退学にするから。

気を付ける様に。」


真顔で言っている。

うちの担任ヤバくない?そんな空気が1年2組の教室を纏う。


「じゃあ、クラスに一体感も生まれた所でちょっと学校の説明します。」


成程。

高校になると先生も一筋縄じゃいかないのか…

面白いぜハイスクール!


中学時代の優しかったちょっとふくよかな順子先生を思い出しながら身構える。


「えーうちの学校、創英高校は私立です。

出来たばっかで校舎も綺麗だから結構人気ある。

間口も広げてるから色んな生徒がいる。

馬鹿もいれば勉強できる奴も。まぁ心配しなくても2年になったらバッサリクラス分けされるので

自分にあったレベルで勉強できるぞ。」


その話を聞いて隣の席の晃希がおもむろに眼鏡を取り出して装着しうんうんと先生の話を頷いて聞いている。


晃希の視力は2.0だ。

中学の成績は体育以外1か2だ


「校長がスポーツに力を入れてるからスポーツ特待生とかもいるぞ。

自信あるやつは部活頑張れ。ないやつは頑張らなくて大丈夫だぞ」


俺も晃希も勉強だけで創英に入れた訳じゃない。

創英には筆記試験と面接がある。

俺と晃希は面接で部活を頑張っていた事をアピールする様に

順子先生に言われ日夜面接練習だけに取り組んだ。


その結果あの成績で高校進学というドリームを掴んだ

順子先生ありがとう!


「学校の説明はこんな感じだ。なにか疑問があったら聞きにきてくれ。

じゃあ、みんな自己紹介な。足立さんから順番にどうぞ」


そういうと担任の小井川は教壇から担任だけに許された

右の謎のスペースに腰を下ろす。


足立さんと呼ばれた女性はいそいそと教壇に移動する。


「足立里香です。出身中学は・・・」


***


その後も自己紹介が続く

隣の晃希は女子の時は顔を上げ、男子の時はスマホに視線を落とし

モン〇トの高速周回していた。


「次は、大神君。」


「ハッ!」

はっ?

晃希はどこかの軍隊の様な返事してキビキビ歩く。


晃希は黒板の前に立ちチョークを握る。

自己紹介の前に黒板に名前を書くのが自己紹介のルールだ。


カッ、カツ、カツ、


チョークが板書の音をたて、名前を書き終えた晃希はチョークを置きこちらに振り返る。


hirochan0819


そこには晃希のLINEIDが書いてあった。


「何やってるの?」

小井川がすかさず突っ込む。


「あっ。すいません間違えました。」


晃希は黒板消しで何故か飯野拓海と書かれた名前を消す。


「え?・・・え?」

飯野君は困惑している。


「あー。君ね大神君。噂は聞いてるよ。」

合点がいったように小井川はうむうむと頷く


「入学前からうちの生徒にちょっかい出してるって。」

何故そんな事をこの担任は知ってるんだ?

確かに俺と晃希は入学前から創英生とコンタクトをとり

春休みを謳歌していた。


「先生…その情報。どこで?」

晃希は小井川の方をゆっくり見ながら

大した事ない事を大層に聞く。


「いや、俺。在校生の女子のLINEグループとか結構入ってるから。

情報入ってくるんだよね。

先生の情報網をなめちゃ駄目だよ。」

小井川はそう言って席を立つと晃希のLINEIDを黒板消しで消す。


「クソっ!このソーシャルワーカーめっ!」

晃希はその場に崩れ落ちる。


「SNSの恩恵受けようとしたくせに。ったく最近の高校生は。

大神君罰として一番辛い係に任命します。」


「なっ!」

晃希、驚愕の表情。


「運搬係。なんか重い物運ぶ時全部君が運ぶ。」


「なんだよそれ!ただの雑用じゃないか!」


「我が国を支えているの24時間動き続ける物流だ。お前もその一員となれ。

あと、飯野君に謝りなさい。彼、名前消されてビックリしてたから。」

小井川の視線が飯野君に向く

晃希もそちらを向く


「ごめんなさい。」

晃希は頭を下げる。


「いや・・・うん。大丈夫。」

飯野君は困惑しながら答えていた。


「飯野は災難だったからな。一番楽な係任命するぞ。」

飯野君は呼び出し係(先生が授業忘れて来ない時に先生を呼びに行く係)に任命された。


***


「櫻井加奈子です。出身中学は壱中

趣味はカラオケです。宜しくお願いします。」


加奈子ちゃんの表情変わらない素っ気ない自己紹介が終わった。


しかし、男子の視線はやはり熱い。


俺と晃希は昔なじみで加奈子ちゃんのちょっときつい性格を知っていて

そんな風に見れないが

あのルックスはやはり注目の的だ。


「壱中のクールビュティー」と呼ばれ他校の生徒にも告白されまくってたからな。

(なお全員撃沈。)


「じゃあ、次は佐咲さん」


「はい。」


加奈子ちゃんの後ろの席の子が立ち上がる。


「初めまして。佐咲紗季ササキ サキです。宝中出身です。

趣味はスマホいじりと…です。名前にサが多くて呼びづらいと思いますが、宜しくです。」


はにかんだ笑顔でそういうと。

男子の拍手が気持ち大きかった。


かなり美人だ!おまけに加奈子ちゃんみたいにふてってない!


若干ギャルっぽい派手な容姿だが、目もくりっとしていて愛嬌のある顔をしている。

スタイルも加奈子ちゃんと比べても遜色ない。


他の女子も中学生から垢抜けてかわいい子が多い気がする。

すげえぜ!ハイスクール!


「じゃあ、次。」


晃希と小井川先生のくだりや

美人2連発登場などで、沈黙で重かったクラスの雰囲気もだいぶ和らいで談笑が始まっていた。


「お前どっち派?」

「選べねーよ。てか選ぶ権利ない!」

右後ろ男子達


「そのアイシャドーどこのやつ?」

「これ?これはねー」

前方の美人コンビ


「大神ー。人体模型もってきてー。」

「なんでだよ!次体育館で入学式だろ!このプリントに書いてあるからね!」

「っち。バレたか。」

ハハハ

左列のあ行、か行と担任。


みんなあんまり聞いてない気がするが

自己紹介ばっちり決めてやる。


第一印象を制する者が高校生活を制する。

メラービアンの法則、55サバンナ、


俺は教壇に立ちクラスメイト見渡した。

そして・・・俺の高校生活が始まる。


「俺の名前は田中はじ・・・」


***


「なぁ、俺の自己紹介みんな聞いてた?」


俺はずっと抱えていた疑問を晃希に打ち明けた。


「いいから。これ拾って。」


晃希は一蹴して紙吹雪をせっせと拾っている。


俺たちは今、入学式のある体育館で

何故か紙吹雪の欠片を拾っている。


俺たち新一年生は二年、三年の先輩より後に入場してきた。

その入場の際に晃希はどこから手に入れたか分からない紙吹雪をばら撒きながら入場してきた。


無論、小井川に叱責されすぐに拾う様に命じられ今に至る。


「一生に一度だから派手にやった方がみんなも喜ぶと思ったのに…」


全校生徒、そして全教員に視線を向けられてもこんな事を呟ける

晃希はやはりメンタルがおかしい。まぁ昔からだが。


小井川はさーせん。さーせんすぐ拾うのでさーせん。

とヘラヘラ、ペコペコしている。


やっと拾い終わったところで


司会(多分教頭)が咳払いをしてマイクに向かう。


「それでは改めまして、第3回私立創英高校。入学式を執り行います。

それではまず初めにわが校校長より講話がございます。

校長先生お願い致します。」

教頭がそういう告げると。

舞台袖からふくよかな体型の校長が現れる。

校長はそのまま舞台設置されてるマイクに向かって講話を始めた。


「えーっとね。不思議な事ってあるもんでね。

私ここに入って来るときにね。紙吹雪。

あれ昨日作ったからね。撒きながら入って来ようと思ってたんだけどね。

そしたら無くなってるの。誰か知らない??」


お前のかいっ!


「いえ!存じ上げません!」

小井川が大声で返答する。

目撃者2000人はいるぞ・・・


「あーそう。まぁいいや。

改まして新一年生の皆様。入学おめでとうございます。

まだ出来て間もない学校なんで、伝統も文化も無いですが。

それはここにいる皆様で作り上げてください。

私的には勉強も頑張ってほしいですが、スポーツ。これも力を入れていきたい。

学校経営を考えた時に新設校は名前を知って貰わなければいけない。

スポーツが強いとやっぱ名前が売れるんでね。そしたら入学生も増えてね。グヘヘ」


校長が董卓みたいになってるので

教頭が咳払いをする。


「まぁ、そういう事です。

要するに皆様夢中になれるもの。スポーツじゃなくても大丈夫ですよ。

それを見つけて頑張る。そんな高校3年間にしてください。」


校長の話が終わった。董卓みたいな奴だが

話が短いのは好印象だ。


「次は新入生代表挨拶。

新入生代表手を挙げて前へ。」


「はい。」

「はい!」


なぜか返事が二個聞こえた。

代表とは…?


晃希が立ち上がり手を挙げて前に向かっている。

新入生代表はyah〇o知恵袋よると

筆記試験のトップ、もしくは内申点のトップ、もしくはそれに準ずるものが選ばれると書いてある。

晃希は入試前日ジョジ〇の第4部から第6部を読んで寝てただけだ。

つまりあいつじゃない。


しかし、晃希はお構いなしに進んで行き

教頭の前に並ぶ。


「えっ、ちょ、なんで二人出てきちゃうの?」

教頭は困惑している。


小井川が足早に晃希の元にむかう。


「お前、代表に選ばれてたの?」


「いえ、代表と聞いて。つい体が。立候補制じゃないのですか?」


「違うけど・・・。お前筆記何点?」


「5教科で百九十・・・」


「戻れ。」


晃希は小井川に連れ戻される。

晃希は恨めしそうに新入生代表を見ている。

あちらも晃希を無言で見ていた。


そして、一人残った本物の新入生代表が

挨拶を始める。


かなり身長が高い。180くらいある。横に並んでいた晃希は170ないくらいで小柄なので

余計にでかく見えた。

・・・よく見ると。合格会場で晃希と揉めてた男だった。


「・・・創英生の名に恥じぬ様絶えず努力致します。

校長先生をはじめ、先生方、先輩方、これからどうぞ宜しくお願い致します。

新入生代表 日比野 十哉」


挨拶が終わり体育館は拍手に包まれる。

新入生代表は一礼をして席に戻って行く。


「ねぇ、挨拶の人ちょっとかっこ良くない?」

佐咲さんが加奈子ちゃんに耳打ちする。


「そうだねー。でも私身長高すぎる人はあんまりかなー。」


「そうなんだー。櫻井さんちょっと変わってるね。」

佐咲さんが面白そうに笑う。


「そうかな。」

加奈子ちゃんも楽しそうに笑う。


「そうそう。それにしても大神君凄い目立ってたねー。

櫻井さん壱中だよね?もしかして知り合い?」


「チガウヨ。」


加奈子ちゃんはカタコトで幼馴染の存在を否定した。


存在を否定された晃希は小井川に説教されていた。


***


「あんた達先帰って。」


晃希と下駄箱で加奈子ちゃんにそう告げられる。


入学式が終わった後、ホームルームはを少しやってそのまま解散となった。


「私、佐咲さんとカラオケ行ってくるから。」


「おっ!打ち上げ?いいねー!

じゃあ俺らも・・・」


「来なくていい!あんたを打ち上げるぞ。」


佐咲さんとお近づきになれるチャンスが花火みたいに無くなった。


「あんた達は佐咲さんには刺激が強すぎるから。

てか私がいきなり友達なくしたらどうするのよ。」


ひどい言われようだ。


「まぁ、佐咲さんに耐性ありそうだったらまた紹介するから。

私の素敵な幼馴染達をね。」


さっき体育館で存在消してましたよね?


「そういう事だから、じゃね。

寄り道するなよー。」


カラオケは寄り道じゃないらしい。


加奈子ちゃんはそういって立ち去って行くが

クルっとこちら振り返り。


「晃希、元ちゃん、入学おめでとう!

明日から宜しくね。」


そういうとはにかんだ笑顔を見せて去って行った。

加奈子ちゃんはクールだが親しい人にはあういう風に悪戯っぽく笑う。


俺と晃希はヒラヒラと手を振っていた。


「俺たちも行くか。」


加奈子ちゃんを見送った後、晃希に言う。


晃希はスマホをおもむろにスマホ取り出した何かを確認している。


「LINE…誰からも来ないなー。」


当たり前だっ!


変な奴が多い学校だが

常識人もちゃんと居てくれてちょっとホッとした。



























































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