エピソード第一幕2 ~プロフィアのウキウキお買い物♪編
魔竜との死闘から1週間、ある中規模の商業都市にたどり着いたプロフィアは、前の戦いで折れてしまった杖の代わりを探そうと、広場で露店を開いていた女の子を訪ねます…が。おバカなプロフィアちゃんは、まがい物を掴まされて一文無しになってしまいます。
エピソード第一幕2 ~プロフィアのウキウキお買い物♪編
ゴルゴラとの激闘から数日後、とある街へとたどり着いたプロフィア。
「う~…ちかれた……もう歩けないや…」
そこそこの規模の商業都市。中央広場へとやってきたプロフィアは、そこにある噴水を円形に囲む石垣に力尽き崩れ落ちるように腰を下ろす。
売り子が売りにきたトロピカルジュースを購入、木製のコップを口に運び傾けながら物珍しそうに辺りを見回すプロフィア。
広場を囲うように所狭しと並ぶ雑貨や食料品を扱う露店、そこに行き交う夥しい数の人々、立ち話をする主婦たちや噴水の周りで情報交換を行っているハンターたち。
飲み終わりを見計らいもう一度やってきた売り子の持つトレーにコップを置いたプロフィアは、噴水の前に絨毯を敷き個人商店を開いていたハンターらしき女の子の店をのぞいてみる。
絨毯中央にちょこんと座っている魔術師なのだろうピンク色の可愛らしい魔道服に大きなリボンのついたトンガリ帽子をかぶった小柄でカワイイ女の子の周りに並ぶ???な商品…。
あきらかにハンターには必要ないだろうヘンテコな置物や実用性のなさそうなカワイイ装備品の数々、何に使うのか分からない謎のポーションなどなど。
「うっ…これ欲しい…」
プロフィアを襲う心の葛藤…どう見ても荷物など入りそうもなく、旅の邪魔にしかならないだろうウサギの形をした背負いカバンを手に取るが、なんとか欲望に打ち勝ち、元の位置に戻して本来の目的のため店員に尋ねる。
「あの~私、武器がほしいんですけど…なんか掘り出し物ないですか? できれば攻撃力の高いやつがいいんですけど」
「え~っと~武器ですかぁ~…それならスゴイのがあるですぅ~」
「ホント!? でも高いんだよね?」
「ううん。ホントは10000Gくらいなんですけど~私これよりカワイイの持ってるからいらないの~。だから300Gでいいですぅ~」
「ホント!? そんなに安くしてくれるの!! ねえ、どんなの? 見せて見せて♪」
「はい~これですぅ~」
その女の子が傍らにある大きな道具袋をガサガサとあさり、取り出したのは、長さが30センチくらいで先端にカワイイ星のカタチをした黄色い飾りのついたシルバーのワンド。
「このワンドすごいんですぅ~。なんと~星の精霊さんの力が宿っているんですよ~。それでですね~、えっと~~~」
あまりの会話ののんびりさに、ちょっとイライラ気味のプロフィア…。
「マナを込めて振りかざすとですね~、誰でもあの伝説の魔法のですね~メテオが使えちゃうんですぅ~」
「メ…メテオ!? それってあの、隕石を降らせてドッカーンっていうすんごいやつだよね???」
瞳をキラキラと輝かせて尋ねるプロフィア。
「はい~。ちょっと違うですけど、そっくりさんな感じですよ~。えっと~でも、お客さんは僧侶さんだからワンドはいらないですよね~」
考え込むプロフィア…確かにワンドは魔術師用の武器なので必要ない。
「う~………………買うっ!! それ下さいっっ!!」
いらない…が、メテオが使えるらしいうえに、そう、なんといってもカワイイっ。
「お買い上げありがとうですぅ~。では300Gですね~」
腰のポーチからお金の入った皮袋を取り出し、お金を支払うプロフィア。
「は~い、ではではどうぞですぅ~。この子、星屑のワンドっていうんですよ~。可愛がってあげて下さい~」
「うんっ♪ 大切に使うねっ!」
受け取ったワンドを両手で胸に抱え、ニコニコと上機嫌のプロフィア。可愛らしい店員の女の子がプロフィアの目を盗んで「ケッ、バカな女だ」なんて本性を見せていることなどつゆ知らず、しかも衝動買いで全財産をはたいてしまった危機的状況にも気づかず、その可愛らしいワンドを眺めてはニヤニヤしながら街外れの川原へとやってきたプロフィアは、さっそく使ってみようとそのワンドをかまえてみる。
「………」
黙り込み動きの止まるプロフィア…あきらかに殺傷能力のなさそうなその可愛らしいワンドを見て過ちに少しだけ気づいてしまう…。
嫌な予感はするが、それでも最後の望みをかけ、ワンドを持つ右手にかるくマナを込める。
「えいっ☆」
もし、すんごい魔法を使ってもここなら被害が無いと思われる流れが緩やかで底が見えないほどの深さがある結構大きめな川。その川へ向け、まったく気合のこもらない可愛い掛け声とともワンドを上から下へと振りかざしたプロフィア。
ぽちゃん…。
「………」
ワンドを川に向けたまま放心状態のプロフィア…空から目でゆっくり追える程度の緩やかなスピードで降ってきた手のひらサイズのカワイイ星が一個、キラキラと輝きながらワンドを向けた川にポチャンと落ち、淡い黄色の光を発しフワリと消える。
確かにメテオっぽいが、これは………。
「プ…プチメテオだぁ~……」
カワイイが…戦闘ではまったく使えそうも無い。頭を抱えしゃがみ込むプロフィア。とにかく嫌な予感がして、もう一度川へ向けてワンドをかざしたプロフィアは、今度は魔法『ホーリーカッター』を使ってみる。
嫌な予感的中。放たれるはずの魔法の刃はカワイイ星に変わり、クルクルと回転しキラキラと光を放ちながら飛んでいった星は、はるか前方で弾けて無数の小さな星になってパッと消える。
当たると痛そうではあるが、あきらかに殺傷能力はゼロに近い。
「はうぅぅ……星の精霊さん…偉大だぁ~……」
自分のおバカさを後悔し、もう一度頭を抱えしゃがみ込むプロフィア…その時、トントンと肩を叩かれ振り返ると、そこには瞳をキラキラと輝かせた10歳くらいの女の子が立っていた。
「おねえちゃんスゴイっ!! どうやったら、そんなスゴイ魔法が使えるの? もう一回見せてっ、お願いっっ」
プロフィアに羨望の眼差しを向けそう言った女の子。
「へへっ、よーしっ、んじゃ、とっておき見せてあげるっ☆」
女の子の期待に応えてあげようとやる気満々で立ち上がったプロフィアは、ワンドを川へ向け、斜め上にかまえる。
「はあああああーっっ!!」
気合の入った掛け声とともにワンドを持つ右手にめいっぱいのマナを込めるプロフィア。
「いくよっ! スターバーストーっっ!!(*注 ホーリーバースト)」
次から次へとワンドの先から放たれる無数の星たちがキラキラと輝きながら川の向こうへと緩やかに弧を描き飛んでいく。その星たちがまるで川に掛かる橋のように見え…。
「すごいっ! すごいっ! すごーーーいっっ!!」
瞳をキラキラ輝かせ大喜びの女の子。
「ふぅ~…どう? なかなかのモンでしょ♪」
一息つき、そう言ってウインクして見せるプロフィアに歩み寄った女の子が大きくうなずく。
「私ね、王立魔術師団に入るのが夢なの。どうしたらおねえちゃんみたいにスゴイ魔法が使えるようになるの?」
「私なんかまだまだ……どうしたらかぁ~…そうだっ! これ持ってみて」
プロフィアは、ワンドに、魔法を使ったばかりで残り少ないマナをありったけ込め、女の子に手渡す。
不思議そうにワンドを手に取り、それを眺める女の子。
「キミって魔法使えるかな?」
プロフィアの問いに自信なさげにうなずいた女の子。
「まだ、ちょっとだけなんだけど…」
「へへっ、それなら大丈夫。きっと私なんかよりスゴイ魔法使えちゃうんだから。そのワンドに力いっぱいマナを込めて、川に向けてえいって振りかざしてみて? ねっ」
少し緊張した表情でそっとうなずいた女の子は「う~ん…」とうなり声をあげながらマナをしぼり出す。
「えーーーいっっ!」
可愛らしい掛け声とともにワンドを振りかざした女の子。すると空から数え切れないほどのたくさんの星が降りそそぎ、川一面をポワーっと黄金色に輝かせる。
自分がその魔法を使ったことに半信半疑で驚きながらも、見とれて立ち尽くす女の子の後ろに立ったプロフィアは、女の子の両肩にポンと手をかける。
「へへっ♪ キミにだってこんなにスゴイ魔法が使えるんだよ。これから、もっともっと努力して、いっぱいいっぱい頑張ったら、絶対に夢叶っちゃうんだから。私もね、世界一のハンターになるっていう夢があるの。競争しよっか♪ どっちが先に夢を叶えられるか」
満面の笑みで大きくうなずいて見せた女の子。
「おねえちゃん、負けちゃいそうだなぁ~…へへへっ。そうだっ! そのワンド、キミにあげるっ」
「えっ!? いいの?」
「うんっ。大切にしてあげてねっ」
「うんっ! ありがとう、おねえちゃん。じゃあ代わりにこれあげるねっ。ママがお守りにってくれたのなんだ~」
女の子は、そう言って髪を後ろに束ねてポニーテールにしていたピンク色のリボンをほどいてプロフィアに手渡す。
「へへっ、ありがと。大切にするねっ」
「うんっ、それじゃ、ありがとっ、おねえちゃん」
「うん。お互い頑張ろうねっ」
「うんっ!」
大きく手を振り去っていく女の子に「バイバーイ」と大きく手を振り返すプロフィア。女の子の姿が見えなくなり、ふと手に持っていたリボンを見つめる。
「あっ! これ、覇王のリボンだ。レベル1だけど…」
結局300Gは無駄になったが、それでも損はしなかったかな? なんて微笑むプロフィア…だったが。
「う~…どうしよ~……」
武器が無いという根本的な問題が解決していないことに気づき、頭を抱えてしゃがみ込むプロフィアなのだった。
所持金は、ほぼゼロに近かったが、それでもこの際なんでもいいからと武器屋を訪れたプロフィア。
あきらかに買えないものには目もくれず、どんどん安い値札のついたものへと目線をずらしていくプロフィアだったが、一番安いものすら買えないことが判明し肩を落とす…が、一番安いものの棚の奥に値札のついていないホコリをかぶった商品があることに気づき手に取ってみる。
なんの飾りっけもなく、あきらかに攻撃力の無さそうななんの変哲もない木の杖。
「あの…これっていくらですか?」
「はぁ? それ誰も買いやしないド初心者用だよ? お客さん結構熟練のハンターだよね? ホント買うの?」
尋ねたプロフィアに、筋肉隆々で背が高く勇ましい女性の店員が呆れた顔でそう返す。
「はい…お金持ってなくてですね…ははは…」
情けない声でそう言ったプロフィアを見て、腰に手を当て溜息をつく店員。
「いいわ、持ってきな。タダでいいよ」
「ホント!? いいんですか?」
「ああ。頑張って今度はいい武器買いにきなよ?」
「うんっ! ありがとうございます~」
お礼を言い深々と頭を下げて店を出たプロフィアは、手に持った杖を見て大きな溜息をつく。
「でも、これじゃあなぁ~…あっ! そだっっ」
腰のポーチから、さっき女の子にもらったリボンを取り出したプロフィアは、杖の先端から少し下の柄にそのリボンを可愛く結びつける。
「へへっ♪ これでよしっと」
杖をかまえ満面の笑顔を見せるプロフィア。
「これで覇王の杖のできあがり~☆ ちょっと強そうでしょ。名前だけ…へへっ、よーしっ、頑張るぞーっっ!!」
新たな武器を手に入れ、新たな決意を胸にするプロフィア。
世界一のハンターを目指して…プロフィアの旅はまだまだ続く。
つづく
ホントに、ホントに、読んでくれてありがとですっ!!
あと15話、最後まで読んでくれたらなぁ…