エピソード第三幕6 ラストエピソード ~記憶編
エピソード第三幕6 ラストエピソード ~記憶編
「へへへっ♪ ホントにいいんですか?」
「ああ、かまわんさ。俺にだって、それくらいの甲斐性はあるからな」
「じゃあ着てみちゃいますね♪ 覗いちゃダメですよ~」
そう言って試着室へ入りカーテンを閉めたプロフィア。しばらくして着替えの終わったプロフィアが自信なさげにそっとカーテンを開ける。
「どう…かな…やっぱり変だよね…」
プロフィアを見て驚いた表情を見せたジンを見て、そう言って表情を沈ませるプロフィア。
「い、いやっ! 違うんだ! 戦闘用のドレス姿しか見たことなかったもんでな…あまりにも…その…可愛かったから…ついな…えっと…スゲー似合ってるよ」
「ホントですかっ!!」
「ああ。ホントにその…可愛いよ」
恥かしそうに頬を赤らめ、頬をポリポリと指先でかきながらそう言ったジン。
「へへっ、私、こういうの初めて着たから自信なくって…よかったぁ~。ありがとっ☆ ジンさん♪」
胸のところに黄色いリボンのついた白いノースリーブのブラウスに同色のロングスカート、銀色のミュールを履いたプロフィアがジンの左横に並び、その腕に抱きつく。恥かしそうにプロフィアを見たジンへ嬉しそうに無邪気な笑みを見せるプロフィア。
「ははは…まあ、戦闘用のドレスでデートってワケにもいかないだろう?」
「はぅ…デート…ですかぁ…」
真っ赤な顔のプロフィア。
「ははっ、せっかく二人きりだし、デートでも~なんて言ったのはプロフィアだろう? それにしてもヴァルのやつまで用事があるからなんていなくなりやがって…まあ、行こうか?」
「はいっ!!」
洋服店を出た二人は、商店街をウインドウショッピングして歩く。何にでも興味津々で無邪気に駆け回るプロフィアを見て微笑むジン。カフェで山盛りのパフェをもりもり食べるプロフィアに圧倒されたり、公園の池でボートに乗ったり、あっという間に時間は過ぎていき、西の空に沈みかけた夕陽が辺りを真っ赤に染め上げた頃、二人は、ひと気の無い街外れに通る生活水路の脇を散歩していた。
「こらプロフィア、そんなとこ歩いたら危ないぞ?」
水路と道を隔てるように作られた人間の足の裏くらいの幅で高さが4~50センチくらいの縁石の上をバランスをとりながら歩いていたプロフィアをそう叱りつけたジン。
「へへへっ♪ 平気ですよ~わっあわわわ…っと」
バランスを崩したプロフィアが倒れそうになって横にいたジンに抱きつく。
「こらっ、お前、今のわざとだろう?」
「へへっ♪ バレちゃったかぁ~…あの…ジンさん?」
お互いの顔があまりにも近いことに気づいて真っ赤な顔で視線を逸らす二人。
「ジンさん…私…私っ! ジンさんが好きですっ!! 世界で一番、大好きですっっ!!」
今一度ジンへ視線を向け、真剣な表情でそう言ったプロフィアへ優しく微笑みかけるジン。
「俺もだ…プロフィア。お前が好きだ」
「ジン…さん…」
頬を真っ赤に染め、キュッと瞳を閉じプルプルと震えるプロフィアの唇にそっと唇を重ねたジン。ゆっくりと目を開いたプロフィアが無邪気に微笑む。
「えへへっ♪ すっごくドキドキする…私ってば初めてで…ジンさんは何だか慣れてるんだ~。で、これが…」
そう言ってもう一度チュッとジンに口づけをしたプロフィアは、駆け出してジンから離れ、振り返ると、ペタンと座り込んでしまう。
「どうしたんだ? プロフィア…なっ…それ…お前…」
プロフィアに歩み寄ろうと前へ出したジンの足がピタリと止まる…。
「もう…時間みたいですぅ…」
「じ…時間って…どういうことなんだプロフィアっ!! それに、その体は…」
両手の手のひらをかざして見るプロフィア。その手は薄っすらと透けていて、その向こうにいるジンの姿が見えてしまう…手だけではない…全身がそのような感じで…。
「私ね…もう、この世に存在していないの…」
「存在していないって…冗談なんだろ?」
大きく首を横に振って見せたプロフィアの瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれ出す。
「私たちの力は、ガルバデスに及ばなかったの…あいつを完全にこの世から消滅させるには、私たちの全てを…存在そのものをかけるしかなかったから…だから私たちは、この世から消滅したの。でも…ね、ノエリアが…ほんの少しだけ残った自分の命を私にって…世界を救ったご褒美にって…それで…」
「そんなのって…そんなのってないだろっ!! 冗談だよな? 頼む…冗談だと言ってくれ…プロフィア…」
そんなジンの悲痛な叫びも空しく…プロフィアの首がそっと横に振られる。
「ジンさん…ありがとう。私ね、後悔なんてしてないんだ。精一杯生きたもん。夢だって叶えたし、私なんかが世界中のみんなを救うことだってできたもん。きっと天国でパパやママ、お父さんに、いっぱい褒めてもらえるよねっ♪ へへへっ」
そう言ったプロフィアがニコッと笑って見せる。ポロポロと涙を流しながら精一杯、笑顔を作ってみせるプロフィア。そんな精一杯強がって見せるプロフィアへ何もしてやることが出来ないジンは、悔しさに拳を握り締め、視線を逸らす…。
「そろそろ…お別れです…ジンさん…。最後にお願いがあります。嫌かもだけど…迷惑かもだけど…でもっ! 私のこと、忘れないでくださいっ!! あなたの記憶に、いつまでもいさせて下さいっ!! そしたら私…いつまでも生きていけるからっ!! あなたと一緒に生きていけるからっ!! お願いです…あなたの記憶にいさせて下さい…」
「ああっ!! 忘れるもんかっ!! 絶対に忘れやしないさ」
「ありがと…ジンさん…へへっ…これからも…よろしく…ねっ」
キラキラと光る涙だけを残して…満面の笑みのままスーッと消え去ったプロフィア。着ていた衣服がパサリと地面に落ち、コトリと落ちたブレスレットがコロコロと転がりジンの足元で倒れて止まる。それを拾い上げるジン…。
「プロ…フィア? プロフィアーーーーーーーっっ!!」
こうして…プロフィアの人生とともに、この物語の幕は下ろされました。
アイゼンシュルツェは王宮直属のギルド…行方不明のマックス以外のギルドメンバーは国王の指示で秘密裏に処刑され、事実は闇に葬られ…世界を救うため、一人、命を賭けて戦ったプロフィアの名が歴史に残ることはなかった…。
それから半年が過ぎて…。
リリスとキースが王宮より旅立ち、カイルと出会い…ナリア王国物語が動き出した頃、それとはまったく無縁の面々は、心にまだ埋められぬ空白を残しながらも、いつもと変わらぬ日々を過ごしていた。
アクアリンクのギルド社屋内、テーブルの椅子に腰掛け、いつものように依頼書の整理をしていたジン。コンコンと入り口を叩くノックの音が聞こえ、立ち上がるとドアを開ける。
「プロ!? …いや、どちら様だい?」
一瞬、驚いたジンだったが、そこに立っていた女の子にそう声をかける。
プロフィアとソックリの戦闘用のドレスを纏い、手にはプロフィアと同じ、結びつけられたリボンの色がピンクではなく黄色の旅人の杖を持ったプロフィアと背格好の変わらない小さな女の子。
「あのっ! 私、リエッセっていいます! アクアリンクってここですよね? あのっ! ここに来たら先生…いえ、プロフィアさんに会えるって聞いてきたんですけど…」
プロフィアは、出会った人々の心の中にその名を残し、新たな物語を紡いでいく…。
FIN
最後まで読んでくれた方々、本当にありがとうございましたっっ!!




