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ナリア王国物語  作者: ぷろふぃあ
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エピソード第三幕5 ~それぞれの決着編

        エピソード第三幕5 ~それぞれの決着編



 音速を超えぶつかり合うマックスの剣とプロフィアの杖から発生した衝撃波が嵐のように吹き荒れる。その風圧に飛ばされそうになったヴァルの体を後ろから支えるジン。

「ありがと、ジンさん」

「ああ…見ろヴァル。プロフィアの攻撃が当たるようになってきたぞ。マックスは息を切らしてあきらかに動きが鈍くなってきている…だがプロフィアは汗一つかいていない…いったいどれほどの修行をしてきたんだ、あいつ は…」

 マックスの右頬にヒットするプロフィアの杖。

「なめるなよ小娘がーーーっ!!」

 体勢を崩しながらも怒り任せに繰り出したマックスの闘拳を咄嗟に杖で受け止めるプロフィア。その威力で足を床に踏ん張ったまま数メートル後ずさり、その隙にバックステップで距離を取り、口元の血を拭い激しく肩で息をし呼吸を整えるマックス。

「ハァ…ハァ…なぜだ…なぜ貴様が…それほどの力を」

「だって、いっぱい修行したもん。私ってば、どこに行っても負けっぱなしのダメダメっ娘でさ、世界中ホント強い人だらけで…でもさ、だからって勝てないって諦めたらそれで終わりでしょ? 私には、あなたを倒すって目標があったから、どんなに辛くたって頑張れたんだよ。あなたには感謝してるんだ」

「感謝…だと…貴様っ! 気でもふれたかっ!! 俺はお前の両親と育ての親を…」

「憎いよ…ホントは殺したいくらい憎い。でもね、今はそんなの関係ないもん…って言ったら不謹慎かな? きっとパパもママも、お父さんだって復讐とかそんなの望んでないハズだもん。そんなことより、今を楽しまなくちゃでしょ? 私なんかが今、世界で一番強い人と戦ってるんだよ? さあ決めよう? どっちが世界一か。私は次の一撃に…全てをかけますっ!!」

「貴様………いいだろう。だが勝つのは俺だっ!!」

「うおおおおおおーーーーっっ!!」

「はああああああーーーーっっ!!」

 気合ののった二人の声が重なる。お互いの瞳を真っ直ぐに見つめ突進していく二人。そしてお互いが渾身の力を込めて振り下ろした剣と杖がぶつかり合い、力負けしたプロフィアの杖が弾かれる。

「お前の負けだーーーーっ!!!!」

 プロフィアの頭上から振り下ろされるマックスの剣。黒い闘気を纏ったマックスの全身全霊が込められた剣は空を切り床に刺さり、爆発音のような轟音とともに床に亀裂を走らせ建物全体を揺らす。

「消え…た? 後ろかっ!!」

 気づき振り返ったマックス。しかしすでにメテオインパクトの体勢に入っていたプロフィアの杖が…。

「私の…勝ちだーーーーーーっ!!!!」

 ズドンっ!!

 マックスの腹部に突き刺さるプロフィアの杖…固唾を呑んで見つめるジンとヴァル…一瞬、刻が止まる…そして大量の吐血をし、崩れ落ちるように片膝をつくマックス。

「ま…負けた…この俺が…こんな小娘に……俺は…世界最強なんだ…こんな小娘に負けるはずがない…こんな…」

「よせっ! マックス!! それ以上は戻れなくなるぞっ!! やめろっ!! マックスーーーーーっ!!」

 そう叫び声を上げたジン…だが、その声もむなしく…。

 口元に笑みを浮べ、ムクッと立ち上がったマックス。顔を上げると、その瞳は真っ赤な輝きを放ち…。

「フフフ…ハッハッハーーーっ!! クズが、やっと落ちおったわ。はああああーーーーっ!!」

 マックスは…いや、すでにマックスではないものが気合を込めると、剣から伸びた無数のドス黒い触手が頭から足の先まで、口元だけを残して全身を覆い、歪な形の…まるで鎧のようなものになる。

「ファッハッハッハーーーッ!! これだ。この力だ。1000年間…この時を待っていたのだ」

 力が溢れ出し、全身を黒い闘気が覆う。その絶対的な威圧感と絶望感からヴァルは腰を抜かしてペタンと座り込み、ジンは無意識に後ずさりしてしまう。そして突然弾き飛ばされたプロフィアが激しく壁に激突してめり込み、パタンと下に落ちて倒れ込む。

「プ…プロフィアーーーっ!!」

 ジンの叫び声。ヨロヨロと立ち上がったプロフィアだったが、そのダメージから立ち上がることができず、ふらつき片膝をついてしまう。

「何をしたんだ…まったく見えなかった…プロフィアですら一撃で…あんなバケモノ…どうしろってんだ…」

 完全に戦意を喪失したジンが、そう言って崩れ落ち両膝をつく…。

「ほう…死ななかったのか。たかが人間の分際でそれほどの力を持っているとはな」

 そう言ったガルバデスは、振り下ろしたのだろう剣を肩に掛ける。

「へ…へへへっ…咄嗟に全開でシールド張ったからね…危なく死ぬとこだったよ…」

 ヨロヨロと立ち上がったプロフィアは、前方に杖を構える。

「ジンさん、平気だよっ! ここからは私も本気だから。できるだけ私だけの力で世界一になりたかったんだけど、そうも言ってられないみたいだし…お願い、ノエリアっ」

 プロフィアがそう言うと、杖の先端が光り輝き、その光がフワリとプロフィアの周りを回るように宙を舞うとプロフィアの右肩に止まり、薄っすらと光を放つ純白のドレスに身を包んだ白い翼の天使がその姿を現す。

「クククッ…ハッハッハーーー!! 何を出すかと思えば、そんな下級天使だと? 笑わせてくれる。そんな下等な生き物で俺に抗おうというのか」

「ガルバデス…確かに私は下等でなんの力もないわ。でもね、あなたには絶対に負けないって、そう言いきれる。あなたは私たちには勝てない。だって、あなたは重大なミスを犯したもの」

「下級天使ごときがっ!! いいだろう八つ裂きにしてやる。人間と下級天使など、ゴミが何匹手を組もうがゴミはゴミ。簡単に死ねると思うなよ!! はあああああーーーーっっ!!!!」

 怒り任せに気合を込めるガルバデス。その体からドス黒い闘気が勢いよく噴出し、その衝撃で建物全体を揺るがし、燃え盛るように全身を包む。

「見せてあげるわガルバデス。どんなに小さな力だって、その想いが合わされば、誰にも負けない無限の力になるってこと。いくよっ! プロフィアちゃん」

「うんっ! ノエリア」

 一度翼をバタつかせ、フワリと舞ったノエリアは、プロフィアに背を向け、プロフィアの胸の辺りで両手を広げる。同じく両腕を広げるプロフィア。

「私たちに…全てを守る力を!!」

「私たちに…全てを守る力を!!」

 プロフィア、ノエリア、二人の声が重なる。そして!!

 眩い光に包まれた二人の体が一つに…プロフィアの全身を包む黄金の装飾の施された純白の戦闘天使のドレス、背中には真っ白なフワリとした大きな翼、持っていた旅人の杖は黄金に輝く戦闘天使の杖に。一度、翼をバタつかせ大きく開き杖を構えたプロフィアの体を溢れ出した聖なる闘気が覆いユラユラと揺らめいている。

「あれがプロさん…? カッコイイ…」

「全てを守る力…あれが、あいつの見つけた答えか…プロフィアらしいな」

「ジンさん…プロさん勝つよね? 絶対勝つよね?」

「ああ、勝つさ。絶対にな」

 拳を握り、固唾を呑んで世界を賭けた戦いの行く末を見守るジンとヴァル、二人の目には何かが光ったようにしか見えなかっただろう。翼を羽ばたかせ宙を舞い、一直線にガルバデスへ向かって行くプロフィアを迎え撃つガルバデス。白と黒、お互いの闘気がぶつかり合い火花のようにエネルギーを散らし、衝撃波が嵐のように吹き荒れる。まるで爆発音のような衝撃音を何度も何度も響かせ、幾度となく衝突を繰り返すプロフィアとガルバデス。建物全体が大きく揺れ、崩れ出した天井の破片が二人の闘気に触れては塵のように消える。

「だあああああーーーーっ!!」

「うおおおおおーーーーっ!!」

 一度距離を取り、今一度激しくぶつかり合った二人の剣と杖がしのぎを削りあったまま力が拮抗し動かない。

「な、なぜだっ!! なぜ下等な生き物であるお前たちにこれほどの力が…なぜだーーーっ!!」

「さっきノエリアが言ったよね? あなたは重大なミスを犯したって。あなたは、その人を、宿主さんを道具としかみていない。でも私たちは違うもの。私たちはお互いを想い合い、信じ合い、高め合うことが出来るの。強さだけなら私たちは、あなたの足元にも及ばないのかもしれない。でも今のあなたには負けないわ。だって、今のあなたは宿主という力の枷を自ら作ってしまったんだもの。あなたは宿主の限界を超えて力を振るうことができないの。悪いけれど…一気に決めさせてもらいますっっ! うおおおおおーーーっ!!」

 気合ののった声とともに一気にプロフィアの闘気が膨れ上がり、杖によってなぎ払われたガルバデスが壁に激突し床に倒れ込む。

「そんなバカな…この俺様が、あんな下等な生き物に劣るだと…ゴミどもがっ! すべて…消えてなくなれーーーーっっ!!」

 怒りを露に立ち上がったガルバデスは、左手を上に掲げ、暗黒の球体を作り出す。その球体は黒い稲光を走らせ一気に膨れ上がり、天井を粉々に破壊し数十メートルもの大きさになる。それをプロフィア、ジン、ヴァルへ向けて投げ落とす。

「あんなの…防げっこない…よ。おわりだ…もう」

 成す術もないまま、向かってくる巨大な暗黒の球体を見つめるヴァル。

「いや。大丈夫だヴァル。見ろ。プロフィアを。あいつ…こんな状況を楽しんでやがる」

 ガルバデスを見上げたプロフィアが、自信満々にニッと笑ってみせると、腰を落とし杖を構え、勢い良く全身から全開で放出されるマナの勢いで突風が吹き荒れ、眩い輝きを放つ。

「ガルバデス。残念だけど、ここからは全部私のターンだから。いくよっ! スーパー…メテオインパクトーーーっっ!!」

 杖の先に凝縮されたマナが閃光を放つ。竜巻が巻き起こるほど回転し遠心力のつけられた杖のフルスイングが暗黒の球体にヒットする。

「うおおおーーーっ!! 飛んでけーーーーーーっっ!!!」

 弾き返された暗黒の球体が空の彼方へと消える。

「そんなバカなっ!! この街ごと消滅できるほどの破壊力があったのだぞ…それを一瞬で…そんな…まさか…」

 力無く降り立ったガルバデスは、たじろぎ、無意識に後ずさりしてしまう。

「メテオ…スラッシュ!!」

 グッと腰を落とし、杖の柄をガルバデスへ向け、そう言ったプロフィアの姿が、超高速移動によって一瞬消えたように見え、まるで瞬間移動でもしたかのように突然ガルバデスの眼前に現れたプロフィアの繰り出した杖の柄が、ガルバデスの腹部に突き刺さる。

「ぐ…おっ…なっ………」

 腹部を押さえ片膝をつくガルバデス。

「これで…終わりだーーーーっっ!!」

 飛び上がったプロフィアは、空中で縦に一回転して遠心力をつけ、斧のような鋭いマナが先端に纏われた杖を振り下ろす。

 咄嗟に剣でそれを受け止めたガルバデス…その剣が真っ二つに折れる。

「そん…な…ま…さ……か………」

 マックスの体を覆っていたドス黒い鎧がスーッと消え、手から剣がこぼれ落ち、倒れて動かなくなる。

「やった…の? プロさん…勝ったんだねっ!!」

「ああ。終わったようだな。これであいつは世界一だな」

「へへっ♪ ジンさん、ヴァルさん…私…私やりましたっ!!」

「おめでとっ! プロさん」

「おめでとうプロフィア」

「へへへっ♪ うんっ! これで私の夢、叶っちゃいましたね~☆」

「待て! プロフィア…あれは…なんだ?」

 そう言ってジンが指差したほうへ振り返るプロフィア。折れた剣から、ドス黒い煙のようなものが立ちのぼり、宙に集まっていく…。

『まずいわ…ガルバデスが…復活する。剣が折れたことによって封印が解けたんだわ…』

 プロフィアの心に聞こえるノエリアの声。

「そ…そんな…そんなのって…」

「どうしたんだ! プロフィアっ」

「ジンさん…ガルバデスが復活します…剣が折れたから封印が解けたみたいです………凄い邪悪な闘気が…さっきまでの比じゃない…」

 全身にマナを全開で纏い、杖を構えて宙を見上げるプロフィアの頬を冷や汗が伝う。

「ジンさん…その人と、それからリオさんとロイドさんを連れて逃げてください。二人は無事で下にいますから…できるだけ遠くに逃げてください。お願いします!」

「いやっ! しかしっ!!」

「そうだよ! プロさんだけを置いて逃げるなんてできないよっ!!」

「ジンさん、ヴァルさん…お願いです…みんなを守って戦う余裕なんて私にはないから…だからお願いですっ!!」

 空は邪悪な気で暗黒の雲に覆われ、紫色の稲光が走り続ける。煙が晴れ、次第に姿を現していくガルバデス…体長20メートルほどの球体で中央に真っ赤に光る巨大な目、その周りを人間の腕ほどの太さの無数の触手が覆い、ウネウネとうねり続けている。その絶対的な絶望感とおぞましさに背筋が凍り言葉を失うジンとヴァル…。

「ヴァル…いこう。俺たちは邪魔だ。何もできはしないさ…ただの足手まといにしかならない」

「でも…プロさん…」

 済まなそうにプロフィアを見つめるヴァルに、頷き、微笑んで見せるプロフィア。

「行くぞヴァル。すまないプロフィア…すべてを任せてしまって…不甲斐ない俺を許してくれとは言わない。だが…かならず戻ってこい。いいな?」

 マックスを肩に担ぎ、そう言ったジンに、そっと頷いて見せたプロフィア。

「プロさん…絶対だよ? 絶対戻ってくるんだからねっ!!」

「うんっ! 約束する! だから二人も無事でいてね! 私の帰る場所は、みんなのところだけなんだから」

「ああ。その…プロフィア…全てが終わったら…話したいことがある。だから…死ぬな!」

 頷くプロフィア。走り去っていくジンとヴァル。二人の姿が消えるとプロフィアはペタンと座り込んでしまう。

『もう…強がっちゃって…』

「ははは…まいったな…体中が痛くてガタガタで思うように動かないや…まだまだ未熟な私なんかじゃ、この力を使いこなせないみたいだね…」

『そんなことないっ! 私が弱いからプロフィアちゃんに負担をかけちゃったんだよ…』

「ハッハッハッ! 礼を言うぞ。お前たちのおかげで封印が解けた。完全体での復活こそ出来なかったが、この姿でもこんな世界など十分支配できる。フフフ…ハッハッハッ!」

『プロフィアちゃん…逃げよう? 今の状態じゃ勝てっこない…今は逃げて体調を万全にすれば完全体じゃない今のガルバデスなら勝機がない相手じゃない』

「ダメだよ…それはできない…だって私たちが逃げたら、この街に住む何十万人という人たちが死んじゃうことになる。それにジンさんやヴァルさんたちだって…私たちの力は、みんなを守るためのものなんだ。ごめんね…巻き込んじゃって…でも…お願いっ!!」

『…分かったわ、プロフィアちゃん。初めから分かっていたことだものね。私はそのために、プロフィアちゃんと同じ想いでここにいるんだもの。私の命…あなたにあげるっ!!』

「ありがとう…ノエリア…」

「どうした? 座ったままで戦う前から降参なのか? フフフ…無理もない」

 ガルバデスから伸びた二本の触手がプロフィアの体に巻きつき、その体を持ち上げて、締め上げていく。プロフィアの体がミシミシと音を立てて…。




「きゃあああああああああああああーーーーーーっっ!!」

 響くプロフィアの悲鳴。庭の中央辺りまで逃げてきたジンとヴァル、それにリオとロイドが足を止め、今しがた出てきた建物のほうへ振り返る。

「プロフィアっ!」

「プロさんっ!」

「プロ!」

「プロちゃん!」

 戻ろうとするヴァルの腕をつかみ止めるジン。

「でもプロさんがっ!!」

「よせっ! プロフィアを困らせたいのか!!」

「でもジンさん! このままじゃプロさんが死んじゃうよ…」

「ヴァル…俺たちは信じて待つしかないんだ…くやしいが…な」

 そう言って肩を落としたジンは、背負っていたマックスをそっと地面に下ろす。

「リオ…すまないが、マックスを回復してやってくれないか? 全快にしてやってくれ。頼む…」

「なんで? そんな奴、殺しちゃえばいいじゃないの!」

「すまない…たのむ、リオ。どうしても、こいつと話したいことがあるんだ」

「もうっ! 分かったわよっ! どうなっても知らないからね?」

 マックスに両手を当て、回復を施すリオ。プロフィアによってつけられた傷が完治し、ゆっくりと目を開けたマックス。

「これは…俺はなぜこんなところに? ジン、これはどういうことだ?」

 不思議そうに辺りを見回し、ドス黒い雲に覆われた空を見上げて尋ねたマックス。

「マックス…覚えていないのか? 貴様が何をしたか…感じるだろう? この邪悪な気配を…貴様が生み出したんだ。この世を破滅へと導くだろう厄災をな。プロフィアは、あの化け物とたった一人で命を賭して戦っている。全ての決着をつけるために…な。剣を抜けっ! マックス!!」

 そう言ったジンは、鞘から剣を抜き、マックスへとその切っ先を向ける。

「俺たちも決着をつけようじゃないか、マックス」

「ジン…いいだろう。腰抜けの分際で…今度こそトドメをさしてくれる」

 同じく剣を抜き、切っ先をジンへ向けたマックス。見つめ合ったまま動かない二人、そんな二人から距離をとり、固唾をのんで見つめるヴァル、リオ、ロイド。前髪を揺らす程度の緩やかな風が通り抜けピタリと止んだ瞬間、二人はまるで示し合わせたかのごとく同時に動き出し一瞬にして距離を詰めぶつかり合った剣と剣が火花を散らす。

「ジン…貴様っ!!」

「マックス!! もう…腰抜けとは言わせんっ!!」

 二人の剣が幾度と無く激しくぶつかり合い、火花を散らし続ける。

「ジンのやつ…あのイスズ・Gマックスと互角にやり合ってやがる…スゲー…」

「男ってやつは…なんで殺し合いをしてるのに、あんなに楽しそうなのかしら。理解に苦しむわね…」

「女にはわかんねーって。相手は世界最強なんだぜ? 燃えないワケないだろう?」

「ロイド。あんたも、あそこに混ざって殺されてくれば?」

「そりゃないぜ…リオさん」

「もうっ!! 二人とも緊張感なさすぎだよ!! ジンさん…」

 祈るように両手を組み、ジンを見つめるヴァル。

「大丈夫だってヴァルちゃん。ジンは負けないさ」

「そうよヴァルちゃん。ジンジンは勝つわよ。絶対にね」

 三人がジンの勝利を信じ見つめる中、お互い一度としてクリーンヒットのないまま全身に浅い傷を増やしながら互角の受け流し合いが続く。

 スキルなど使わない、お互いの力量を確かめ合うかのように剣を合わせ続けるジンとマックス。やがて体力が底を尽き始め、それでも互いに譲らない二人の攻防は続き、そして…マックスの剣が宙を舞い、地面に突き刺さった。

「俺の勝ちだ…マックス」

 崩れ落ち片膝をつくマックスの喉もとに切っ先を突きつけたジン。

「ジン…殺せ!!」

「マックス…お前に聞きたいことがある。なぜだ? お前ほどの男が、なぜあんな力に手を染めたんだ? お前なら分かっていたはずだろう? あれがお前の望むべき力ではないことを」




 先の尖った数十という触手の追尾を翼を羽ばたかせ宙を舞い、紙一重でかわし続けるプロフィア。逃げながらホーリーカッターを放つが、ガルバデスを覆う強固な触手に阻まれ、かすり傷一つ付けられない。

『プロフィアちゃん。目よ。あの目を狙えば』

 触手の追尾を振り切ろうと一気にスピードを上げたプロフィアは、杖を構えガルバデスの巨大な目へと突撃していく…が、目から発せられた黒い波動に弾き飛ばされ、激しく壁に叩きつけられ壁にめり込んでしまう。そこへ追尾していた触手がプロフィアの体をなぞるように壁に突き刺さっていき、そのうちの二本が左腕と左足に突き刺さる。




「きゃああああああああーーーーーーっっ!!」

 再び響くプロフィアの悲鳴。何も出来ない自分が悔しくて顔を背けたジンは、剣を持つ手にグッと力を込める。剣の先端がマックスの喉に触れ、ツーっと血が流れ落ちる。

「なぜだっ!! マックスっ!! お前があんな力さえ欲しなければ、あの子が命を賭けて戦う必要なんてなかったんだ。あの子は…確かに強いのかもしれん。だが、いつも笑ってて、でも泣き虫で、食いしん坊でさ、どこにでもいる普通の女の子なんだ。答えろマックス!!」

「クッ…俺は………一度だけレンジャーと剣を交えたことがある。訓練中にお遊び程度に木刀を二、三度合わせただけだったが、俺には分かったんだ。あいつは俺よりも強いってことがな。俺は世界一のギルドのマスターの子供として生まれ、生まれながらにして世界一になることを義務づけられ生きてきた。世界一であることが俺が生きている全てだったんだ。それが、あいつが現れたことによって崩れ落ちたんだ。あいつさえいなくなればと、あいつの殺害を企てた。だが、あいつがいなくなっても、生まれて初めて味わったあの敗北感は消えず、夜な夜な悪夢にうなされた。俺は力が欲しかった。あいつを遥かに凌駕する力が。あいつの存在を俺の中から消し去るほどの圧倒的な力が欲しかったんだ。だから…」

 そう言い終え、肩を落としたマックス。ジンはスッと剣を下ろし、その剣を鞘にしまう。

「なぜだ、ジン。なぜ俺を殺さない! 俺が憎いのだろう?」

「…憎いさ。だが、それ以上に今はお前に感謝している」

「貴様! なぜだ…あの女といい…なんなのだ…お前たちは」

「マックス…お前だって、もう気づいているだろう? あのプロフィアと剣を交え、そして俺のような腰抜けのヘタレに敗れた。決してお前が弱いからじゃない。お前が強かったからだ。誰よりもな。お前という目標があったからこそ、俺もプロフィアも強くなれたんだ。お前にだってあったのだろう? 生まれた時から最強だったワケではないだろう? 血の滲むような努力をして、お前よりも強いものを乗り越え続けてそこまで昇り詰めたのだろう? 今のお前なら…」

 立ち上がりジンに背を向けるマックス。その時、轟音と共にアイゼンシュルツェのギルド社屋から立ち昇った巨大な青白い光の柱が空を突き抜け、その柱が消えると、ドス黒い雲は消え、空が青く晴れ渡る。

「どうやら、向こうも決着がついたようだな…マックス」

「そのようだな…ジン。首を洗って待っていろ。必ず殺しに行くからな」

「ああ。だが俺はお前を更に越えてみせるがな」

 皆に見せないその表情に嬉しそうな笑みを浮べたマックスは、振り返ることなく背を向けたまま軽く手を上げ、歩き去っていく。

「ちょっとジンジン! そのまま行かせちゃっていいわけ? あいつ、ホントに殺しにくるわよ?」

 ジンに駆け寄ったリオが、そう言ってジンの腕を引く。

「いいんだ。あいつは、いつまでも俺の目標であって欲しいからな」

「まったく…男ってホント、バカばっかりなんだからっ!!」

 ジンのもとへ歩み寄ったロイドとヴァル。

「ジンのくせにカッコつけやがって!」

 そう言って肘でジンの体を小突くロイド。

「ははは…まあ…これで、すべて終わったな。迎えにいこう。世界を救った英雄をな」

 大きく頷いたヴァル、リオ、ロイド。4人が社屋のほうへ歩き出すと、入り口からプロフィアが現れる。

「ただいまっ!」

 そう言ってニコッと笑ったプロフィアを出迎えた4人が口々に「おかえり」と返すと、プロフィアの笑顔が満面の笑みに変わる。

「よくやったな、プロフィア。よしっ! じゃあご褒美にメシでも食いにいくか!」

「あー…ジン、悪いが俺はパスな」

「私も、その…パスで」

「どうしたんだ? リオ、ロイド」

「俺たち、これからデートなのよ」

「なっ…冗談だろ? リオ」

「いや…それがね、成り行きでその…」

「お前ら、いつからそんな関係になりやがったんだ?」

「ま、そういうことなんで、俺たちは行くけど。また後でな」

「そういうことなのよ。じゃあジンジン、ヴァルちゃん、プロちゃん、また後でね」

 そう言ってそそくさといなくなったリオとロイド。

「おい…なんだよ…じゃあ三人で行くか!」

「へへへっ♪ えっと…ヴァルさんに大事なお話があるの。ジンさんは、ここで待っててもらえますか? どうしても二人きりで話したいものですから。ヴァルさん、いいかな?」

 うなずくヴァル。二人は社屋の中へ入っていき、一人ポツンと残されたジン。

「おい…まさか、この話…俺一人だけでエンディングを迎えるんじゃないだろうな…」

 一人寂しく立ち尽くすジン。


 その頃、ナリア城のある一室からアイゼンシュルツェのギルド社屋上に立ち昇った青白い光の柱を見つめる高貴な法衣に身を包んだある男…。

「役立たずめ。せっかく与えたオモチャを台無しにしおって。まあいい。私自らが動けばいいだけのこと。我々が受け続けた屈辱と迫害の日々に終止符を打つ時がもうすぐ訪れる。その報いを受けるがいい。神のイカズチを、その鉄槌をな」




「ごめんなさい…ヴァルさん…でも………」

「ううん………お疲れ様…プロさん…ありがとう。何もできなくてごめんね…」

「ううんっ! そんなことないっ!! そんなことないよ!! ありがとう…ヴァルさん…」

 ギュッと抱きしめ合ったヴァルとプロフィアの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる…。



つづく


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