エピソード第三幕4 ~アクアリンク捨て身の攻防戦 ジンVSマックス編
エピソード第三幕4
~アクアリンク捨て身の攻防戦 ジンVSマックス編
部屋の中央、互いの背に持たれ、激しく肩で息をし、床にへたりこむリオとロイド。周囲の床には、100人ほどのアイゼンシュルツェのハンターたちがころがっている。
「ハァ…ハァ…まさか…生き残れるとは思わなかったわ…やるじゃない…ロイド…口だけのヤツじゃなかったのね」
「ハァ…ハァ…そ…そりゃないぜ…まあ…俺はまだ死ねないからな…やらなきゃいけないことが残ってるもんでね…」
「ふふ…何よ? やらなきゃいけないことって…」
「決まってるだろ? リオさんとデート♪」
「まったくあんたってヤツは…こんな時にまで冗談? ほら…本命のお出ましみたいよ?」
入り口から階段を正面に見て右側にある装飾の施された立派な二枚ドアがゆっくりと開き…。
「俺は、本気で…やべぇ!!」
咄嗟にリオを抱き抱え壁際に跳んだロイド。
その瞬間、部屋の中央に召喚された巨大な隕石が落下、轟音とともに爆風が吹き荒れ…吹き飛ばされそうになる体を支え、腕で視界を遮るリオとロイド。
風が収まると、床には巨大なクレーターができ、隕石の破壊力にこと切れたハンターたちが爆風に飛ばされ、壁際に張り付いていた…。
「ありがと、ロイド。油断してたわ…」
「…あの野郎…あんな魔法を建物の中でぶっぱなしやがって…しかも平気で仲間を…何者だ? あいつら…」
開いたドアの先に立っている2人の男…深紅のきらびやかな法衣を身にまとった白髪で立派な白い髭をたくわえた老人と、無駄な肉は全て削ぎ落とされ、まるでゴムのような細くしなやかな筋肉に全身が覆われ、頭巾で顔が隠され、左右の手にどす黒い歪な形の短剣を持った盗賊。
「あいつらは…アイゼンシュルツェの三幹部よ…」
「幹部か…リオさん…震えてるのか?」
「ち、違うわっ! 武者震いよ」
「リオさん…そういやアイゼンシュルツェにいたんだったな。じゃあ、あいつらの強さを知ってるワケだ。ははは…こりゃ本格的にヤバイみたいだな。俺もここまでかな…リオさん、生き残れたらさ、俺とデートしてくれねぇかな?」
「まったく…あんたってヤツは、こんな時に…そんなの断れないじゃないの」
「やりー♪ やる気出てきたわ。大丈夫、リオさんは俺が守る」
「ロイド…私だってアクアリンクの一員なのよ? 私だって、あなたのこと、絶対死なせたりなんかしないわ。ヴァルちゃんが教えてくれたのよ。私には出来るか分からないけど…仲間のためになら、どんな困難だって乗り越えられるって」
「そうだな。確かに実力はあっちが上っぽいが、俺たちには、あいつらにないものがある。それは俺たちがアクアリンクだってことだ。いくぜっ!!」
「堕ちたのか…マックス…」
「ジン、まさか生きているとはな。どうやらコイツのことを知っているようだが…堕ちた? 違うな。俺は、こんなヤツに屈服などしない」
「お前は堕ちたんだ。マックスっ!!」
剣を抜き、マックスへ斬りかかるジン。マックスはゆっくりと立ち上がると、玉座に立て掛けてあった剣を鞘から抜く。そのどす黒い、まるで生き物のような歪な剣から延び出した触手が剣を持ったマックスの右腕に絡み付き、腕と剣が一体になる。
「堕ちた? 違うな。俺がコイツを支配すればいい。それだけのことだ」
振り下ろされたジンの剣を受け止め、そう言ったマックス。
剣を合わせたまま動かない2人。キリキリと剣を押し合い、お互いの力量を確かめあった2人は、剣を弾きあい、バックステップで距離をとる。
「ほぅ…腕を上げたようだなジン。だが…まさか俺を倒しにきたなどという寝言を言うワケではあるまい?」
「できれば、そうしたかったのだがな。そいつを倒すのは、やはり俺では無理らしい。そいつを倒せるとっておきがくるまで時間を稼がせてもらうぞ。この身に変えてもな!!」
「とっておき? 何がくるのか知らんが、いいだろう。その時間稼ぎとやらに付き合ってやろう。クククッ…たっぷりと後悔するがいい。その身をもってな!」
「リオ、お前ほどの僧侶は世界中を探しても、そうはいまいと一目置いていたのじゃがな。どうじゃ? 戻ってくる気はないか? それと、そこの魔術師。どうじゃ? アイゼンシュルツェにこんか? 寄せ集めのクズどもより、よっぽどいい仕事をしそうじゃしな」
部屋の中央に出来たクレーターを挟み、向かい合うリオ、ロイド、それに幹部の2人。
「悪いんだけど、お断りさせていただくわ。あなたたちみたいなゲスと一緒は、もうウンザリ」
白髪の魔術師の申し出をキッパリと断って見せるリオ。
「そういうことだ、じいさん。悪役がよく言うセリフだけどさ、それ受けた奴って、この世にいるのかよ」
そう言って鼻で笑うロイド。
「貴様ら…ラクに死ねると思うなよ!」
「だとさ、リオさん。受けときゃよかったかな?」
「アンタねぇ…こんな時によくそんな冗談言ってられるわね…」
「まあ、それが俺のスゴイところってことで♪ ん? あれ何だ?」
「ん? 何…って…ロ…ロイ…ド…何を……す…」
何か有りげにリオの後方へ視線を送ったロイドに釣られ振り返ったリオ。その隙をつき、リオのみぞおちに右拳を突き刺したロイド。
「わりぃ…リオさん…カッコつけさせてくれ。俺、目の前でリオさんが傷つくのは見たくねぇ。リオさんは絶対に守るから…俺の命に代えても」
「ロ…ロイ…ド…あんた…って…やつ…は………」
崩れ落ちるリオをそっと横たわらせるロイド。途切れそうになる意識を必死に保とうと歯を食いしばり、床に爪を立てるリオ…。
「そういうことで、あんたらの相手は俺一人で十分ってことで♪ いくぜっ!!」
そう言って両手に一振りずつ氷の剣を作り出したロイドは、2人の幹部へ向けて一直線にクレーターを飛び越え、クレーターの中央あたりで魔法『テレポテーション』を発動。その場から姿が消え、一瞬にして白髪の魔術師の眼前に現れ、双振りの氷の剣を振り下ろすが、それを読んでいたように現れた盗賊が、その剣を同じく双振りの短剣でそれぞれ受け止める。
「ちっ! そう簡単には、やらせてくれないってね」
舌打ちをしてそう言ったロイドは、横に飛び退き距離を取ろうとするが、それにピタリとついて飛んだ盗賊が繰り出す短剣を氷の剣で受け止める。だが、首筋、心臓、肝臓、手足の腱…体中の急所という急所を正確無比に狙い、しなやかにしなるその腕から繰り出される音速の如き短剣を魔術師の剣技で受けきれるハズもなく、辛うじて急所への攻撃は免れるも、浅いながらも体中に切り傷が増えていく…。
「くそっ! 距離を取らなきゃ魔法が…なっ!? くそったれーーーっっ!!」
盗賊と距離を取ろうと魔法『テレポテーション』を発動したロイド。だが、着地したロイドの眼前には白髪の魔術師が発動した魔法『ファイヤードラゴン』の巨大な炎の龍がロイドを呑みこもうとその口を大きく開いていた。
咄嗟に氷の壁を作り出したロイド。だが火龍の勢いは止まることなく氷の壁を粉砕、僅かにその軌道がズレ、直撃は免れるが、氷の壁が砕けた反動で弾き飛ばされたロイド。それを読み、先回りしていた盗賊がロイドの斜め後方、完全な死角から繰り出された強烈な短剣の振り落としを反射的に氷の双剣で受け止めるが、その威力に弾き飛ばされ壁に強烈に叩きつけられ仰向けに倒れこむロイド。
「はぁ…はぁ…くそっ………なっ!? か…体が…痺れて動かねぇ…」
立ち上がろうと上体を起こそうとしたロイドだったが、そう言って再び倒れ込んでしまう。
「くそっ…て…てめー…毒仕込んでやがったのか…」
賊の短剣に目をやり、そう言ったロイドを鼻で笑う盗賊。
「クククッ…どうやらそこまでのようじゃな。せっかくじゃ。殺す前に一つ余興と行こうかのう」
白髪の魔術師は、その右手の手のひらをリオのほうへ向ける。
「なっ!? て…てめー…やめろ…やめてくれ…た…たのむ…殺すなら俺だけにしてくれ…くそーーーーーっっ!!」
無情にもその手から発動されるファイヤーボール。無我夢中で全ての力を振り絞り、立ち上がってテレポテーションを発動したロイドは、リオに覆いかぶさるように両手両膝を床につき、その背中を火の玉が焦がす。
「ぐあっ…」
「ほほう…なかなかの色男ぶりじゃな。では、これならどうかな?」
放たれるファイヤーボールがロイドの背中を次々と襲う。
「うああああああああああああああああああーーーーーっっ!!」
響き渡るロイドの叫び声。背中はドス黒く焼け爛れ、いつ死んでもおかしくないほどの重傷を負いながらも、必死に両手両足をふんばりリオを守り続けるロイド。
「ロイド…もういい…そこをどけなさい…」
「があああ…くあっ…リ…リオさん…くそっ…わりぃ…カッコつけといて…情けねぇとこ見せちまって…うああああああああああーーーーっっ!!」
更に勢いを増し放たれる無数のファイヤーボール。体を仰け反らせ、断末魔のような叫び声を上げたロイドは、グッタリと倒れ込んでリオの体に持たれかかる。
「ふぅ…やっと死におったか。しぶといヤツじゃったわい…」
そんなロイドの姿を見た白髪の魔術師は、ファイヤーボールを撃ちやめ、額の汗を拭う。
「リ…オ…さん…逃げて…くれ………」
「ロイドっ! あなたまだ生きてたのねっ!」
「たの…む…にげ…て…」
「もういいっ! じゃべっちゃだめっ! いい? よく聞いて。私はまだ体に力が入らなくて思うように動けないわ。奴らを倒すチャンスは一度しかない。あいつら、まだ私が気を失ってると思ってるわ。全快は無理でも、私なら一瞬であなたを動けるまで回復することができる。あいつらをめいっぱい惹き付けて、まず盗賊の動きを奪うの。氷系のあなたなら出来るハズ。その先はあなたに任せるわ。あなたなら、あんなジジイに負けるハズないもの。あなたのこと…信じてる。好きよ…ロイド…」
そうロイドの耳元でささやいたリオ…。
ロイドの生死を確かめ、確実に息の根を止めるため短剣を構え慎重に近づいてくる盗賊。横たわる二人の前で足を止めた盗賊が二人の胸に突き刺そうと短剣を振り上げた瞬間、ロイドの体が淡い暖かな光に包まれ、サッと起き上がったロイドが拳を床に叩きつけると床が冷気を帯び、盗賊の両足を凍りつかせる。
「ジジイっ!! さっきのお礼だ! 受け取れーーーーーっっ!!」
そう叫んだロイドは、持てる力の全てを両手の手のひらに集め、白髪の魔術師へ向け突き出すと、巨大な氷の龍が現れ、龍は直線上にいた盗賊をガッチリと咥え込むとグルグルと回転し唸りをあげながら白髪の魔術師へ向かっていく。
「甘いわ、ヒヨッコが!!」
白髪の魔術師は、瞬時に火龍を召還。氷の龍と炎の龍が激しくぶつかり合い、間に挟まれた盗賊は断末魔の叫びと共に塵のようになり消滅してしまう。
「クッ…このぶっぱジジイ!! 仲間もお構いなしかよっ!!」
「クククッ…お前ではワシには勝てんよ。氷では炎には勝てん。炎を凍らすことなどできんからなぁ~ははははっ」
「く…くそったれ…うおおおーーーーーーっっ!!」
火龍にジリジリと押し返されていく氷の龍…。
「ロイドっ!! あなたは一人じゃないわ。受け取りなさいっ!! 私の想いを」
そう言ったリオは、ロイドの足首をつかみ、回復魔法を施す。ロイドの体が淡い光に包まれ…。
「やべぇ…力がみなぎってくる…ジジイっ!! 受け取れ! これが愛の力だ! 俺の氷は炎よりも熱いぜっっ!! うおおおおおおおおおおおーーーっっ!!」
ドンっと一気に膨れ上がり巨大化した氷の龍が火龍を押し返していく。
「そ、そんなまさかっ!! 来るなっ!! 来るなーーーっ!! ぬおわわわわわーーーーっっ!!」
火龍をかき消し、白髪の魔術師を咥え込んだ氷の龍は、壁を突き破り彼方へと消え去っていく。
「はぁ…はぁ…やった…やったぜ…リオさん」
リオの横に大の字に倒れ込んだロイド。
「ロイド…あのさ…さっきの、あれ嘘だから」
「へっ?」
「ほら、その…好きとかってやつ」
「はぇ? な…なんと?」
「だから、ほら、そうでも言わないとアンタがほら、力が出せないんじゃないかって…さ」
「冗談だろ? …マジ? そりゃないぜ…」
真っ赤な顔を見られまいと顔をロイドから逸らすリオ。
「で、でもほら、デ…デートの約束は守ってあげるからさっ」
「マジ? やりぃ! 約束だぜ?」
「え、ええ………もう…単純なんだから…バカっ…」
「ん? なんか言った? リオさん」
「何にも言ってないわよ。それよりさ、これであとは…」
「ああ。ジン…死ぬんじゃねーぞ…早くきてくれ…プロ」
「プロちゃん…お願い…早く」
ジンの強烈な剣の振り下ろしとともに稲妻が落下、だがその攻撃を軽々とバックステップでかわして見せるマックス。
「そんな大技が俺にかわせぬとでも思っているのかジンっ! なっ!? 囮だとっ!!」
その瞬間、マックスの背後で宙を舞うヴァルが究極魔法を発動。召還された無数の流星がマックスを襲う。激しい轟音とともに破壊された床からたった煙が辺りを覆う。
「ヴァルっ!! よけろーーーっ!!」
そう叫んだジン。一瞬にして晴れる視界、煙を振り払うように振り抜かれたマックスの剣から生じた黒い衝撃波がジンとヴァルを襲う。
剣で受け止めたジンは、その衝撃を受け止めきれず足を床にふんばったまま後ろに数メートル後ずさり。スキルの撃ち終わりで着地した瞬間だったヴァルは、咄嗟に杖で受け止めるが、受け止めた杖が折れ、衝撃波の威力に弾き飛ばされ壁に激しく激突する。
「くっ…ヴァルっ!! 大丈夫か!!」
「いったぁ………ごほっ…ごほっ…なんとか…だいじょぶみたい…だけど…」
よろよろと立ち上がろうとしたヴァルだったが、ペタンとその場に座り込んでしまう。
「そんな…まともにくらったのに無傷だなんて…こんなバケモノどうしようもないじゃんか…」
「ヴァル…お前はそこで休んでいろ。あとは俺がやるっ」
「ごめん…ジンさん…私じゃ無理みたいだ…」
「すまない…ヴァル。こんな戦いに巻き込んでしまって…」
完全に戦意を喪失し、虚ろな瞳で床を見つめるヴァル。マックスへ向け剣を構えるジンの頬を冷や汗が伝う。
「やはり、いい僧侶を連れているなジン。相手の力量が分かるのも強さのうちだろう。それに比べてお前は、なぜこれだけ圧倒的な差があるにもかかわらず戦意が衰えない? クククッ…いいだろう、お前の時間稼ぎとやらに付き合って、一つゲームをしてやろう。俺は、お前がギリギリ死なない程度に痛めつけ続ける。それをそこの僧侶に回復させる。さあ、僧侶のマナがどこまでもつか楽しみだな」
「そんな…狂ってる…」
高らかに笑い声を上げるマックスを睨みつけ、ボソッと呟いたヴァル。
「くっ…いいだろう。そのゲームに付き合ってやるさ。しょせん何度も救われた命…俺の命なんて安いものだからな。うおおおおーーーーっっ!!」
そう言い、マックスへ突進していくジン。
ジンの放った『烈波闘拳』を剣の一振りでいとも容易く消滅させたマックス。その瞬間、マックスの懐に飛び込んだジンの放った『闘拳』を左の手のひらで軽々と受け止めて見せるマックス。
「なっ!? くそっ!!」
そこからジンの繰り出す凄まじい無数の剣撃を口元に薄ら笑いを浮べながら簡単に受け流すマックス。
「クククッ…確かに強くなったなジン。だがしょせんその程度だ」
振り払うように放たれたマックスの剣を剣で受け止めたジンは、その威力に弾き飛ばされ数メートル先に着地、その瞬間マックスの剣より放たれた黒い斬撃がジンを襲う。
咄嗟に両腕でガードしたジンだったが、その斬撃はジンの足元の床を破壊し砂埃を立てる。視界が閉ざされマックスを見失うジン。突然、一瞬にして眼前に現れたマックスの剣がジンの腹部に深々と突き刺さる。
「がはっ…ぐわっ!!」
そんなジンを蹴り上げるマックス。宙を舞ったジンの体は、ヴァルの隣に落下する。
「ジン…さん…」
魔法『ライフトランス』により生命力のほとんどをマナに変換し、それでもなおマナを搾り出し、這うようにジンへ近づき、回復しようとジンの体に手を伸ばすヴァル。
「ヴァル…お…お前…これ…は」
腹部から流れ続ける大量の血…朦朧とする意識の中、必死に起き上がろうとするジンは、ヴァルの体の下の床が血に染まっていることに気づく。
「あの時、壁に激突した時…か。なぜ…回復しなかったんだ…ヴァル」
「えへへ………だって…もったいないじゃんか…足手まといの私には…回復くらいしか…能がないんだし…さ……絶対に…死なせないんだから…私なんかどうなったって…」
「すまない…ヴァル…あとは俺が…」
よろよろと力なく立ち上がったジン。そんなジンに、ゆっくりと歩み寄るマックス。
「クククッ…どうやらここまでのようだなジン。立ち上がったところで何ができる」
意識は途切れそうになり立っていることさえ困難で、既に動くことすら出来ないジンの左太ももにマックスの剣が突き刺さる。
「ぐあ…ああああ………」
「これでも倒れないのか…いいだろう。死にぞこないの貴様を今度こそキッチリあの世へ送ってやろう」
振り上げられたマックスの剣…。
「そんな…そんなの…ないよ……助けて…プロさん………プロさーーーーーんっっ!!」
悲痛に響くヴァルの叫び声…その時、入り口の扉が粉々に粉砕される。
「プ…プロさんっ!!」
「プロ…フィア…」
ゆっくりと部屋の中へと入ってきたプロフィアは、キッとマックスを睨みつける。
走馬灯のように流れる記憶…そして視界に入る傷つきボロボロになったジンとヴァルの姿…握り締められワナワナと震える拳をスーッと下ろしたプロフィアは、一度大きく深呼吸するとニコッと笑って見せた。
「お待たせしました、ジンさん、ヴァルさん。あとは任せてください」
そう言ったプロフィアは、ブレスレットのはめられた腕を上げ、手のひらを掲げる。するとブレスレットから開放されたマナが波紋のように広がり、プロフィアの全身を包む。燃え盛るようなマナに包まれ光輝くプロフィアの体。プロフィアは、両手を広げるとクルンと一回転、暖かく柔らかな光がフワリと部屋中を包んだ。
「なっ!? まさか…」
驚きの表情で自分の両手の手のひらを見つめるジン。同じく不思議そうな表情でゆっくりと立ち上がったヴァル。
「これって…そんな…緊急回復用の広範囲回復魔法だよな?」
頷くヴァル。
「まさか…あんな微量な回復魔法で全快しやがった。なんて魔力してやがるんだ…あいつ。それよりもなんで奴まで…」
「レンジャーの娘…きさまも生きていたとはな。俺まで回復するとはどういう冗談だ? 貴様っ!!」
「だって戦いはフェアじゃないとねっ! 私ね、世界中を旅して、いっぱい強い人と戦ってきた。でもね、あなたより強い人はいなかった。やっぱりあなたが世界最強で私の目標なんだ。私の夢は世界一のハンターになること。これはね、世界のためでもない、殺し合いでもない、この戦いはね、あなたと私の世界一決定戦なんだよ」
「ほぅ…言うようになったじゃないか小娘。その自信のほど、見せてもらおうかっ!!」
一瞬にしてプロフィアの間合いに入ったマックスが振り下ろした剣を受け止めたプロフィアがニコッと笑う。
「なんだその笑いは!! 馬鹿にしているのか!!」
「ちがうよ。嬉しいんだ。やっと…あなたと同じ土俵に立てたんだもん♪」
「なめるなよサコがっ!!!」
激しくぶつかり合う剣と杖、怒り任せに繰り出される数十、数百というマックスの剣撃を全て受け流して見せるプロフィア。
「ジンさん…見える?」
「ああ…なんとか…な。凄いぞ…プロフィアのやつ…マックスと互角…いや、それ以上だ。やべぇ…鳥肌が立ってきやがったぜ」
「プロさん…なんか楽しそう…」
「マックスも…な。伝わるんだろう。打ち合わせた杖からプロフィアの気持ちが。ついに始まったんだ。マックスとプロフィアの世界一決定戦がな」
つづく




