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ナリア王国物語  作者: ぷろふぃあ
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エピソード第三幕3 ナリア王宮開放戦 プロフィアと女神の試練編

   エピソード第三幕3

     ~ナリア王宮開放戦 プロフィアと女神の試練編



 アイゼンシュルツェの宮殿の敷地内へと入ったジン、ヴァル、リオ、ロイド。広大な敷地、ジンを先頭に宮殿まで延びる石畳を襲いかかってくる大勢の雑魚ハンターを蹴散らしながら宮殿入り口へと向かっていく4人。

「マックス!! 待ってろっ!! あの時の借り、返させてもらうぞ!!」

 そう叫び声を上げたジンが、凄まじい速さで剣を一閃し発動する超剣技『烈風剣』発生した巨大な竜巻が向かってくるハンターたちを宙へと巻き上げる。

 腰を落とし右拳を引き、その拳に気合を込めるジン。

「はあああああーーーっ!! だあああああーーーーっっ!!」

 真っ赤に煌く闘気を纏ったその拳が唸りを上げて繰り出され、放たれた闘気が落下してきたハンターたちを一掃する。

「すげっ…ジン、お前もう人間じゃないだろ?」

「うるせい♪ 道は開いた。突っ込むぞ!!」

「ちょ…ジンさん、作戦とか無しなの?」

「いらん! どうせ待ち伏せされている。突っ切るぞ!!」

「ジンジンったら、もうっ! 簡単に言っちゃってさ」

「ヴァル、リオ、ロイド…みんなの命、俺に預けてくれ…行くぞっ!!」

「ああ」

「うんっ!!」

「ええ」

 力強くうなずく3人。ジンは、入り口のドアを闘拳で突き破ると、中には待ち伏せしていた100人ほどの剣士、魔術師、盗賊、二階から弓や銃を構える弓使いや賞金稼ぎ。

 一人、敵の真正面へ突っ込んだロイドが、冷気を帯びた右拳を床へ叩きつけると、人を簡単に飲み込んでしまうような巨大な氷の手が床から突き出し、押しつぶすように前方へ倒れ込む。

 それをかわし、左右に割れるハンターたち。

「ジンっ! 行けっ!! ヴァル、ジンを頼むっ!!」

「しかしっ!!」

「いいから行けっ!! お前にはやることがあるだろう? これ以上消耗してどうするっ!」

 うなずき、割れたハンターの間を駆け抜け、階段を登るジン、ヴァル。二人は、二階の弓使いや賞金稼ぎをなぎ倒し、下へと叩き落していく。

「ロイド、リオ、絶対に死ぬなっ!! いいな?」

「ええ。ジンジンも」

「ジンっ! 絶対に死ぬな? いいな? ヴァルも…ジンを頼む」

 うなずいて見せるジンとヴァル。2人は、謁見の間のドアを開け、薄暗い部屋の中に足を踏み入れると、ドアが勝手に閉まってしまう。

 振り向き、ドアを押してみるヴァル。

「ジンさん…」

 首をそっと横に振ったヴァルにうなずいて見せたジンは、静かに、ただ静かに玉座に座るマックスをキッと睨みつける。




 王宮内へ入ったプロフィアは、襲いかかるハンターたちをなぎ倒しながら王の間を目指し階段を駆け上がる。

「くそっ! たかが女一人にっ!!」

「どけーーーっっ!! みんなが、みんなが待ってるんだからーーーっ!!」

 プロフィアは、向かってくる剣士をマナ消費を最小限に抑えるため一瞬だけ体にマナを纏い、その一瞬で一撃のもとになぎ倒し、止まることなく駆け抜けていく。




「醜い…なんと醜い…騎士団長と副団長が2人がかりでこれとは…弱い者はなんと醜いのだろう。特にお前っ!! 私は女がキライなんだよ! 女は弱くもっとも醜い! しかもそんな女が剣を持つなど…あああ…虫唾が走るっっ!!」

 王の間、壁際に追いやられた王と后、それを守るために戦う騎士団長と副団長は、たった一人の剣士によって深手を負い、床に伏していた。

 肩ほどの長さの金髪に色白でキレイな目鼻立ち、純白の鎧を身に纏い細身の剣を手にしたその剣士は、そう言い、長い赤毛で黄金の鎧に身を纏った副団長を踏みつける。

「くっ…あああああ……ああああああっ!!」

 響く副団長の悲痛な叫び声…。

「さあ、これで邪魔者はいなくなった。こんな醜い者どもがこの国を治めているなど…許せない…許さない!! 世界でもっとも強く美しいマックス様こそ、この世界を治めるに相応しい。さあ無能ども、私の目を汚した罪、その命で償うがいいっ!!」

 歩き出し、その刃を王と后へ向ける剣士。その時、王の間の扉が開き、現れたプロフィアが王と后のもとへ駆け出す。

「女!! 女が戦場になど…ああああっ!! 消えてっ! 無くなれーーーーっっ!!」

 整った顔立ちが一変、鬼のような形相でプロフィアを睨み付けた剣士は、剣を鞘に納め、腰を落とし右の拳を引くと、その拳に真っ赤に煌く闘気が纏われ、うねりを上げ繰り出されたその拳から放たれた人一人飲み込んでしまうほどの巨大な闘気が目にも止まらぬ超高速でプロフィアへと迫る。

 一瞬にして目前に迫る闘気…咄嗟に杖に全開でマナを込め、その闘気を受け止めたプロフィアだったが、圧倒的なその破壊力を押さえ込むことなどできず、受け止めた闘気とともに勢いよく壁へ一直線に向かっていく。

「うおおおおおおーーーっっ!! だああああーーーーーーっ!!!」

 気合ののった声とともに一瞬、体に全開でマナを纏ったプロフィアは、壁の一歩手前でなんとか踏みとどまり、闘気を弾き飛ばす。弾き飛ばされた闘気は、壁を突き破り外へと消えていく。

『今のはヤバかったなぁ…さっきジンさんが使ってたワザ…一度見てなきゃ今のでやられちゃってたかも……この人…今までとは別格だ…』

 一瞬とはいえ、全開ではやはり消耗が激しく、肩で息をし呼吸を整えるプロフィア。

「まさか…烈波闘拳をはね返すとは……なんと美しい! あなたのような女性がいるとは…すばらしい! すばらしいぞ!! もっと、もっと、その美しい姿を見せてくれ!!」

 そう言い、キラリと白い歯を光らせ笑顔を見せた剣士は、剣を抜くとプロフィアへ勢いよく突進していく。

「おいおい、どうしたんだ? さっきの力を見せておくれ。このままでは美しい姿を見ずに殺してしまうではないか」

 細身の剣により超高速で繰り出される剣を捌ききれず、体中に浅いとはいえ切り傷を増やしながらズルズルと後退していくプロフィア。剣を受け止めることで精一杯だったプロフィアのがら空きの腹部に、剣士のキックが突き刺さり弾き飛ばされ、更に追い討ちの剣の振り下ろしを杖で受けとめるが、体が浮いているためその威力は殺せず更に体が宙へと。そこへ更に追い討ちで剣技『十字斬り』が炸裂。縦の一閃は捌けたが、横の一閃が捌ききれずに、浅いながらも腹部に横一線の切り傷が残る。更に追い討ちで繰り出された『闘拳』を杖で受け止めたが、その威力で激しく弾き飛ばされた体が壁に激突し、床に仰向けに倒れこむ。

「ハァ…ハァ……いたたた…桁違いに強いや…この人…でもっ!」

 何事もなかったかのようにスッと立ち上がったプロフィアは、妙に自信の満ちた表情を見せる。

「すばらしい! まさか平然と立ってのけるとは…。分かっているぞ。お前は、マックス様との戦いのために力を温存しようとしているのだろう? 強き者には、その姿もまた美しく見えるが、私にとっては、この上ない屈辱だ。私とて、お前と同じ、強き者の頂を目指す者なのだからな」

「そだね…分かりました。正直に言うね。本当にあなたは強い。でも今のあなたの攻撃で、あなたの強さの底が見えました。今の私なら全開の半分くらいの力であなたを倒せてしまうんだ。でも、全開を見せてあげます。全開の状態だと力を抑えるのが難しいから、あまり手加減はできないかもですが…」

「ククク…この私が、ここまでコケにされるとはな。マックス様と同等の美しさを持つ女性がこの世にいたことは嬉しいが……私とて最強を目指す者! しかも今は、アイゼンシュルツェ3幹部の一人。お前をマックス様のもとへ行かせるワケにはいかないっ!!」

 プロフィアへ向け、剣を構える剣士。プロフィアは、杖を両手で前方へ構え、全開でマナを練り出す。

 湧き上がる力の波動がプロフィアを中心に風のように吹き荒れ、プロフィアの体は青白い神々しい光に包まれる。

「なんと美しい…いくぞ!! うおおおおおおーーーーっ!!」

 プロフィアへ向け走り出した剣士が、床へ向け凄まじい速さで剣を振り下ろすと、超剣技『烈波雷神撃』が発動。地を這うように発生した雷の波が超スピードでプロフィアへ襲いかかる。

 だが、その波に飲み込まれたかのように見えたプロフィアの姿は消え、一瞬にして剣士の懐に現れる。

「まさか! 見えなかっ…ぐあっ!!」

 剣士の懐に潜り込んだプロフィアは杖の柄を剣士の腹部へ突き刺す。弾け飛んだ剣士は、数メートル先へ落下し、更に床でバウンドして数メートル先でグッタリと倒れこむ。

 纏っていたマナを消し、呼吸を整え、慌てて剣士に駆け寄るプロフィア。

「よかったぁ~♪ 手加減できなかったから…生きてましたねっ」

「この私を一撃でとは…な。ゴホッ…ゴホッ…くっ……美しい…なんと美しい…あなたのように美しい女性は、この世であなた、ただ一人です…。どうか…私と結婚してくれませんか。あなた以外の女性など考えられない…」

「へっ? え、いや、その……はぅ…まいったなぁ~…そんなこと言われたの初めてですぅ…」

 顔を真っ赤にしたプロフィアは、困り果てた末、剣士の頭を杖でコツンと叩くと、剣士は気を失ってしまう。

「でも…ごめんなさいっっ!! ちょっと…気持ち悪いですぅ…」


 騎士団長と副団長、それと自分に回復魔法を施すプロフィア。傷の癒えた騎士団長と副団長が立ち上がり、プロフィアへ深々と頭を下げる。

「すまぬ。礼を言わせていただく」

「ありがとう。感謝します」

「はわわわ…そ、そんな、私なんかが頭を下げていただくような身分でもないですし…」

 慌てるプロフィアにもう一度軽く頭を下げた二人は、王へと向き直り、片膝をついて頭を下げる。

「大変申し訳ありません…私どもが不甲斐ないばかりに、王の身を危険に晒しましたこと、深くお詫びもうしあげます…」

 そう言った副団長、それに団長が下げた頭を更に低くする。

「よい。それより、残りの兵を再編成し、急ぎアイゼンシュルツェの討伐へ向かえ!!」

 王の言葉に「はっ!!」と返事を返し立ち上がった騎士団長と副団長。

「ダメですっ!!」

 王の言葉を聞き、そう声を張り上げたプロフィア。

「ダメだよ…殺されちゃうよ…あの人には…イスズ・Gマックスには誰も敵いっこないっ!! これ以上誰かが死ぬとこなんて私は見たくないもんっ!! だから…あの人は私が止めますっ! 止めて見せますからっっ!!」

 王の目を真剣な眼差しで見つめ、そう言ったプロフィア。

「たかがハンター風情が何を言う! お前のような女がたった一人でだと? 思い上がるな。騎士団長! よいっ! 早く兵を集めよ!」

「王様! この者の力、目にしたでありましょう? これほどの力を持ったものが、こう言っているのです。我々が何人束になったところで犬死でしょう。ならば、この者に任せ、我々は王の護衛をっ!!」

「騎士団長!! 貴様、臆病風に吹かれおって! それでも貴様は誇り高きナリア王国王立騎士団の騎士団長か!!」

「なんと言われようと構いません! しかし、我々は王の身を守ることが第一。我々が城を空ければ、あれほど強大な力にたいして王を守ることのできる者がおりません。それに…この者の目をご覧になっておいででしょう? 自分の身を挺して人々の命を重んじる真剣な眼差しを。この者は信用できます! どうか、この者にっ!!」

「ありがとうございます…騎士団長さん。お願いします! 王様っ!! 私は絶対に誰にも死んでほしくないんです!! 私にすべて任せてもらえませんかっ」

 そう言い、深々と頭を下げるプロフィア。同じく頭を下げた騎士団長、それに副団長。

「むぅ………よい、分かった。本当にすべてお主に任せてよいのだな?」

『できることなら部外者には関わって欲しくはなかったのだが…まあ仕方が無い。すべてが終わったあとにどうとでもなる…』

「はいっ!!」

 王の問いに大きくうなずいて見せたプロフィア。

「あのっ! 私、あの人の力に対抗するために、どうしてもライラ姫様に会わなければならないんです。ライラ姫様はどこにいますか?」

「ライラ様なら、多分、地下牢に幽閉されておいでだと思う。助け出していただけないだろうか?」

 プロフィアの問いに答える騎士団長。

「はいっ! ではでは、行ってきますっっ!!」

 そう言って駆け出し、王の間をあとにしたプロフィア。




 地下へと続く通路に点々と続く血の跡…その跡を追うプロフィアの目に映る若い王立魔術師団の法衣を纏った魔術師。瀕死の重傷を負いながらも壁を支えに地下へと向かっていたのだろうその魔術師は、地下へと続く階段を目前にしながらも力尽き、床に伏していた。

「早く…ライラ様のもとへ…いかなけれ…ば………ライ…ラ…さ…ま……」

 今にも事切れそうな微かな声で呟き、動かない体を少しでも前へ…前へと進めようと腕を前へと伸ばし、指先を動かす魔術師のもとへ駆けつけたプロフィアは、慌てて回復魔法を施す。

「どなたかご存知ありませんが、ありがとうございます。私は急ぎの用がありますので、お礼は、後ほどさせていただきます。では…」

 傷が癒え、ヨロヨロと立ち上がった魔術師は、プロフィアへ礼儀正しく一礼し、そう言うと地下へ向かって駆け出すが、足がもつれ、その場で片膝をついてしまう。

「そんな体じゃ無理だよ! しばらくここで休んでなきゃ」

「いいえ! 私は、なんとしてもライラ様をお助けしなければ! たとえこの体がどうなってしまおうと!!」

 出血多量で力の入らない体を気力で奮い立たせ、駆け出そうとする魔術師の腕を掴み止めるプロフィア。

「大丈夫。私が行くから、あなたは、ここで休んでいて! お城のほうは開放しましたし、王様も無事です。今は騎士団長さんと副団長さんがその護衛にあたっていますから、あなたもそこへ。あとは私に任せておいて下さい」

「まさか…あなたが、お一人で、やつらを倒したのですか?」

「うん。だから安心して任せておいて!」

「あなたは…いったい何者ですか? お名前をお聞かせ下さい!」

「私はプロフィア…プロフィア・Sドルフィンです」

「Sドルフィン!? まさか! あなたはレンジャー様の?」

「お父さんのこと知ってるの?」

「やはりそうですか…幼少の頃、何度かお会いいたしました。誰よりも強く、そして誰よりも心の寛大で暖かな人でした。わたくしの憧れであり目標でもありましたが、原因不明の不慮の死を遂げられまして…大変お悔やみ申し上げます…」

 そう言い、プロフィアへ頭を下げる魔術師。

「レンジャー様のご息女ならば、そのお言葉も信用できますし、安心してお任せできます。どうかライラ姫とリリス姫のこと、よろしくお願いします。申し遅れましたが、わたくしはキースと…キース・レイハルトと申します。どうか、お願いいたします!!」

 真剣な表情でそう言い、深々と頭を下げたキースは、安心して体の力が抜けたのだろう、その場に座り込んで壁に持たれる。

「うんっ! 任せて! キースくん」

 駆け出したプロフィアは、地下へと続く階段を駆け下りていく。




 所々にランプの明かりが灯るだけの薄暗い地下通路。その両脇に並ぶ鉄格子の掛かった部屋の一室に捕らえられていたライラ姫とリリス姫。

「大丈夫ですリリス。心配することはありません。じきに助けがきます」

「お姉さま…そんな気休めはやめてっ! どうせ私たち殺されるんだわ…」

 部屋の隅でうずくまり、プルプルと震えるリリスの手をそっと握り首を横に振って優しく微笑むライラ。

「大丈夫よリリス。必ず助けはきます。必ず…」

 その時、通路の奥にずっと見えていた見張りのハンターの影が倒れて消える。

 立ち上がり、鉄格子の前に立ったライラとリリスのもとへやってきたプロフィア。

「えっと…ライラ姫様とリリス姫様ですね?」

 プロフィアの問いにうなずく二人。

「今開けます。少し下がっていて下さいっ!」

 そう言ったプロフィアは、持っていた杖の先端にマナを込め、青白く光る斧のような刃を作り出し、それを振り下ろすと鉄格子に掛かっていた錠前が真っ二つに割れて床に転がる。

 鉄格子の扉を開き中に入ったプロフィアだったが…なぜかライラとプロフィアの間に入ったリリスが体で大の字を作りプロフィアを睨み付ける。

「それ以上近寄らないでっ! あなたみたいな野蛮なハンターをお姉さまに近づけるワケにはいかないわっっ」

「リ、リリスっ!」

「いいからお姉さまは黙っていて! そもそも私たちをこんな目に合わせたのはハンターなのよ? それに、こんな得体の知れない野蛮な人、信用できないわ!!」

「う…そんな野蛮野蛮言わなくっても…」

「野蛮は野蛮じゃない! それでも女の子なの? カギなら見張りの人が持っていたはずでしょ? そんなことも分からないの? だからハンターなんて嫌なのよ」

「うっ…はぅ…確かにおバカだし女の子っぽくは…ないかもだけどさっ…そこまで言わなくっても…」

 煌びやかなドレスを身に纏い、高貴な雰囲気をかもし出す、明らかに年下だろう女の子にそんな図星なことを言われ、しょぼんとしていたプロフィアへリリスがさらに追い討ちをかける。

「うわっ!? くっさ~い…何日お風呂に入らないと、こういう臭いになるのかしら…」

「そ…そんなに臭くない…もんっ!!」

 自分の体の臭いをクンクン嗅いで確かめたプロフィアが自信なさそうに反論する。

「やだわ~…野蛮で臭いハンターなんて…絶対にお姉さまには指一本触れさせないわよ!! 大体、あなたみたいな身分の低いものが王族に近づくだけでも死罪にあたいするわ。それ以上近づいたら牢屋にいれるわよっ!!」

「むっ…そこまで言わなくってもいいじゃないっ!! 自分なんて牢屋に入れられちゃってるくせにっっ」

 意外と負けず嫌いのプロフィアは、真っ赤な顔で眉を吊り上げ、そう言い返す。

「なんですって~~~っ!! このチンチクリンのツルペタ女っ!!」

「う~…人が気にしてることをっっ!! せっかく助けにきてあげたのにっ!!」

「誰が助けにきてなんて頼んだのよっ!!」

 真っ赤な顔でにらみ合うプロフィアとリリスの間に割って入ったライラが怖い顔でリリスをにらみ付ける。

「リリス!! ダメでしょう? 一国の姫が、そのような言動をしては。そのおてんばを直しなさいといつも言っているでしょう?」

「でも…お姉さま~」

「言い訳は許しませんっ!! あの方にお謝りなさい」

 なんとも言えない怖さを秘めた一見無表情のライラの表情を見てたじろぐリリス。

「わ…分かったわよ。謝ればいいんでしょ?」

 不本意そうな表情でプロフィアへ小声で「ごめんなさい…」と言って小さく頭を下げて見せたリリス。

「妹のご無礼をお許し下さい…助けにきていただきありがとうございます。お名前、お聞かせくださいますか?」

 丁寧に深々と頭を下げ、そう言ったライラ。

「い、いえいえっ! あの、その、私、プロフィアっていいますっっ」

「プロフィアさん、あなたは、私を訪ねるためにここにきたのですね。私にはわかります。私はナリア女神の力を継承する者…私にはあなたの瞳に宿る運命めいた決意を感じます。詳しくお聞かせ願えませんか? 私で力になれることでしたら喜んで力になります」

 うなずいて見せたプロフィアは、ライラに自分がガルバデスと戦わなければならないことについて話す。

「そうですか…それでナリア女神の力を…わかりました。わたくしも初めてのことなので、どこまで力になれるか分かりませんが、やってみましょう」

「あ、ありがとうございますっ!!」

 深々とお辞儀をして見せたプロフィアへ微笑みかけ小さくうなずいて見せたライラは、プロフィアへ背を向ける。

「では、その腕輪を着けた方の手で私の肩に触れて目をつぶって下さい。そして触れた手の先から女神の存在を感じとり、そこに意識を集中して下さい。きっとその腕輪が女神のもとへあなたの意識を運んでくれるはずですから」

「はいっ!!」

 プロフィアは自分の体の臭いをクンクンと嗅いで確かめると、遠慮しがちにライラへ近づき、そっと左手をライラの肩へと置く。

「うふふっ、平気ですよ? プロフィアさん。 やっぱり…どんなに強くても女の子なのですね………本当にいいのですか? 今ならまだ戻ることができるのですよ? あなたは普通の女の子なのです。私のような王家の者でもなく、生まれながらにして背負う運命を持っているワケでもない。あなたは自分の意思でここにいます。だから自分の意思でこのままここを去ることもできるのです。この先の戦いは命を削るものになるでしょう。あなたが世界のために命をかける必然はないのですよ? 今ここであなたが戦うことをやめても誰もとがめる者などいませんし、この世界のどこかにガルバデスと戦える者がいるかもしれない。わたくしもナリア女神の力を継承する者としてその戦いに赴かねばならない身でしょうし…」

「ライラ様…私は、ライラ様にも、他の誰にも傷ついてほしくなんかないんだ。これは私の戦いです。わたしなんかが世界をどうのこうのとか…なんかおこがましいのかもだけど、でもっ! 私は決めたから。みんなを守るって。私の力はそのためにあるんだって。それに、私のことを信じて今、アイゼンシュルツェと戦ってくれている大切な仲間がいるの。大切な…大切な人が私を待っているの。だから…私は逃げないっ!! たとえこの身がどうなろうと…」

「そう…ですか。あなたは心も強い方なのね。あなたが運命に導かれこの場を訪れたのは必然なのかもしれません。では…始めます!」

 ライラはそう言うと、祈るように両手を胸の辺りで組み、目を閉じる。すると辺りが眩い光に包まれ………光が晴れるとプロフィアが仰向けで床に倒れていた。

「お姉さまっ! どうしたの? この人…」

「おそらく精神だけが私の精神世界にあるナリア女神の居まう場所へと旅立ったのでしょう」

「この人って、どうなっちゃうの?」

「わたくしにも分かりません…わたくしたちは、ただ祈るしかありません。この方に世界の命運がかかっているのですから…」




「…ん? ここは………」

 あまりの眩しさに開けずにいた目をそっと開いたプロフィア。そこはいまだかつて見たことの無い世界で…夜なのだろうか、空には細い三日月があり、夜空とは言いがたい少しだけ明るい不思議で幻想的な紫がかった空。多分、森なのだろう、見たことの無い不可思議に幹の曲がりくねった木々が立ち並び、同じく見たことの無い草花が多い茂る。

不安に胸を押さえつけられながら辺りを見渡していたプロフィアの耳に…いや、頭の中に女性と思われる声が響く。

『ナリアの森へようこそ。招かれざる客よ』

「誰…ですか? あなたがナリア女神さま?」

『左様、いかにも、わらわがナリア女神じゃ』

「お願いがありますっ!! どうか、その姿を見せて私の願いを聞いていただけませんか?」

『招かれざる客よ。わらわは、人間のような下等で弱き者は大嫌いじゃ。醜き弱き者に見せる姿も、願いを聞く耳も持たぬ』

「そんな…お願いですっ!! どうしても女神様の力を貸していただきたいんです!! じゃないとガルバデスっていう悪魔に世界が滅ぼされちゃうんです…お願いですっっ!!」

『ほう…ガルバデスとは久しい名じゃな。あんな下衆など、わらわは、どうでもよい。人間も同じく、滅びようが、わらわには、どうでもよいことじゃ。目障りな人間が滅んでくれれば、わらわには都合のいいこと。下等な者どもが下衆に滅ぼされる、実に愉快じゃ。ほっほっほっ』

「うっ…そんなの…ないよ……そんな…お願いですっ!! 助けて下さい…みんなが待ってるんです…こんな頼りない私に期待してくれるみんなが…私はどうなったって構わないです。どんなことだってします! この命を差し出せと言われれば喜んで差し出します! だから…世界を…みんなを守って下さい!! お願いします!!」

 瞳に涙を溜め、必死に訴えかけるプロフィア。

『ふふっ。その言葉に二言はないな? ちょうど退屈していたところじゃ、一つ、そなたを試してやろう。わらわは弱き者は嫌いじゃが、強き者は嫌いではない。その口ぶりじゃと、たった一人で世界を救おうというのじゃろう? それなりに腕に自信があるのじゃろうて。我が下僕に打ち勝つことができれば、姿くらいは見せてやろう。まあ、人間ごときが神獣に打ち勝てればの話じゃがな』

「わかりました。それしかないのなら…やりますっ!!」

『ほっほっほっ。せいぜい楽しませておくれ。では、行けっ! 神獣よ』

 杖を構えたプロフィアの正面に、まるで次元を越えてきたかのようにスーっと姿を現した二足歩行の虎のような怪物。

 身の丈はプロフィアの3倍以上、全身が鋼のような筋肉で覆われ、手は鋭利な鉤爪、頭からは先の鋭利に尖った巨大な角。

 神獣と呼ばれたその獣が雄叫びを上げると、大地が震え…地を蹴りつけるたびに起こる地響きとともに勢いよくプロフィアへ向け突進してくる。

「はやい!? でも、私のほうがっっ」

 スピードでは完全に勝るプロフィアは、一瞬にして神獣の視界から消え、後ろに回りこむ。反応が遅れ、振り返った神獣の下っ腹に先端にマナが込められ青白く光り輝く杖を、体を一回転させて遠心力をつけてフルスイング、必殺のメテオインパクトを全力で叩き込んだプロフィア。しかし…。

「そ、そんな…手ごたえが…ないっっ!! きゃああああーーーっ!!!」

 まったく微動だにせず顔色一つ変えない神獣は、打ち終わりで完全に無防備なプロフィアへ向け、その巨体からは信じられないようなスピードで右の拳を打ち下ろす。その唸りを上げて向かってくる拳をバックステップで辛うじてかわしたプロフィアだったが、そのまま地面に突き刺さった拳の圧力による衝撃波で弾き飛ばされ、数メートル先に倒れ込む。

「あ…くっ…体が……動かない………」

 起き上がろうとしたプロフィアだったが、体中がバラバラになるような激しい痛みとともに全身が痺れ、動くことができない。

 勢いよく駆け出した神獣は高々と飛び上がると、そんなプロフィアへ向けて右拳を突き出し、全体重をかけて突き落とす。

「あ…あああ……動いて…お願い…衝撃だけでこんななのに…まともに食らったら…死……いやっ…いやーーーーーーっっ!!」




 まるで眠っているかのように床に横たわっていたプロフィアの体がビクンっと勢いよく跳ね上がり、大量の吐血をする。

「お姉さまっ!! この人、どうしたの!?」

 突然のことに驚き、ライラにしがみついてそう言ったリリス。

「おそらく女神の試練をうけているのでしょう。精神と肉体は等しく繋がっているものです。精神が傷つけば同じように肉体も傷つくのです」

「そんな…この人、このままじゃ死んじゃうんじゃ…もうっ!!」

 プロフィアに駆け寄ったリリスは、両手をプロフィアの胸のあたりに沿え、まだ未熟で拙い回復魔法を額に汗を浮べ、必死に施し続ける。

「リリス…意外ですね。あなたに、そんな一面があるなんて」

「なによっ! それじゃ私が嫌な女みたいじゃない! だってほら…放っておけないじゃない…」

「ふふっ。多分気休め程度にしかならないでしょうが、あなたの想いは伝わるでしょう」

「べ、別に、こんな人、私は、どうなったっていいんだからっ!!」

「素直じゃない子ですね。しっかり見ておきなさいリリス。これが運命を背負った者の覚悟です。あなたも王家のものなのですからね」

『リリス…よく見ておくのです…あなたにも、いずれ訪れるのですから…運命を背負う時が……』




 拳の圧力で地面に埋もれ込んだプロフィア…大量の吐血、生気のない虚ろな瞳でぐったりとしたまま動かず…狩りを終えた獣、神獣は、そんなプロフィアを見下し、勝利の雄叫びを上げる。

『無理だよ…もう勝てっこない…生きてはいるけれど……今の攻撃を防ぐためにマナをほとんど使い切っちゃったもん…それにもう、体だって動かない………あっ……』

 右手を握り込み、動くことを確認したプロフィアは、ふらつきながら、ゆっくりと立ち上がる。

『体が動く…なんだろう…すっごく胸のあたりが暖かい……これって…』

 胸に手を当て、目を閉じるプロフィア。

『これって…あのお姫様だ。あったかいや……そうだよねっ! 私は一人じゃない! みんながいるもんっ!! みんなが私のこと待ってるんだもんっっ!!』

 再度の吐血、激痛に崩れそうになる体をプルプルと震える両膝で必死に支えたプロフィアは、力強く杖を構えて見せる。

「負けてたまるかっ! 絶対に…私は負けないっっ!! うおおおおおーーーっ!!」

 神獣へ向かって駆け出したプロフィアへ向け拳を突き出す神獣。その拳が放たれるよりも先に一瞬にして背に回ったプロフィアは、杖を力一杯その無防備な背中に叩きつけると、すかさず距離を取る。

 怒り狂ったように雄叫びを上げプロフィアへ向かって一直線に駆け出す神獣。そんな神獣へ向けて魔法『ホーリーカッター』を放ったプロフィアだったが、その刃は鋼のような表皮に阻まれ、掻き消えてしまう。

「やっぱり私なんかの魔法じゃ効かないっか…打ち勝てればって、そういうことだったんだね」

 そう言い、杖を握りしめるプロフィア。猛スピードで突進してくる神獣のタックルを紙一重でかわし、カウンターで腹部に一撃を加えて距離をとる。

 まったくダメージを受けている様子の無い神獣は、再びプロフィアへ向け走り出す。

「くっ…負けるもんか…何度だって…何度だって打ち込んでやるっ!! 私の命が続く限りっっ!!」




「私、もう見てられない…」

 そう言い、ライラの背に隠れるように寄り添い目を伏せるリリス。

 1時間、2時間…どれほどの時が経過したのだろうか…床に横たわるプロフィアは何度も吐血を繰り返し、体中にアザや傷を増やしていく…。

「リリス………わたくしたちは無力ですね…この方は世界のため、お一人で戦っているのに、わたくしたちは見ていることしか出来ないのですから…」

「お姉さま…この人…大丈夫だよね? ちゃんと戻ってくるよね? 私、何にも知らなかったから…まだ、ちゃんと謝ってないもの…」

「大丈夫。きっと大丈夫ですわ…信じて祈りましょう」




「ハァ…ハァ………でああああーーーっっ!!」

 既に体力もマナも尽き果てたプロフィア。それでも…いくら攻撃しても平然としている神獣へ向け、杖を構え駆け出していく。

「きゃっ!! うあああ…ゴホっ…ゴホっ…ハァ…ハァ……」

 なぎ払うように繰り出された神獣の鋭い爪がプロフィアの腹部を抉り、その衝撃で弾き飛ばされ木に激突して倒れたプロフィア。すでに何の力も残っていないはずなのに…それでも気力だけで立ち上がり、杖を構えて見せる。

『お前は馬鹿なのか? 勝てないのは、もう分かっているだろう? なぜ立ち上がる? 死ぬのが怖くないのか? もうよいだろう? 黙って帰れば、命までは取りはしない。わらわとて女神じゃ。そこまで無慈悲ではない』

 響くナリア女神の声…プロフィアは、首を横に振って見せる。

「私も…世界中のみんなも、女神様から見たら弱くてちっぽけなのかもしれない…でもね、みんな頑張って生きてるんだ。泣いたり笑ったり怒ったり…どんなに弱くたって、どんなにちっぽけだって、女神様と変わらないよ。みんな力強く生きてるの。私は、世界中を旅して回って、たくさんの人たちに出会った。みんないい人ばかりで、みんな一生懸命生きてた。世界中に、たくさん、たくさん、そんな人たちがいるんだ。私なんかには、もったいないくらい素敵な世界なんだ。そんな世界を守るためなら、この身を捧げたって惜しくはないもん。絶対に…絶対にあきらめるもんかーーーっ!!」

 力強く、そう言い放ったプロフィアは、最後の力を振り絞り、神獣へ向かって突進していく。

『おろかな…では望み通り死ぬがいい。やれっ! 神獣よ』

 雄叫びをあげ、プロフィアへ向かって走り出した神獣は、高々と飛び上がると、プロフィアへ向けて拳を突き落とす。

「世界中のみんな…アクアのみんな………ジンさんっ! 私に力をっ! 力を貸してっっ!! うおおおおおーーーーっっ!!!」

 自分へ向け落下してくる巨体と空を切り唸りをあげて突き出された拳を迎え撃つプロフィアは、微かに残ったマナと、全ての想いを杖に込め、メテオインパクトをその拳へ向け放つ。

 轟音とともに発生した衝撃波が周囲の木々をなぎ倒し、辺りは眩い光に包まれ…弾け飛んだ神獣が木々をその巨体で倒しながら数十メートル先へ倒れこむ。

「なに? この力は…力が溢れてくる…」

 まるで燃え盛るように溢れ出したマナがユラユラと揺らめきながらプロフィアの全身を包む。みなぎる力を確かにその手に感じながら不思議そうに両手の手のひらを見つめるプロフィアの眼前に、ふわっとした光の球体が空より舞い降り、眩い光を放つと、そこに体長が50センチ程度、透き通るような白い肌、背中にはふわりとした真っ白な翼、純白のドレスを身に纏った女の子が現れる。

「この力…あなたなの?」

 プロフィアの問いにうなずいて見せた女の子は、そっと頷いてプロフィアへ微笑みかけると、ふわりと翼を羽ばたかせて背を向け、空を見上げる。

「女神様っ! お願いがあります。私は、この子と共に行こうと思います。どうかお許しを」

『小ざかしいマネをしおって…お前のような下級天使に何ができる? お前では、あの下衆にすら遠く及ぶまい。天使といっても、しょせんお前は弱き者。同じ弱き者の姿を見て感化でもされおったか』

「確かに私は下級天使…力を持たない弱き者かもしれません。でも、この子は違う! この子は弱き者なんかじゃない! 誰よりも…きっと女神様よりも、もっと、もっと強い心を、強い想いを持っているわ」

『貴様! 下級天使の分際で、わらわを愚弄する気か!! 覚悟はできているのだろうな?』

「もとより覚悟のうえです。この子の想いは、私の天使としての使命を全うするに値すると確信しています。女神様は、この子の姿を見ていて何も感じなかったのですか? 感じたでしょう? この子の強さを」

『感じぬよ。気持ちなど、想いなど、何の役にたつというのだ。強ければ生き残り、弱ければ死ぬ。死ねばそれまで…強さの前に、心など無意味なのだ。まあ、好きにするがよい。人間が滅びようが、下級天使が一人くらい消えようが、わらわには、どうでもよいことじゃ。まったく…だから人間は嫌いなのじゃ…』

「女神様…ありがとうございますっ!!」

 空に向かって深々とお辞儀をして声を張り上げた女の子は、再びプロフィアのほうへ向き直る。

「はじめまして。私はノエリアっていいます。あなたのお名前を聞いてもいいかしら?」

「はいっ! 私はプロフィアっていいますっっ」

「プロフィアちゃん。あなたの一生懸命さを見ていたら、放っておけなくなっちゃって…女神様じゃなくってガッカリしちゃったかな?」

「ううんっ! そんなことないですっ!! ありがとうございますっ!! ノエリアさんが助けてくれなかったら私、今頃死んじゃってたかもだし…それに、この力…すっごく暖かくって心地よくって…」

「ふふっ。ノエリアって呼び捨てでいいよ。私のほうが随分年上だけれど、天使としては、まだまだ子供だからねっ。その力ね、今、私の力をプロフィアちゃんに流し込んでいるの。下級天使の私の力はたいしたことはないのかもだけど、体に蓄積できるマナの量は人間の数十倍はあるわ。マナのコントロールができるプロフィアちゃんなら、そんな私の力を生かすことができると思うの。だから…女神様と比べたら頼りないかもしれないけど、私の力を使ってほしいの」

 立ち上がった神獣が怒り狂い、狂気の雄叫びを響かせると、プロフィアへ向け突進してくる。

「蹴散らすよ、プロフィアちゃん。今のあなたなら対等に戦えるはず。私は戦う力を持たない役立たずだから…せめて私の力を利用してほしいの」

「ノエリアさ…えっと、ノエリア。違うんだ。私が求めている力はそんな力じゃない。使うとか利用するとか、そんなのじゃないんだ。それじゃあ、あの人とガルバデスと何にも変わらないよ。ね?」

「そっか…そうだねっ!」

 頷き合う二人は、まるでお互いを受け入れ合うように見つめ合うと、両手を広げた。

「行こうノエリア」

「うん、プロフィアちゃん!」

「私は、私たちは弱い存在だけど、でもっ!」

「二つの想いが重なれば、きっと、誰にも負けない力になるっ!!」

「二つの想いが重なれば、きっと、誰にも負けない力になるっ!!」

 二人の声が重なる…そして!!

「私に」

「私たちに」

「全てを守る力をっっ!!」

 眩い光が二人を包み込み………。




 そっと目を開け、起き上がったプロフィアは、一瞬、ほんの少しだけ光を放った杖を抱きしめる。

 ライラの背中に隠れるように寄り添い、プロフィアの無事を心の中で祈り続けていたリリスは、プロフィアの姿を見て、つい涙ぐんでしまうが、そんな顔は見せたくないと、ソッポを向いてゴシゴシと涙を拭う。

「プロフィアさん…無事なのですね?」

 ライラの問いに、頷いて見せたプロフィア。

「おかげさまで、何とかなりそうです。それじゃ、急ぎますので………ライラ姫様、それに…えっと…リリス姫様、ホントにありがと! あなたの想い…すっごく暖かかったよ」

「べ、別に、あなたのためにやったワケじゃないわよ。えっと…ホラっ、世界のためよ、世界のっ! ほら、いいから早く行きなさいよっ! 行って、さっさと世界を救ってきなさい」

「うんっ! ホントにありがと…じゃあ、行ってきますっっ」

 駆け出したプロフィアを見送るライラとリリス。

「お姉様…ナリア女神の力で、あの子の未来は見えない…かな?」

「本当に素直じゃない子ですね。大丈夫、きっと大丈夫ですよ。あの方はきっと…」

 すでにないプロフィアの姿を追い、登り階段のある通路の先を見つめ、胸の辺りで祈るように組んだ両手をギュッと握りしめるライラの表情がかすかに沈む…。

「戻ってきなさいよ…絶対に…じゃないと許さないからっ」

 ライラの傍らで同じように両手を組み、ギュッと握り締めたリリス。


 ついに求めた力を手にしたプロフィア。世界の命運を賭けた戦いが、ついに始まる…。



                                      つづく


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