エピソード第三幕2 ~決戦はナリア王国へ…再会、集結! アクアリンク編
エピソード第三幕2
~決戦はナリア王国へ…再会、集結! アクアリンク編
ナリア王宮の西側に位置するアイゼンシュルツェのギルド本部、その宮殿の2階にある謁見の間。窓は無く、明かりも灯らぬ薄暗い部屋の中にたった一人、一番奥の中央にあるマスター用の玉座に座るマックスは、玉座に立て掛けられた鞘に収められた剣を自分の意思に逆らい取ろうとする右手を左手で必死に押さえつけていた…。
『なぜ抗う? お膳立てはしてやったのだ。あとは、我を手に取り、王の名乗りをあげればよかろう? お前は、この世でもっとも強き者になる。この世の支配者になれるのだぞ?』
「だまれっ!! 俺は王になることなど望んでいないっ!! 誰が貴様などに支配されるものかっ!!」
『弱き者の分際で…我にひれ伏せ! 我を受け入れ、我の一部になれば、貴様は、世界の支配者になれるのだ』
「く…ぐわああああ…くそっ…誰が…誰が貴様などに…俺は世界最強の男だ…これ以上………俺の中に入ってくるなぁーーーーーーっっ!!」
『ククク…弱き者が無駄なあがきを……まあいい。じきに貴様は我の一部になる。貴様は、我の復活のための道具にすぎないのだからな…』
心に過ぎる幸せな記憶…そして悲しい記憶…拭いきれない怒りと憎しみ…数年ぶりにナリア王国の街へ足を踏み入れたプロフィアは、戸惑い、辺りを見渡す…。
「どうして…? こんなことって………」
この大陸でもっとも人口が多く栄えた、ナリア王宮の城下町が、まるで廃墟のようにひっそりと静まりかえり、吹き抜けた乾いた風に砂埃が舞う…。
その悲惨な光景に、ただ言葉を失い、瞳を曇らせるプロフィア………所々にころがる無残な住民の遺体…それを守ろうとしたのだろう王立騎士団や魔術師団たちの遺体、全ての民家のカーテンが閉め切られ、じっと息を殺しているのが伺える。
「いったい何が………声? 悲鳴だっ! あっちだっっ!!」
耳を澄ましたプロフィアの耳に届いた微かな声。駆け出すプロフィア。
「きゃあああああーーーっ!!」
逃げ惑う住民と思われる女性の背中をバッサリと切りつけたハンターと思われる剣士。絶命し倒れた女性に目をやり、口元を緩ませた剣士と、その仲間だろう魔術師の二人を取り囲む十数名の重厚な鎧に身を包んだ王立騎士団。
「ひるむなっ! 敵はたったの二人だ。一人では戦うな! 取り囲んで一斉に攻撃するんだ!」
騎士団長の声を聞き、槍を構え一斉に突撃する王立騎士たち。だが、殺しを楽しむ二人のハンターによって、あっという間にその命を奪われていき…プロフィアが駆けつけた時には騎士団は全滅、騎士団長が致命傷を負い倒れたところだった。
「しっかりしてっ!! いったい何があったんですか? 今、回復を…」
騎士団長を抱きかかえ、そう声をかけたプロフィア。
「ア…アイゼンシュルツェが…この国を支配…しようと……私のことはいい…逃げろ……」
「ダメですっ!! しっかりしてっ!! しっかり……うっ…そんな……」
絶命した騎士団長の体がプロフィアに重くのしかかる…。
「あなたたち…アイゼンシュルツェね? どうして…どうしてあなたたちは…こんなに簡単に人を殺せるの? どうしてっ!!」
騎士団長の体をそっと地に置き、立ち上がったプロフィアは、二人のハンターへ向け、そう声を荒げる。
「なんだ女? 何しにきやがった? まさか俺たちがアイゼンシュルツェだと知っていて俺たちを倒すなんて冗談を言うんじゃないよなぁ~クククッ…」
馬鹿にしたようにプロフィアを見下し、そう言った剣士。ワナワナと肩を震わせるプロフィアは、大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
「私のやるべきことは…決まっていますっ!! あなたたちを倒して…みんなを守るっ!!」
怒り、使命感…だが、ただ試したい、そんな気持ちもあった。仙人のもとで修行した後、全力で戦うことがなかったからだ。以前の自分ならアイゼンシュルツェの二人を一度に相手では勝算は薄かっただろう。
だが、今の自分なら…杖を構え、全身にマナを纏うプロフィア。正確なマナのコントロールを身につけ、キッチリと全力の半分に抑えられたその力。湧き上がる力、神々しく輝くプロフィアの体から溢れ出た力の波が、フワリと風のように吹き出し、周囲を吹き抜けた。
プロフィアには確信があった。自分は強くなっていると…瞬きをするほどの、ほんの一瞬のできごと…プロフィアの姿が消え、現れた時、弾け飛んだ敵の剣士と魔術師が、剣士は十数メートル先の地面に転がり、魔術師は、その反対方向にある民家のドアを突き破り民家の中で倒れこんでいた。
「じょ…冗談じゃねーぜ……なんなんだ…この女…」
力なく立ち上がり、ヨロヨロとよろけながら、そう呟く剣士。同じく、よろけながら民家の中から出てきた魔術師の脇には小さな女の子が抱えられていて…その女の子を地面へ放り、左手で髪を掴み上げた魔術師は、その子の顔に右の手のひらをかざす。
「でかしたぜっ! 女っ! 変な真似してみろよ? あのガキの顔が消し炭になるぜ」
急に態度が強気になった剣士がそう言い、プロフィアへ歩み寄る。
「きゃああああーーーっ!! お願いですっ!! 娘を返して下さいっ!!」
頬に痣を作り、口元に血を滲ませた女の子の親だろう女性が民家の中から飛び出し、そう叫び声を上げる。
「うるさい女だな。死ねっ!」
女の子の顔へかざしていた手のひらを女性へ向ける魔術師。
「ダメーーーーーーーっ!! お願い…やめて下さい…私、何でも言うこと聞くから…だから…」
そう叫んだプロフィア…纏っていたマナは消え、持っている杖を放る。
「くくくっ…いいだろう。動くなよ?」
歩み寄り、プロフィアの前に立った剣士は、持っていた剣を鞘に収めると、左手をプロフィアの首の後ろに回して首相撲すると、無防備なプロフィアの腹部へ『闘拳』を放つ。
ズドンという鈍い音とともに突き刺さる闘気を纏った右拳。その威力でプロフィアの体が浮かび上がり…。
「うっ…うえぇーーーっっ!! げほっ! げほっ! ううう…ああああああ…ごほっ…ごほっ…ああああうう…あああああああ……」
胃の内容物を吐き出し、激しい苦痛に腹部を押さえ、地面をのた打ち回るプロフィア。そんなプロフィアの髪を鷲掴みにし、その体を持ち上げる剣士。
「クククッ…誰が寝ていいと言った? 動くなと言ったろう? 次に動いたら…分かっているな?」
そう言うと魔術師に目配せする剣士。魔術師は、女の子に向けていた手のひらをプロフィアへ向け、ファイヤーボールを放つ。
魔術師の手のひらから発せられた火の玉は、プロフィアの右膝に命中、ドス黒く焼け爛れる。
プルプルと震える両膝…苦痛に顔を歪めながら倒れそうになる体を必死に支えるプロフィア。それでも…死への恐怖から泣くことすらできず、そんな光景をただ見ていることしかできない女の子とその母親へ『大丈夫だから…』と微笑んで見せる。
「ほう…女のくせに頑張るじゃないか。じゃあ、次はどうかな?」
そう言った剣士の合図で魔術師が放ったファイヤーボールは、プロフィアの左膝を焦がす。
耐え難い苦痛に耐えようと堅く目を閉じ歯を食いしばり…プルプルと震える全身…それでもなお、倒れずに体を支え続けるプロフィア。
「クククッ…ハハハハッ!! バカな女だ。あんなガキなど見捨てて、とっとと逃げればいいものを。その足では追ってこれまい? まずは母親を殺すとしようか」
そう言うと剣を抜き、薄ら笑いを浮べながら母親のもとへ歩き出す剣士。
「そんな…約束が違うよ…ダメ……やめてーーーーーーーーっっ!!」
プロフィアの悲痛な叫びもむなしく、振り上げられた剣…その時っ!
剣士の体に目にも留まらぬ速さの真っ赤な闘気の塊がヒット、激しく弾け飛んだ剣士は、数メートル先の地面でバウンドして更に数メートル先の地面に落ち、勢い止まらずゴロゴロと地面を転がり…ぐったりと倒れた剣士は、完全にのびてしまいピクピクと体を痙攣させている。
放たれた闘気の先には、拳を突き出したジンの姿が。
「ジン…さん?」
崩れ落ちるプロフィアを後ろから抱きかかえたヴァル。
「ごめんねプロさん…遅くなっちって…」
「ヴァルさん…それにリオさんも…」
「まってなさい。今、回復してあげるからね」
プロフィアの体に両手をかざし、回復魔法を放つリオ。
魔術師の頬を捉えるロイドの右拳。その威力で数メートル先へ弾け飛んだ魔術師は、すぐさま立ち上がり魔法の詠唱を始めるが、魔法が発動するより先に魔法『テレポテーション』で瞬間移動し、魔術師の懐に飛び込んだロイド。
王立騎士団たちの亡骸、女の子、その母親、そしてプロフィアへ視線を向けたロイド。その表情がまるで凍てつく氷のように冷たく鋭いものに変わる。
「この…クズがあああああーーーーっっ!!!」
目にも留まらぬ速さで繰り出された左拳の三連撃が魔術師の腹部に突き刺さり、衝撃でその体が浮かび上がる。そして突き上げた右拳が魔術師の顎を捉え、その体が宙を舞う。
冷気を帯びた両手の手のひらを地面に叩きつけるロイド。そこから突き出した巨大な氷柱が魔術師を飲み込み、氷づけにしてしまう。
「残りわずかな命で、せいぜい自分の罪を数え、後悔するんだな…」
魔術師に背を向け歩き出したロイド。そのロイドの肩をポンと手のひらで叩き、首を横に振って見せるジン。
「ジン…大丈夫。分かってるって。ちょっと頭にきたからお仕置きしてやっただけだって。もう…戦慄には戻らないさ…」
そう言ったロイドが指をパチンと鳴らすと氷柱は粉々に砕け、落下した魔術師が地面にぐったりと倒れる。
「プロ、平気か?」
「すまない。遅くなってしまったな」
「うん。リオさんが治してくれたから…ロイドさん…ジン…さん……どうしてここに?」
「それはな、アイゼンシュルツェがナリア王宮へ侵攻をなんて情報を仕入れてだな、それを止めようと…その」
「おいおいジン、素直じゃねーな。こいつ、プロのこと情報屋使ってストーキングしてたんだぜ? んで、ナリア王宮に向かったなんて聞いたもんだから会いたくて会いたくて飛んできたってワケだ」
「おいっ! ロイド! お前な~…いや…まあ…違う…なくもない…が」
「ジンさん…うっ…うえっ…ぐすっ……うわーーーーーんっっ!!」
ジンの胸に飛び込んだプロフィアは、その胸にしがみつき泣きじゃくる。
「プロフィア…久しぶりだな」
プロフィアの頭を優しく撫で、そう言ったジン。
「うんっ!!」
涙を拭い、満面の笑みで頷いて見せるプロフィア。
「プロさんっ、おひさーっ」
「久しぶりね、プロちゃん」
「よう、プロ」
「ヴァルさん、リオさん、ロイドさん…会いたかった…会いたかったですぅ…」
また泣き出してしまいそうになったプロフィアは、慌てて涙を拭う。
「プロフィア? なぜナリア王宮に行くんだ? 何か理由でもあるのか?」
ジンの問いに、仙人から聞かされたことを話すプロフィア。
「うむ…なるほど…な。ガルバデスに…ナリア女神か。人間の力では太刀打ちできないとなると…すべてをプロフィアに託すしかないということか…。では、プロフィアをライラ姫のもとへ送り届けるためにナリア王宮へ乗り込むとするか」
「そだね…でもジンさん? なんか変じゃない? あのアイゼンシュルツェが侵攻したってワリには、なんからしくないっていうか…」
「うむ…ヴァルもそう思うか。不甲斐ないというか…あのマックスが動いていれば、とっくの昔にこの国は墜ちていていいはずだろう。軽く街の様子を見てきたが、下っ端の奴らが好き勝手に暴れているだけで、侵略とは程遠いし、まだ王宮も墜ちてはいないように見える。どういうことだ?」
「ジンさん…すっごく邪悪な気配を感じます…あっちの方に。多分、あの人は、そこにいます」
そう言ったプロフィアは、遥か先に見える城の西側を指差す。
「分かるのか?」
「はい…なんとなくですけど…」
「うむ…その方角は…アイゼンシュルツェのギルド本部だな。まさかマックスは動いていないということか。なるほど…理由は分からないが、それなら説明がつくな。さて…ヴァルなら、どう見る?」
「うんと…将が動いていないってことは、ほとんどの勢力は将を守るため将の下にあるってことだね。戦争は将が討たれれば負けだからね。街を徘徊してる下っ端は反乱分子への抑止、王宮へは少数精鋭を向かわせているってとこかな?」
「まあ、そんなところだろうな」
「あの人は…きっと戦っているんだと思います。ガルバデスの支配と…」
「プロフィア…お前は、一人で王宮へ向かってくれ。俺たちはアイゼンシュルツェの宮殿へ向かう。もし、マックスがガルバデスに支配されれば、この街はおしまいだろう。俺たちでできるだけ時間を稼ぐ。だからお前は、ナリア女神の力を手に入れてきてくれ。危険だが…たのむ」
「分かりました。私、絶対にナリア女神の力を手に入れてきますっ!! だからジンさん…ヴァルさん、リオさん、ロイドさん…絶対に死なないで下さいっ!!」
力強くうなずいて見せるジン、ヴァル、リオ、ロイド。
「お前たち…はっきり言って、この戦いは無謀で自殺行為だろう。200人からのエリート集団をたった5人で相手にするのだからな。だが、俺たちには、奴らにはない力がある。それは…」
「俺たちがアクアリンクだってことだ!」
そう言ったロイドとジンが顔の前でガシッと腕を組み合わせる。
「行くぞっ! みんなっ!!」
ジンの掛け声とともに走り出した5人。
ついに最後の戦いの幕が上がる!!
つづく




