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Misty Tale
少年は、先ほどまで彼女のいた花畑を一瞥する。そして小さな円を一つ、虚空に描いた。
それが合図。少年をも騙していた幻は粉のように花々からこそげ落ち、鮮やかな色素の雫が花弁を伝って滴る。
秋が冬を迎え入れようとしている頃なのに、美しく咲き誇るなどありえない。
肌寒い空気に当てられた花は、硬く変色して萎れてしまっていた。その一輪が風に手折られ、少年の足元まで飛ばされる。
彼はおもむろにその痩せた茎を摘まみ、握る手の中にくしゃりと包んだ。
実りの季節はけして来ない。
――――さあ、永遠の痛みが始まる。