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Veiled Tale
鬱蒼と茂る森の奥深く。薄暗い葉陰の隙間から、少年が誰かを見送っていた。ひっそりと、隠れるようにして立ちながら。
少年はずっと向こうにある森の入り口へと目を凝らしていた。そこには二人の男女の人影が、少年の視線に気づく様子もなく寄り添っている。
少年の真紅の瞳は少女の方に注がれている。だが彼女は傍らの青年に優しい眼差しを返していた。二人は見つめ合っており、少年が入れる余地もない。
やがて森から離れていく二人。見届けることしかできない少年。
ふと少女がこちらを振り向いた瞬間に、少年は目を伏せた。
(君の姿が消えていく)
――――さようなら。
実りの季節はもう来ない。