少年Hの見聞録
二人称単数の習作? です。
下手の横好きなので何かと読みにくい点、矛盾点あると思いますがそこは微笑んで流して下さい。
こんな笑ってしまうぐらいの未熟者ですが、よろしくお願いします。
……二人称複数の小説はあるのだろうか?
「よろしくお願いします!」
「「「よろしくお願いします!」」」
ぺこりとおじぎしながら、総勢28人で言った。
第一学年のほとんどはまだ初々しい一年生だ。目に光が感じられる。
「おーっし、今年一年教えるヒムジだ。この授業では主に実戦の練習をしてもらう。お前らは、魔法基礎で得意な魔法とか、言霊とか、自分の短略魔法とか分かってるか〜? 当然分かってるよな。」
「「「はい!」」」
と21人分の元気のよい返事が聞こえる。
僕は、しない方だ。
「うん、ちゃんと勉強しているいい証拠だ。ま、実戦で強くなきゃいけないんだがな。というわけで、今から軽ーく実戦練習をしてみよう。えーっと、コサギとノリハ。実演してくれ。」
チラチラッと僕とかあの小さな女の子をみる。
「…はい!」
「えー、勘弁してくれよー……」
ノリハはあくまでも元気よく、コサギは面倒臭そうに立ち上がった。
「審判役はそうだな……ティム! お前がやれ!」
「わ、わかったよぉ……」
ティムと呼ばれた少年は翅を少しだけ動かして空中に上がる。
先生から笛をかり、多分視力を強化するような魔法をかけた……のだろう。
「えっと、準備出来た?」
審判の位置について言葉を発するティムは妖精だ。
「OKですよ。」
「大丈夫だな。」
止めの一撃だけを無効にする意地の悪い仕様の結界の中にある、線の上に立つ。
「「お願いします。」」
言いながら、二人が二人ともおじぎをする。
「では、始め!」
ティムの合図で二人はザッと動いた。
コサギは地を蹴って空に、ノリハはリングの中央に動いた。
「風よ、彼の者を転ばせ――――」
「解呪!」
最初に戦いを仕掛けたのはノリハだった。
……魔法か。
魔法には3つの発動方法がある。一つはノリハのように“〜よ、AをBしたまえ”というふうに発動する『詠唱魔法』。一つは『短略魔法』といって、自らの過去に基づくようなもの。最後は……
「我が神よ、我が願いを聞きたまえ。我が神よ、我に世界を改編する力を――!」
と言った、言霊を唱える『言霊魔法』。解呪は効かない。
ちなみに、解呪って言うのは魔法を溶く、いわばドアがあって鍵をかける前にドアを破るような感じだ。
分かりづらい? 悪いがデフォルトだ。で、これは魔法に対抗できる魔法だ。だが、相手が行使しようとしている魔法しか溶くことができない。故に『詠唱魔法』は解呪されてしまう。そもそも魔法の構造は……って今は授業中だ。
今は、二人の試合に集中しよう。
「解呪!」
「光よ、彼の者を清めたまえ!」
「我が神よ、我が願いを聞きたまえ。我が神よ、我に世界を改編する力を――!」
「火よ、で、自動追跡ッ!」
「ちっ、かすった。平行飛翔」
「ほら、何やってんの? 水よ地よ、彼の者を沈めたまえ!」
「解呪! …ゲッ!」
「ほらほら、油断してるから……きゃーー!」
「なめてっと、火傷するぜ。『ほらほら、油断してるから』」
「そのセリフ、そっくりそのままお返しするから、ホーミングッ!」
「なんにもない……って! お前ッ! 来んなっ!」
「やなこった!」
「ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
「試合終了です。この勝負、コザキ君の勝利です。ありがとうございました。」
突っ込んできたノリハの眉間に杖をぶっ込んでコザキが勝った。
いつの間にか線の上に戻っていた二人もありがとうございました、と言う。
「と、いうわけだ。わかったか? こういうふうに試合をする。あの笛は三人に一個ずつ配っておく。三人の試合が終わり次第、順位順に旗の所に並び、同じ旗の場所に三人溜まったら、試合を始めろ。ちなみに一人余っているが、後輩育成をする、先輩はいるかー?」
「ハイハイ、私やりまーす!」
ノリハが元気よくというか、ハキハキと答えた。なんというか、内申をとる気満々だ。
「おっ、ノリハか。なら大丈夫だな。じゃ、まずは新入生組と在校生組に別れて、さっきいったように総当たりで戦ってくれ。細かい作戦とかはお前らに任せる。クラス全員と当たれるように、そして勝てるように頑張れ。じゃ、解散ッ! 番号順でやれよー。」
先生が生徒から目を話した瞬間、ワッと場が沸いた。
……とりあえず僕は夢も希望もへったくれもない“在校生組”へ向かった。
◇◆◇◆◇◆
「めんどくせーから、じゃんけん……じゃなくて、ぐっぱで決めよーぜ。」
コサギは面倒臭そうに妥当なことを言う。
みんなはそれにそれとなく賛成する。
「「ぐっぱで合わせっ!」」
少数が音頭をとる。僕はとらない派。
みんなはグーかパー。
僕は……チョキ?
「お前、ぐっぱでチョキ出すなよー……そうだ。俺ら七人だから、一人余るよな。新入生組に行ってもらえるか?」
……自業自得だ。
「ああ。」
「ありがとなっ! じゃ、もう一回。ぐっぱで合わせっ!」
一発で決まったらしい。
さあ、新入生が僕を探しに来てくれるのを待ちますか。
◇◆◇◆◇◆
「あのっ? あのー……」
これは、女の子の声?
「はい?」
振り返ると、サイドテールとショートカットの女の子が。
「あの、私達と組んでもらえますか?」
ああ、この子達があぶれたのか、いや、あぶれたのは僕か。
自業自得だなと心の中で毒づきながら、ああいいよ、と答えた。
「じゃ、僕が審判するから、練習してみる? 良かったら三回が三回とも二人でやってもいいから。」
親切心とか、そういうので言った。
「や、そんな、悪いですからっ!」
「そっ、そうです! 先輩と交わすことなんて、滅多に出来ないんですからねっ!」
逃がしませんよ、フンッと鼻息荒くガッツポーズする確か、同い年の少女。
「わ、わかったよ……、じゃ、最初は二人で戦ってね。注意点とか合ったら教えるから。」
「「ありがとうごさいますっ!」」
「いや、そんなにかしこまらなくても……ほら、早くしないと、みんなから遅れちゃうよ?」
「あっ、それはいけないですね。じゃ始めましょうか。お願いします。」
「お願いします。」
……あっ、笛。
「風よ、彼の笛を我が手まで運びたまえ。」
解呪をする輩なんておらず、手元にふわりと魔法の笛が運ばれてきた。
この魔法の笛は装着者の魔力を用いて音が鳴るタイプだ。
「では……始めっ!」
ザッと足音が動く。
二人の少女は、ラインから離れる。
ラインからラインまでは十メートル。結界の範囲は直径三十メートル。そして魔法使いのほとんどは遠距離専門だ。
……言霊を噛まない方が、いい。
……発動のタイミングが遅い。
……ああっ! そんな所でこけるなんて!
……ほら、友達に魔法をぶつけるのに躊躇しないっ!
……ああ、牽制が思いっきり当たってるよ。
……杖がぁぁぁ場外にぃぃぃ
「ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
「「「ありがとうございました。」」」
勝ったのは真面目そうな女の子。逃がしませんよな少し怖い女の子は杖を結界外に飛ばされ、高威力魔法が防げず笛が鳴ったという次第だ。
「まっ、負けたぁ…! 今度こそは負けないんだからね!」
「んっ! わかってるよ! じゃ、私からでいいかな?」
「うん、いいよ。じゃ、先輩。笛、貸して下さい。」
「あ、うん。わかったよ……」
というか、注意点はいいのかな?
色々あるんだけど……
「まだですか、先輩?」
真面目そうな女の子はもうラインについている。
「わかったよ……」
前に足を滑らせてラインに向かう。
「ぉ願いします。」
「お願いします!」
「では、始め!」
溜めのない、正直な合図で争いは始まった。
体を楽にしたまま、聴力強化を張った。
……ラインから大分離れた位置にいた少女が魔法を放とうとしている。
「風よ、彼の足を取り「解呪」……あれ。」
「風よ、彼「解呪」……おかしいなぁ。」
「―――――――――、―――――」
おっと、言霊ですか。
「炎よ、彼の者を燃やしたまえ。」
「あっ、きゃっ!」
「ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
「「ありがとうございました。」」
「あの、先輩! 今度は絶対負けませんからね!」
「あーうん。大丈夫。僕はヨワヨワだからすぐ勝てるよ。」
そう、僕はとっても弱い。全ての条件における僕の致死率は70%だ。
だから、前へ進めないのかもしれない。
◇◆◇◆◇◆
キンコーンとチャイムが鳴った。これから十分の休憩時間だ。
今は、何をしてもいい時間で、僕は今年の新入生の出来がどうだか調べてきた。
噂によると、まあまあそれなりに上手らしい。
僕は今年が終わる迄にまた誰かに負けるのだろうか。
まあ、負け続けと言うなら、ミサだ。
“ミサ・バンビーケ”という名を持つ、少女だ。今年で十年目の彼女はこの中でも一番の古株だ。しかし、外見年齢は一番幼く、身長も足りていない。
それが負け続けの原因の一つだ。
もう一つ。
それは、彼女が魔導しか使えないこと。
そもそも魔法とは、自分が魔力で世界を改編することだ。魔法は力が弱く、時間が経つと元に戻ってしまう。が、それに対して魔術は半端に力が強いので、世界に歪みを起こしながら世界を改編する。魔導は魔術より力がこもっており、改編していないと錯覚させるような、魔法だ。
それらの総称は『魔法』で統一されていて、メインが魔法の人は魔法師、メインが魔術、魔導の人は魔術師、魔導師とよばれる。どんな人でも大抵は魔法が使えるので、魔法・魔術・魔導を使う人の総称は『魔法使い』である。魔法・魔術・魔導が使う魔力の必要量は魔法<魔術<魔導だ。
……ただし、彼女。ミサ・バンビーケには「当てはまらない」。
彼女には僕の魔力なんて砂粒に思えるような膨大な魔力を小さな体に溜め込んでいる。それゆえ魔法や魔術を使おうとすると、魔力の込めすぎで爆発する。
魔力操作の分類なのかも知れないが、星一つ一つを見ている人が原子を見れる訳がないと僕は思っている。つまりは彼女は燃費の悪い魔導を使わなければならないことだ。
彼女は発動時間がネックになっているらしい。何しろ魔導は大量の魔力を使うのでたくさんのバイパスが必要……らしい。
呪文も必然的に長くなって、解呪される可能性が高くなる。
だからだろうか。彼女は弱い。魔術より一つ上の魔導を使えるにもかかわらず。
◇◆◇◆◇◆
「ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
ほら、また、負けている。無表情な顔のまま地に伏せっている。今は、何連敗中なのだろうか?
……あ、チャイムが鳴った。
旗の所へ並ぶ。
“3”と書かれた所へ。
負けは譲ってもらった。
一度は全敗のミサ・バンビーケと戦ってみてもいいだろう。
ふと、そんな感情が胸をよぎっていた。
だから、僕は小さな小さな背中の後ろに腰を下ろした。
◇◆◇◆◇◆
「お願いします。」
「・・・・・・します。」
発音が悪かったからか、自分の耳が良くないからか、お願いしますの声さえ聞こえなかった。
「いざ、尋常に始め!」
審判の合図により、戦いが始まった。……と思われた。審判すら、僕の勝ちだと信じていた。なんてったって、彼女は新入生に負けるほど弱いから。
「ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
無慈悲な試合終了の笛が鳴る。
目を開けたとき自分は地べたに横たわっていて、脇腹に鈍い痛みを感じる。
「ぃつつっ……」
脇腹だけでなく、全身が痛みを発している。
敗因は分からない。何で負けたのかは分からない。何が在ったのかも分からない。分かることはただ一つ。僕が彼女に負けたという事実。
何故、何故?
「ありがとうございました。」
たとえどんな相手にでも言わなければいけない言葉だ。しかし、今ではたったの十一文字を口にすることでさえ、腹立たしい。
「・・・・・・・・・した。」
彼女は口をもごもごさせ、ありがとうございました、と言っているようだけどほとんど聞こえない。
いつもと同じ無表情。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓が脈打っている。彼女の背を見ながら僕は呆然としていた。
景色がマーブリングをしたときのように、極彩色の渦が表れたとき、僕はこんな声を聞いた。
「・・・・・・大丈夫?」
◇◆◇◆◇◆
時は過ぎて。
今は10月の初め。
一番後ろの席の彼女。
ちびっちゃいし、無表情だが。
なんか、気になる。
すごく、気になる。
彼女のことを思うと、心臓がドキドキする。
これは、恋なのだろうか……?
「はっ、へっくしっ!」
あっ、くしゃみした。
「火よ、私を温かくし「解呪」た・・・」
あ、詠唱した。
ちなみに言うと、火系の魔法はモノを熱する能力。水系はモノを冷やす能力。風はモノを移動させる能力だし、土はモノを固定する能力だ。
火系の魔法を使おうとしたのは、きっと寒かったからだろう。
「火よ、わた「解呪」しを・・・」
実は、この“解呪”、相手が行使しようとしている魔法しか溶くことができない。
「・・・あなたに夢が有るならば、私は叶えてせんじよう。絶対叶わぬ夢なれど、必ず私は叶えます。但し唯一、一つだけ、あなたの思いをいただきます。どんなに重い思いでも、私はしっかり受けとめて。その思いを世界に捧げ、あなたの願いを叶えます。但しあなたの重き思い、決して手元に戻りません。」
言霊を唱えた。
言霊は、自分を自分であらしめるための呪文だ。
フワッと、暖かくてほんのりいい香りのする空気が入ってくる。
これは、魔導だ。
もともとそうであったように思えるゆえ。
かなり魔力を使う魔導は若干不便だ。
僕が恋してるその彼女は、魔法や魔術が使えない『魔導師』だったりする。
◇◆◇◆◇◆
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン――――
チャイムが鳴った。
少しボロボロになった教科書を広げる。
カラカラカラ……と引き戸を開けて先生が入ってきた。
「うっ、何この臭いは! 誰? 誰がやったの?」
「「「バンビーケさんです」」」
主に男子の声が重なる。男子のハモリはきいても嬉しくない。
「あら、そう……。窓際の人、窓を開けて下さいな。」
はーいという声を出す人もいれば出さない人もいるが、窓が開けられる。
窓からの風が教室の空気をきれいに洗い流していき、数十秒たつ頃には新鮮な空気になっていた。
先生。魔法を使いましたね……?
「それでは、授業を始めまーす。教科書、××ページを開いてー。」
先生が授業をしていく、が、僕はボンヤリと聞いている。
二回も受けたことのある授業だからだ。
ノートも取ってある、それに簡単な魔法史だ。
先生の話は置いといて、後ろに耳を向けることにした。
「聴力強化」
小さな声で呟くと、先生やみんなの声が小さく小さくなり、彼女の息づかいまでが聞こえるようになった。
それと同時にお腹が少し光り制服から漏れたが、これはまだ許容範囲だ。
はぁ、はぁ、と口で息をしている音がする。
ズッと鼻を啜る音がした。
風邪だろうか?
バリバリと頭を掻く音が聞こえる。
もう一度、バリバリ。
ゴソゴソと何かを探す音がして、ピラッと薄い何かが発する音がした。
暇だよな。
わかる、わかる。
僕も暇だ。
ゴニョゴニョゴニョ(聞こえなかった)と呟くと、ポンと何かが現世に現れた音が。
な、なんだろうか?
振り向きたいが、授業中なので振り向ける訳もない。
わっしわっしと何かを撫でる音。
グルルルル♪ とご機嫌な声が聞こえる。
バッシャー!
水が何処からか落ちる音がした。
振り向きたい衝動に駆られるが、振り向かない。
ゴクゴクゴクと何かを飲んでいる音がする。
……何を飲んでいるだろうか。
「バンビーケさん! 今は授業中ですよ! 使い魔を召喚しないで下さい! 飲み物を飲まないで下さい!」
「・・・・・・はぃ・・・。」
意志のこもっていなさそうな瞳で先生を見つめていた。
「4回目で飽きているかもしれませんが、ちゃんと受けて下さいな!」
「・・・・・・先生の授業が・・・つまらない・・・から・・・?」
同意する。
「な、な七なななんですって! わたくしの授業がつまらないですって! よ、よろしい。では、あなたが“つまらなくない”授業をして下さいな。」
「え・・・、嫌・・・・・・。」
ですよねー。
「わたくしを侮辱した罪、受けてくださいな?」
「・・・いや、それ・・・事実・・・・・・」
先生も、先生でひどい言いがかりだ。
「事実はあなたがこれから授業をするということでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「……どうしたのです? やらないのですか? それならそれ相応の謝罪を要求しますよ?」
「・・・・・・分かり・・・ました。」
幾度とないきっぱりとした声で言った。
再びゴニョゴニョと言ったあと、行っておいで、と言った……ような気がする。
両手両足を出しながら歩いて前に出てきた。
息を止めているみたいに顔が真っ赤で可愛い。
「そっそれでは授業を始めます! えっと、あれ、何ページだったっけ? ああ、ここ。……ってあっ、教科書忘れた!」
こちらに戻って来た。
彼女が移動するに従って僕の目や頭が動くがそれは不可抗力だ。
席に近づいたとき、ぼやっと彼女の姿が薄れた……ように見えた。
……気のせいか。
ぱたぱたっとかわいらしく小さな人影が教壇に向かっていく。
気のせいだろうか? いまだ“聴力強化”していた耳に二つの息づかいが聞こえたのは。
耳を澄ませても、聞こえてくるのは教壇の前のあの子の声ばかりだ。
この声はアルト……いやメゾソプラノだろうか。ミーハーな女子が出すようなキャンキャンした声でなく、頭にスゥッと入って来るような声がする。
普段より、若干高めの声で授業は始まった。
「――――えーっと、だから第2世界はこうして生まれたんだけれども、私はヤハウェが|魔法《世界をねじ曲げるチカラ》が大切だと思ったからだと思うの。だって、この世界は魔法が効きやすくて、魔法関係の研究所が多いでしょ?」
示し合わせたように終業のチャイムが鳴った。
あの子は黒板に彼女のノートを全部“魔導”で写して、あとは全部しゃべっていた。自分の考察も纏めて言ってあって、まるで何日も前からこれをするために予習をしてきてたみたいだ。
しかも、面白くて他事をする暇がなかった。
「……いや、面白い授業だったな。」
ついつい言葉に出るほど面白かった。
「・・・どう・・・・・・先生?」
後ろの方からいつものサラリとしていてとらえどころのない声が聞こえた。
あれ?
前にいたはず……
居なかった。
足音を立てずにいなくなっていた。
あなたは猫かっ!
と、心の中でツッコミつつ、後ろを向く。
口をへの字に曲げた先生を見つめるあの子。
「・・・どう・・・先生。」
「えっ、ええ! なっ、なかな……いいえっ! それなりでしたわね。もう少し練習を積めばもっと上手くなると思いますね。今度からも授業やってみます?」
「ヤです・・・」
いつもの声で、いつもでないきっぱりさ。
……授業中と何か違うような?
「で、でも! こんなに上手く教える事ができる先生の卵なんて初めてみたわ!」
「・・・先生。・・・・・・授業は・・・下手・・・でしたか?上手・・・だった・・・ですか。あなたに、比べて・・・?」
「じょ、上手でした!」
「・・・では、先生も・・・・・・これぐらい・・・上手に・・・授業。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・きりーつ!」
先生とあの子との会話に耳を傾けていた皆が急に起立と言われたので立ち上がる。
「気を付けー。・・・ありがとうございましたー・・・・・・」
何と、彼女は先生に礼をした。
あなたは本来なら言われる側でしょう?
だが、それを言い終わるやいなや、座って紙で龍を召喚した……が、聞こえる音が余りにも遅れて聞こえた。
「ありがとねぇ・・・良く・・・頑張ったねぇ・・・・・・」
わっしわっしと龍の背中のたてがみを撫でている。
異様に早く感じる。
というか、音と動作が噛み合ってない。
……あれ。
おかしい?
問いただすため、彼女の机に向かってみる。
ぶよーんっ♪
「ふげっ!」
何かに弾き飛ばされて、そのまま後ろの机に激突する。
「だいじょうぶ・・・・・・?」
聞いただけ。
そのまま、龍を愛でる行為に没頭していった。
数人の友達が駆けよってきた。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫だ。」
「なら良いんだが、あいつに関わるのは止めた方がいいぜ。」
忠告したぜ、と言いながら席に戻っていった。
彼女がいじめられているからなのだろうか、っでもそんなことで屈してたまるか!
と思い、もう一度近づく。
撥ね飛ばされるのは嫌なので、そぉーっと近づく。
指をゆっくり近づけていく。
ぶよよよーん!!!
さっきより、反発力のすごい力で跳ね返された。
もう、腕が外れるんじゃないかってぐらい。
「・・・・・・ほっといて・・・・・・」
目の前の、10歳ぐらいの女の子がそう言った。
「いや、何でさっき行動と音が噛み合ってなかったのかなぁって思っただけなんだけど。」
「・・・・・・ほっといて・・・ください。」
「や、黙ってられないって。」
「・・・・・・企業秘密」
「なっ、何で?」
「・・・・・・・・・・・・。・・・・・・サヨウナラ。」
冷たい声が聞こえたと思ったら、背中に鈍い衝撃が走り、重力に引かれるままにリノリウムとキッスをした。しかし、ファーストキスではないので、あしからず。
鼻頭の痛みを何とか堪えて立ち上がったときは、もうチャイムが鳴り終わった後だった。
戦闘が書けません。
疑問点、ツッコミ点がきっとあると思います。
ああ、この説明下手なんとかしたい!!