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76.プロデューサーの鼻を明かそう!

76.プロデューサーの鼻を明かそう!


 “すとれちあ”では源と望、温子が花火のリストと現物を照らし合わせている。源は美術部から、セッティング用の図面を預かっていた。去年もやっているので、問題はないと言ってビールを飲み始めた。

「ねえ、ゲンさん?本当に大丈夫なの?」

「ああ、心配ない!いずれにしても、晃君が資材を調達してくれないと話にならないし、海水浴場の撮影隊がいなくならなければ花火のセッティングもできないんだからな」

「まあ、それはそうだけど」

温子は不安そうにビールをラッパ飲みする源の顔を眺めた。すると、そこへ晃が帰ってきた。

「先輩!資材は大丈夫ですか?」

温子がきくと、晃は役場の封筒から海岸の使用許可所を出してVサインをし、冷蔵庫からビールを取り出すとグラスに注いだ。

「撮影が終わり次第、やぐらを組んでくれるそうだ」

そう言うと、二人に気づかれない様に源に合図を送った。

「じゃあ、私たちもそれまでは休憩にしましょう」

望はそう言ってビールをグラスに注ぎ始めた。

「副部長、あまり飲まない方が…」

温子は恐る恐る、望に注意したけれど「一杯だけよ」望はそう言って、ウインクした。


 浜田は海水浴場にトラックを誘導すると、早速資材を降ろし、最初に海岸が外から見えない様に周囲をシートで囲ってしまった。そして、数人の警備員(といっても、衣装部から警備員の服を借りてきてスタッフに着せているだけだが)を配置した。

照明用のやぐらと、周囲に提灯をつるすために支柱を組み、ナイヤガラの土台を組んだ。それから、焼きそば、金魚すくい、焼きトウモロコシなどの屋台を組んだ。“ファントム”のスタッフは慣れた手つきで、次から次と、仕事をこなしていく。空輸された食材や金魚をセットし、すぐにでも縁日が始められるように会場が出来上がった。最後に花火のセッティングをして、すべての作業が終わった。

 浜田は良介たちの合宿の話を源から聞いた時に、今年は俺達で良介をおどかしてやろうと持ちかけた。去年、良介に頼まれて、セッティングした時は急な話だったので、それこそ子供の花火大会レベルで終わった。良介たちはそれでも満足していたけど、浜田はプロとして納得がいかなかった。

今年は自腹を切ってでも良介がびっくるする仕掛けを作りたかった。だから良介には内緒で企画を練っていたのだ。

そして、今年も良介に花火の段取りを頼まれたのだけど、都合が悪いと断り、源に協力してもらった。そして、いよいよサプライズの当日になった。

源は内部に協力者が必要だと判断し、鵬翔晃に依頼した。もちろん誰にも言わない約束で。


 良介たちが戻ってくると、源はほろ酔い気分になっていた。

「おい、ゲンさん、大丈夫かい?そろそろ気分を切り替えてくれよ」

「ああ。プロデューサーお帰りなさい。準備は万端。そろそろ連絡が入る頃だな」

源は時計を見るとそう言った。すると、源の言うとおり電話が鳴った。晃が出る。受話器を置くと、源にOKサインを出した。

「それじゃあ、皆さん、会場に移動しましょう」

源は酔っていたので、晃がマイクロバスを運転して海水浴場までみんなを運んだ。

「まったく役にたたないおっさんだ。いったい何をしに来たんだか?」

良介は源を小突いて悪態をついた。

「晃、準備はばっちりなんだろうな」

「ノープロブレム」

「よし!」

マイクロバスが海水浴場に着くと、そこでは夏祭りが行われていた。

「おい、どうなってるんだ?まだ撮影が終わってないのか?」

良介はいらついて晃に確認した。

「うちが許可を取っているのは何時からだ?」

晃は笑って、許可証を良介に渡した。許可証には朝の十時から翌朝の十時までの使用を許可すると書いてあった。事由には夏祭りの開催及び、準備、後片付けのためと書かれていた。

源が合図すると『歓迎!聖都大学CIP』と書かれた垂れ幕がやぐらから垂らされ、花火が打ち上げられた。やぐらの上から浜田が「ぼっちゃーん」と叫んで手を振っている。良介は驚いて源を見た。

「ゲンさん!」

そして晃を見た。

「お前、知ってたのか?」

晃と源は握手をして、してやったりといった表情をした。


 亨達は間もなく底土海水浴場に到着しようとしていた。すると、前方にキラッと閃光が走り、パンパンパンと轟音がとどろいた。

「おっ!始まったらしいぜ」

亨が言った。

「でもまだ明るいわよ」

洋子がそう言うと、司がフォローするように付け加えた。

「たぶん合図か試し打ちだろう」

「まあ、着いたらちょっとは手伝ってやろうか」

亨がそう言うと、みんなも賛成した。亨達の“ハワイアンカー”が海水浴場に着くと、夏祭りが始まっていて、すごい人だかりができていた。

「こいつぁ…。すごいなあ」

亨がつぶやく。他のメンバーも唖然としていた。

「ここまでやるとは思わなかったな」

司も、薫も感心した。女性陣は、「すごーい!」と歓声を上げ「早く行こう!」そう言って人ごみの中に消えて行った。

亨は『歓迎!聖都大学CIP』と書かれた垂れ幕を見て、あながち全部を良介たちがやったわけではなさそうだと悟った。

「まあ、何はともあれ、こんな舞台が用意されてあるんだ。楽しまない手はないな!」







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