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6.表と裏

CIP…カレッジイベントプロデュースには、三つの仕事がある。

この大学で行われる、学園祭などのイベントを企画・運営したり、他の倶楽部で行われるイベントをプロデュースしたりする事が一つ。

学園祭では、各倶楽部の出し物や会場の割り振り、チケット類の発行、当日の交通整理から後片付けなどの管理、準備段階に置いては実行委員会の仕切、学校側との調整、近隣やOBとの連絡、食材の買い付けや小道具の手配まで全てを取り仕切る。

各倶楽部でやることもあるが、CIPに依頼した方が安く手に入る場合が多いのだ。これはもちろん、日下部良介のネットワークによるものなのだ。

それから、倶楽部単位で実施される発表会、運動部においては、自分たちのホームゲームの時などに実施するハーフタイムショーを依頼してくることもある。これらの経費は、各倶楽部が自分たちに割り当てられた予算の中から捻出しなければならないので、かなり厳しいものがある。チケットを売って利益を得られるものであれば、その中から20%を手数料として得ることが出来る。

しかし、これらの収入はたいした利益にはならない。事実上、CIPとしては大幅な赤字が計上される。経理担当の七瀬望はいつも電卓を叩きながら頭を抱えている。

大学から支給される活動費では、最低限の備品の購入くらいしかできないのだ。それでも、日下部良介はどうせやるなら中途半端にやりたくないという信念を貫いている。

次に、大学として執り行われる入学式・卒業式などの手伝い…手伝いと言うより、今では殆どCIPで取り仕切ってやっているが…のような、半ばボランティアのようなもの。

必要経費は大学から支給されるが、それこそ鼻くそほどのものしかない。せいぜい、事務長が毎年式の後にごちそうしてくれる『大学堂』のハヤシライスの方がよっぽどありがたかった。それでも、みんな文句も言わず、やっているのはこの仕事が心底好きだからだ。

最後に、他の大学で行われるイベントを請け負ったり、合同コンパから、個人的な…例えば、バースデーパーティーのようなもの…まで請け負っている。もちろん、CIP主催のイベントもある。

これらは、基本的に大学とは関係のないところで運営されている。全て利益を得ることを目的として運営されている…というより、経営されている。いわば、企業といってもいい。プランによって金額も千円単位から、数千万の金が動く場合もある。

学園祭や大学行事が表の仕事だとしたら、こちらは完全に裏の仕事と言うことになる。

日下部良介は、ここで得た金を、表の方につぎ込んでいる。当然、全てつぎ込んでいるわけではない。

日下部良介は、CIPに入ってからは、もっぱら、この裏の仕事にいそしんできた。もちろん、表の仕事も先頭に立ってやってきた。

日下部良介が3年になって部長を引き継いだ昨年から、2年間裏で蓄えた金を表にも、つぎ込み、その企画力と行動力、ネットワークの大きさを表でアピールしてきた。

今や表の世界でも、「聖都に日下部あり」と、大学はおろか業界の間でも名前を知らないものがないほどになっていた。

「…と、まあ手短だがこんなところだ。ボクはもっぱら縁の下の力持ち的なことをやっているから。あとは、部長としての挨拶回りだな。君達もこれから少しずつ覚えていけばいい。」

それだけしゃべり終わると、再びソファーに腰を下ろし、望に向かって合図した。

望はうなずいて…「じゃぁ、入学式の詰めにはいるわよ!あなた達も一応、聞いておいてね。式典の時は当事者だからいいけど、準備と歓迎会では働いて貰うわよ。だから、あなた達は歓迎会ではくつろげないけど、後で私たちが丁重に歓迎してあげるから…」

どうやら、この件に関しては望に全て任せてあるらしい。

熱弁を振るう望と、熱心に打合せを進めるメンバーをよそに日下部良介は窓の外の景色をボーっと眺めていた。






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