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66.合宿初日

66.合宿初日


一同は部屋へ移る前に食堂に集まった。用意してあった握り飯と、明日(あした)()のてんぷらで軽く朝食を済ませたあと、良介が部屋割を発表した。

 三人部屋と四人部屋は二階にあり、三階はツインルームになっている。

温子達の三人部屋はベッドが三台並べられている。それぞれの壁面にアーチ形の出窓が付いていて、ストレチアの花が飾られている。天井は白い塗料で塗られており、木製の廻り縁が付いている。壁は腰の高さまでは木の板が貼られてあり、その上は天井と同じ白い塗料が塗られている。部屋の中央には小さなダイニングテーブルと椅子が三脚あり、入り口の脇にはドレッサーが置いてある。反対側には広めのクローゼットがあり、その並びには扉付きのサイドボードが壁面に埋め込まれるように設置されていて、テレビが一台置かれていた。

四人部屋もほぼ同じ内装が施されており、二段ベッドが二つ並べて置かれている。それぞれのベッドの脇にアーチ形の窓が付いていた。

三階にあるツインルームには天窓があり、電動のシャッターが付いていた。

どの部屋にもユニットバスにエアコンと冷蔵庫が完備されていた。


 部屋に入るなり温子は荷物を放り投げ、ベッドに飛び乗り寝転がった。望と涼子は荷物をクローゼットにしまって、ダイニングテーブルに腰かけた。

「素敵な部屋だね」

温子はベッドの上で体を起してつぶやいた。

「さあ、荷物を置いて着替えたらすぐに下へ降りるわよ。遊びに来たわけではないんだからね!」

「も~!せっかくの気分が台無しだわ」

温子はバカンス気分から急に現実に引き戻されたので、ふくれっ面をしてそう言った。涼子はそんな温子を見てクスッと笑った。望は温子を睨みつけ、その後すぐにほほ笑んだ。

「まあ、合宿と言っても、半分はバカンスと同じだから!」

そう言って、スウエットと半袖のポロシャツに着替えた。

「副部長がそんなラフな格好しているの、始めて見たわ」

温子がそう言うと、涼子も頷いて望を見た。

「なに言っているのよ!私だって、年がら年中スーツを着ているわけではないのよ。寝るときにはパジャマを着るし、お風呂に入るときには素っ裸よ」

望からそんなセリフが飛び出すのは意外だったので、温子と涼子はあっけにとられて、しばらく固まっていた。

「さあ、早く着替えちゃいなさい」

温子と涼子はわれに返って着替え始めた。

「副部長って、お母さんみたいね」

涼子が小声で温子にそう言った。温子も、うんうんと言ってうなずいた。

 温子達が食堂に降りてくると、男性メンバーは既に揃っていた。

「よし、そろったな。まずは、今回の旅行…」

良介がそう言うと横で望が良介の足を踏んだ。

「痛いっ!なんだよ」

「旅行じゃないでしょう!」

「あっ!いや、その…。合宿のスケジュールを発表するからよく聞いてくれ!」

良介はそう言うと、スケジュール表を全員に配った。

「…というより、このスケジュール表の通りだ。まず、今日はこれから空港に行ってこのビラを配る」

良介が掲げて見せたのは、ペンション“すとれちあ”の宣伝チラシだった。オンシーズンで、宿泊客には事欠かない日々が続いていたのだけれど、“すとれちあ”では宿泊客以外にもバーベキュー料理をふるまっている。いわば、お世話になるお礼を兼ねて、客引きをやるのだ。良介曰く、これも立派なCIPも修行の一つらしい。

「その後はここに戻ってバーベキューの準備を手伝うことになっている。各自の担当は戻ってきてから副部長が発表する。我々は一般客が終了した後に貸切でバーベキュー大会だ。明日の予定はその時に確認する。それでは出発」


 むさ美のメンバーは便乗してついて来ただけなので、昼まで部屋でくつろぐことにした。

昼になると、シェフの島崎がシマアジとカンパチの寿司を握ってくれた。地元の漁師が捕ってきたばかりの新鮮なネタだった。若菜と綾は廻ってないお寿司は初めてだと言って大皿の半分を二人でたいらげた。

「お前ら、そんなに喰ったら帰りは体重オーバーで船に乗れないぞ」

亨がそう脅すと、二人はそれを真に受けて血相を変えた。

「もっと早く言って下さいよ!」

薫は博子に真顔でこっそり聞いた。

「そんなことがあるのか?」

若菜と綾以外は薫のその言葉を聞いて腹を抱えて笑った。

「えっ?どういうこと?もしかして今のは嘘なの?」

綾が半信半疑で聞いたので、亨と司は椅子から転げ落ちて手足をバタつかせながら、大笑いした。

「あなた達って本当に、天然なのね」

洋子が言うと、知美がさりげなくフォローした。

「そういうところって、とても素敵なことだと思うわ。なんだか羨ましい」

「ところで、藤村は、どうなんだ?」

司が孝太とのことを心配して知美に尋ねた。

「そうね…。何か、あの元気印と一緒にいると調子狂っちゃうと言うか…。これまでの想いはなんだったんだろうなんて思えてきちゃうのよねぇ」

「お前、それって、元気印の思うつぼじゃないのか?」

亨が口を出すと、洋子も同じように思ったと見えて釘を差すように知美に言った。

「今更、横山先輩に言い寄ったりしないでちょうだいね!」

司はちょっとばつの悪そうな表情を浮かべたけれど、知美は敢然と否定した。

「それはないわ」


空港までは送迎客を当てにして、晃の父親がバスを出してくれた。CIPが午後からのバーベキューの手伝いをかって出てくれたということで、直子もビラ配りに参加することになった。

道中、温子は晃と直子が座った座席の前に陣取り、後ろ向きになってシート越しに二人に質問の嵐を浴びせた。晃は大概にしてくれと言わんばかりに、窓の外に視線を向けたけれど、直子は温子の質問に対して丁寧に受け答えした。

空港へは元々歩いてでもいける距離だったので、バスはあっと言う間に空港に着いた。メンバーは到着ロビーに並んで、飛行機から降りてきた乗客に“ストレチア”のチラシを配った。

晃と直子は空港の売店と話をしていて、空港で五千円以上の買い物をした客は“すとれちあ”でのバーベキューを二割引で提供するプランを立てていた。なので、ポスターを貼ってから、五千円以上の買い物をした客に割引券を配った。宣伝の甲斐あって、晃の父親は、バスを3往復することになった。







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