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65.晃の秘密

65.晃の秘密


司と洋子はレストランでコーヒーを飲んでいた。

「おめでとう!」

司が突然、そう言って小さな箱を差し出した。箱には赤い包装紙と緑色のリボンが付けられていた。

「えっ?」

洋子はキョトンとして、その箱を手に取った。

「誕生日だろう?今日」

「え~っ!どうして知ってるの?私、話してないよね」

「ああ。藤村が教えてくれたんだ」

「そっかあ。ありがとう!うれしーい。ねえ、開けてもいい?」

洋子はリボンを外し、包装紙を取った。そして、箱のふたを開けた。中にはシルバーの十字架のネックレスが入っていた。

「うれしーい!こんなの欲しかったんだあ」

そう言って洋子は早速ネックレスを首に付けようとした。司は洋子の首の後に手を回して留め金を付けてやった。二人の顔がほんの数センチまで近づいた。洋子が目を閉じると、司はそっと唇を合わせた。

「やっぱりコンクリートよりはこっちの方がずっといいや」

洋子は思わず吹き出して、司の背中を思いっきりひっぱたいた。

「もー!こんな時に…」


 消灯時間になると船室の明かりが消えた。補助灯のみが点いていて、辺りは薄暗くなった。

孝太達は廻りに迷惑がかからない程度に島での計画を話していた。夜の十二時を回る頃には他の乗客はみんな床についていた。孝太はなかなか寝付けなかった。一人でデッキに出た。外は真っ暗で空と海の境も分からなかった。真上からは無数の星が孝太を見下ろしている。船が作った波だけが白く後方に消えていった。

「孝太君も眠れないんだ?」

涼子だった。

「私も、なんだか興奮しちゃって」

孝太はうれしさに、顔がほころんだ。誰にも邪魔されずに、涼子と一緒にいられると思うとこの船がいつまでも夜の海を走り続けていてくれればいいと思った。

「ちょっと待ってて」

孝太はそう言うと、船室の方に戻っていった。誰かに気が付かれないように、伸一のクーラーボックスを静かに開けて、紙コップに氷を3個入れた。そして、自分のリュックから水筒を取り出した。

 孝太はすぐに戻ってきた。紙コップを涼子に渡すと、水筒の中身をコップに注いだ。

「どうぞ」

涼子はありがとうと礼を言って一口飲んだ。

「孝太君、これ!」

「ああ、船の中では買えないかもしれないと思って、途中で買って入れておいたんだ」

孝太が持ってきたのはアップルティーだった。

「ありがとう!うれしい」

そう言って再び涼子はコップを唇に近づけた。その涼子の唇を孝太はじっと見ていた。涼子は孝太の視線に気が付くと、急に顔を赤くした。

「孝太君も飲む?」

不意にそう言ってごまかした。孝太は涼子から紙コップを受け取ると、涼子が唇を付けた場所と同じ場所からアップルティーを一口だけ飲んだ。涼子がそのことに気づいたらどう思うだろう…。ふと、そんなことを考えたけれど、余計な心配だった。二人は手摺にもたれて、デッキの床に並んで座った。穏やかな風が二人を包んだ。


 船は早朝に三宅島と御蔵島(みくらじま)に立ち寄り、予定通り午前九時三十分には八丈島に着いた。

港には晃の両親がバスで迎えに来ていた。みんながバスに乗り込むと、晃だけが別の方向に歩いていった。その先には根本直子がいた。晃は直子の運転する軽トラックに乗り込んだ。

「あれって、西東京国際大学の…」

温子が涼子に晃があるいて行った先を指さして言った。

「ああ、彼女ね。毎年、夏休みになるとアルバイトに来てもらってるんだよ」

晃の父親が言った。

「働きもんで、いい嫁になるわ」

今度は母親がそう言った。

「よ、嫁って?二人は結婚するんですか?」

温子はビックリして晃の母親に聞いた。

「ああ、二人が大学を卒業したら、結婚してうちを継ぐことになっているのさ」

「え~っ!」

温子はビックリして腰を抜かしそうになった。孝太と涼子も顔を見合わせて驚いた。

「先輩達は知ってたんですか?」

「いいや、それは初耳だ」

良介は平然と言った。

「そりゃあ、そうだろう。俺達だって、昨日電話があって初めてそう言われたんだ」

晃の父親はそう言って、バスを発進させた。

直子は晃を助手席に乗せると、バスの後ろをついて行った。


 バスは港から島の中心部に向かっていく。右手に八丈富士の雄大な姿を見上げ、空港へ向かうヤシ並木を通り、ペンション“すとれちあ”に到着した。

“すとれちあ”は空港のそばにあり、白い壁にアーチ形の窓がいくつもはめ込まれている。屋根は三角にとがった形をしていて、赤い瓦調の屋根材で覆われている。建物の裏側にはウッドデッキと木製の白い柵で囲まれたテラスがあり、ビーチパラソルが付いた白い丸テーブルが5つ置かれている。テラスの先には広い庭があり、キャンプ場などでよく見かけるようなバーベキュー用の設備がある。八丈富士を眺めながらのバーベキューは“すとれちあ”の名物でもある。


部屋割りは知美、洋子、若菜、綾が二段ベッドが二つある四人部屋。亨、司、薫がシングルベッドが三つある三人部屋。智子と博子はカップル向けのツインルームになった。

CIPの方は晃は自分の部屋があるのでそこに泊まることにして、男女別で、亨達と同じタイプの三人部屋になった。







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