60.合コンラリー最終ラウンド
60.合コンラリー最終ラウンド
最後の第4ラウンド。第一会場は天保大学-泉陽女子大学でステージが“プリンスホテル”のプールサイドでレフェリーは望。
第二会場は明星出版社-武蔵野音楽大学でステージが、テーマパークの“セガタウン”でレフェリーは良介。
第三会場は太陽商事-仁智大学でステージが“CoCo”多摩川添いのフィッシング&レストランでレフェリーは伸一。
第四会場は西東京国際大学-大正女子大学でステージはディスコ“ニューヨークシティ”でレフェリーは鵬翔。
既に、第3ラウンドまでに、どのグループもかなりのカップルが成立している。社会人グループ相手に勝負をかける武蔵野台音楽大学と仁智大学以外は消耗戦に入ったと言ってもいい。
天保大学はお嬢様相手ということもあって、カップルになっていないメンバーの中から最も可能性が高そうなメンバーを出してきたのだけれど、お嬢様のお眼鏡にかなう者はいなかった。例によって5人全員が電話番号を渡す。けれど、今回ばかりはカップルが成立しなかった。総合ポイントマイナス25で、最下位が確定した。
泉陽女子大学はカップルこそできなかったけれど、5人分の電話番号を得た25ポイントを加えて総合ポイント170とし、二年ぶり2回目の優勝を果たした。
明星出版社も5人全員アタックした。そして、カップルが2組成立。最終ステージは初のマイナスポイントとなったにも関わらず、総合ポイントは95ポイントで第5位。
武蔵野台音楽大学は45ポイント加算して、総合ポイント105で第2位。
太陽商事は最終ラウンドで35ポイントを獲得し、総合ポイント105ポイントの同点2位。
仁智大学は25ポイント加えて、総合100ポイントで第4位。
西東京国際大学は最初のエントリーが少なかったため、最終ラウンドはメンバーを追加召集しなければならなかった。これが幸いしたのか、3人から電話番号をゲットした。もちろん、全員その場で交際宣言をした。45ポイント加え、総合90ポイントで僅差の第6位だった。
大正女子大学は最後に15ポイントを加えたけれど、総合ポイントは80ポイントと伸び悩みブービーに終わった。
最終ラウンドが終了した一週間後、“F&N”で表彰式と見事カップルが成立したメンバーのためのお祝いパーティーが開かれた。
合コンラリーにおけるCIPの収益は、各グループの参加費と使用会場からの売り上げのフィードバックで成立するのだけれど、利益は全てこのパーティーで使ってしまう。従って部員への報酬はないけれど、パーティーが慰労会を兼ねているため皆納得している。
鵬翔は、西東京国際大学の彼女を連れてきていた。むさ美のバザーの時、PRビデオに出演した小田切薫と江藤智子も招待されていた。
合コンラリーに参加したメンバーもこのPRビデオは知っていた様で、二人が登場すると会場はどっと沸いた。薫と智子の周りには、「PRビデオを見て感動した」と言うカップルたちが集まっていた。智子はしきりに恐縮して、「モデルじゃなくてプロデューサーがすごいの」だと、説明していた。すると、ビデオ撮った良介が注目され、人だかりが良介の方へ移動した。良介は調子に乗って能書きを垂れている。
観葉植物に囲まれた席で変装したあすかと一緒にいた望は既にイライラしていた。あすかは落ち着くようになだめながらも面白がっているようだった。
辺りに人がいなくなった頃、伸一は薫のそばへ行った。
「今日は、正真正銘のドレスコードだぜ!」
薫は苦笑した。
「それはそれで着る物に困るもんだな」
「なに言ってる!どうせ、それしか持ってないんだろう?」
真一にそう言われると、それが図星だったので、薫は顔を赤くして黙り込んだ。
パーティーも佳境に入ってきたころ、良介が温子を紹介した。
「今回のすべてのマッチメイクを担当した我がCIPの新人、廣瀬温子を紹介します」
温子は拍手で迎えられた。
カップルたちからは、感謝の言葉が飛び交った。
「素敵な場所を提供してくれてありがとう。おかげで、カップルになれた」
そんな言葉が次々に飛んできた。
明星出版社のリーダーだった三田村一樹は温子に近づき声を掛けた。
「聖都を卒業したら、是非、うちに来て欲しい」
そう言って、名刺を渡してくれた。
孝太と涼子はオープンテラスの丸いテーブルに向かい合って座っていた。既に7月も終わろうとしている。外は蒸し暑い夜だったけれど、時折吹いてくる穏やかな風が心地よかった。
孝太は珍しく酒を飲んでいた。ウォッカトニックを。飲んでいたというよりは、テーブルの上に飾っていた。
涼子は、冷たく冷やしたアップルティーを飲んでいた。
ゆでたシュリンプと、オニオンリングフライをつまみながら、店内の様子を眺めていた。
「温子はすごいわね!」
涼子がうらやましそうに言った。
「もともと、あの手の才能があったのかもしれない」
「そうね」
「涼ちゃんもああいう風に注目されたいかい?」
「いいえ、私は遠慮するわ。どちらかと言えば縁の下の力持ちでいい」
「ああ、同感だね。俺も目立つの、ちょっと苦手だ」
「だけど、孝太君はこのCIPを背負って立たなければいけないのよ」
「いや、俺達の代になれば温子が部長になった方がいい。別に女がなっちゃいけないってことはないんだし」
「そうね!その方がきっとうまくいくわね!」
「ああ!」
孝太はウォッカトニックをほんの一舐めした。グラスの中にはもう氷は残っていなかった。
店内に入るドアが開くと会場内の喧騒が聞こえてくる。中から出てきたのは望と相変わらず変装をしたままのあすかだった。
「あら!あなた達、こんなところで二人っきりになって!」
二人を見つけたあすかが冷やかしながら近づいて来た。望もあすかにいくら愚痴をこぼしても張り合いがなかった様で、ちょうどいい相手を見つけたと言わんばかりに目を輝やかせている。
孝太は嫌な予感がして席を立とうとしたけれど、望に両肩を押さえつけられて動けなかった。孝太はふと、“大学堂”での惨事を思い出した。しかし、今日は他に涼子もあすかもいる。あの時のようなことはないはずだ。いや、あって欲しくはない。
「ねえ、こんなところでしんみりしていないで向こうでみんなと盛り上がりましょうよ」
孝太がそんなことを考えているそばから、あすかは涼子を連れて店内に戻ってしまった。
「ちょ、ちょっと!」
望は既に目が座っているし、息が酒臭かった。座っている椅子ごと孝太の方にじりじりと詰め寄りながら、不気味な笑顔を浮かべていた。




