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41.本当の実力

41.本当の実力


 ボウリング場は、相変わらず、混み合っていた。受付で、45分待ちだと言われた。番号札を受け取ると、三人はゲームコーナーで時間をつぶしことにした。

温子は、クレーンゲームのコーナーで、かわいい、ぬいぐるみを見つけた。どうしてもそれが欲しくて、ゲームに挑戦したが、なかなか取れない。脇で見ていた涼子は何度も何度もコインを投入する温子に声を掛けた。

「もうやめなよ」

けれど、熱くなっている温子には聞こえていないようだった。

孝太は、クレーンゲームなどやったことはないが、何となく取れそうな気がしたので、温子の隣の機械で何気なくやってみた。温子が欲しがっていたものとは別のぬいぐるみだったが、1回であっさり取ってしまった。

それを見ていた涼子が、温子の腕を引っ張って孝太の方に向き直らせた。

「見て、見て。孝太君すごいよ」

 温子は一瞬だけ感心したような表情を浮かべたけれど、根っからの負けず嫌いがすぐに顔を出す。

「どうせ、まぐれよ。そうでないというのなら、もう1回やって見せてよ」

そう言って、温子は孝太の方へやってきた。

孝太は、機械にコインを入れる。

もう一度チャレンジする。

またまた、ぬいぐるみをゲットする。

これは、思わぬ才能を見つけたぞ。孝太はそう思った。さすがの温子も、きっとそう思ったに違いない。すぐに、孝太の腕を引っ張り、今まで、自分が何回やっても取れなかった機械の前に連れてきた。

「あれよ。あれ。お願い。取ってください」

そう言って、温子は孝太に向って、顔の前で両手を合わせた。

「よしっ!任せとけ」

孝太は三度目のチャレンジを試みた。

最初、クレーンは左へとゆっくり移動していく。目的のぬいぐるみとは、少しずれた位置だと温子は思った。孝太は黙って操作を続ける。次にクレーンは、ぬいぐるみに向かってまっすぐ進んでいく。ぬいぐるみの上まで来ると、孝太はボタンを離した。クレーンのアームが開いて、ぬいぐるみに向かって降下していく。アームの片方が、ぬいぐるみの腹に当たって滑り落ちた。

「ああ、だめだ」

温子はそう思って両手で顔を覆った。しかし、その瞬間、もう片方のアームが頭部から出ているタグを付けるための紐の輪の中に入り込んだ。アームが閉じると紐でぶら下がったぬいぐるみが落とし口に戻ってくる。

「お願い、落ちないで!」

温子は、そう祈った。

ぬいぐるみは、なんとか最後までしがみついていた。温子は、取り出し口からぬいぐるみを取り出すと、恩人には目もくれず、ぬいぐるみを抱きしめた。

「涼ちゃんもどう?」

孝太は調子に乗って、涼子にも何か取ってやると言った。

「じゃあ、あれ…」

涼子は温子とは違う、ぬいぐるみを指差した。孝太は頷いてコインを投入した。

けれど、孝太はそれを取ることが出来なかった。涼子は無理をしなくてもいいと言ってくれたのだけれど、孝太はどうしてもそれだけは取りたいと思った。

「大丈夫だから」

 孝太は最初のチャレンジで微妙に無為ぐるみの位置をずらしていた。今度はきっととれると確信していた。そして、見事に涼子が欲しいと言って無為ぐるみを取ることに成功した。

それを涼子に渡すと、涼子はそのぬいぐるみをじっと見つめて、嬉しそうに微笑んだ。その表情見て、孝太は、そんなにこれが欲しかったのかと思った。温子と違ってしっかりしているように見えても、こういうところはやっぱり普通の女の子なんだなと思った。


 孝太たちの順番が回ってきたことをしたセルアナウンスが流れた。孝太は受付でレーン番号を確認して二人に告げた。

この日の孝太は少し違った。1ゲーム目には135のスコアを出した。この前の時と比べたら雲泥の差だ。そして、コツをつかんだ2ゲーム目にはなんと178を出したのだ。

温子も、涼子も、感心して孝太を見直した。

「今日の孝ちゃん、別人みたい。涼子もこんな孝ちゃんだったら、好きになっちゃうんじゃない?」

温子の言葉に、孝太も、涼子も、一瞬ドキッとしてお互いの顔を見合わせた。涼子の顔がほのかに赤くなった。

「あら、本当に好きになっちゃったの?」

「バカなことを言わないでよ!」

 涼子は温子の肩をポンと叩いた。

「そうよね」

 温子はそう言って笑っていたけれど、その心の中では微妙に違和感が目杯はじめていた。







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