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プロローグ
プロローグ
電話が切れたあとには、プーップーッと虚しい音だけが受話器から聞こえてくる。受話器を耳に当てたまま、しばらくは立ちすくむしかなかった。諦めて受話器を置いた。全てが終わった…。いや、そんなことを考える気力もない。
体の中の力という力が徐々に失われていく。しかし、何の抵抗もできなかった。と、言うより抵抗する気にさえなれなかった。
電話ボックスのガラスの壁にもたれて、そのまま崩れ落ちるように、しゃがみ込んだ。どこから湧き出て来たのか、目の表面を覆う液体越しに見る空の色は、どんよりとした灰色で、ずっしりと重く、今にもこの世界を押しつぶしてしまいそうだった…。