第十九話
「ったく、ほんと今日は厄日だわ」
鮮やかな純白の両翼を滑空させて飛ぶイスラエルは、悔しさに顔を歪ませながら舌打ちをした。
やがて目的の場所が見えてくると、イスラエルは静かにそこへ着陸する。
目の前には部活中だっただろうか、テニスウェアを着た女子生徒たちが結界の影響で刹那の状
態で固まっていた。
その生徒たちの間を歩いてイスラエルは目的の少女の目の前にたどり着く。
ショートカットより少し長めの茶髪につぶらな瞳をした少女。
先日、“悪魔”と親密な関係になろうとした者。もしかしたらこの娘は、あの変態が悪魔だと知らなかったのかもしれないが、そんな言い訳は通用しない。
悪魔の子孫を残す可能性がある人間、というだけですでにそれは“回収”の対象になる。
「こういう日はさっさと終わらせて、帰ってシャワーを浴びるのが一番ね」
呟きながらイスラエルは少女に右手を差し出しながら目を瞑る。
彼女らの足元に、魔方陣が描かれ始めた。
「双葉さん、あれ!」
上空を飛翔するイスラエルを追いかけ、息を切らしながら彼女が降りた先に到着すると、そこにはなにやら不気味な魔方陣の上に立つイスラエルが見えた。
その姿に守の第六感が異常なまでに危険だと警告している。
守の示す先を見た唯香も、すぐさま零天氷牙を顕在させた。
「あれはかなりまずいわね……。手遅れでないことを祈るわ――ッ!!」
魔力放出を利用した瞬間加速で、唯香はイスラエルの下へ肉薄する。それに続くようにして守も走る。
「……あら、はやいのね」
それまで目を閉じていたイスラエルが、こちらに気づき唯香振り下ろした零天氷牙を往なす。
「キモ虫、今のうちに彼女を!」
「わかった!」
唯香の指示通り、守はイスラエルが唯香に気を逸らした隙に少女を奪還した。
が、すぐにその異常に気づく。
「な、なんだよ……これ――ッ!!」
腕の中で少女の身体が光り、砂のように徐々に消えてゆく。
瞳一つ動かさぬまま、血を噴出すわけでもなくまるで砂で作られた人形のように、砕けた少女の身体が粒子となって風にさらわれていく。
「そんな……間に合わなかった……」
それを見た唯香は悲痛な面持ちでその場に崩れ去る。
「惜しかったわね。もう少し早かったら間に合ったかもしれないのにね……」
ふふっと愉しそうに笑うイスラエルは、唯香の攻撃が止んだのを見ると、すぐさま飛翔した。
「さよなら、お二人さん。……今度会うときは全力で相手してあげるわ」
絶望に打ちひしがれている守たちを尻目に優雅に天へと羽ばたいていく。
その先にあるのは天界とこの世界を繋ぐ門。
目的を果たして帰っていくイスラエルに、守たちはただただ呆然としていた――。
前回のお知らせどおり、次話でフラないは凍結されます。




