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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第二篇 欧州篇

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第七十九頁 ヘルヴェティア

一七三二四年五月十日(水)

大西洋上空


 クウヤらを乗せた飛行機は無事離陸に成功し、安定飛行状態に入り、大西洋を横断していた。


ロ:「ねぇ、アダン?研究所って飛行機で何時間かかるの?」


ア(エ):「半日だ」


ア(バ):「えっ!そんなに⁈」


ア(エ):「多く見積もっての話だ。十時間ぐらいあれば着くだろう」


ロ:「それでも結構な時間だね……」


ク:「たのしみだな!あたらしいくに!」


ビ:「欧連な。四大国ぐらい覚えとけよ……」


ア(エ):「勘違いしているようだが、欧連には行かないぞ」


ク・ビ・ロ・ア(バ):「えっ!!」


ビ:「いやいや。だって研究所は欧連にあるって……」


ア(エ):「言っていない。欧()にあるとは言ったが」


ロ:「何が違うの?」


ア(エ):「欧連は国名だ。知っての通り欧州連合国の略称だ。対して欧州は欧連を含むそこら一帯の地域の名称だ。カタカナで『ヨーロッパ』とも言う。俺はヨーロッパの生まれだから聞き馴染みがあるが、お前らはそうでもないだろう。騙すつもりはなかったが誤解を生んだとしたら申し訳ない」


ビ:「俺らが初めて会った日に教えてもらったことだよな。欧州って言ってたような気もするし、欧連って言ってた気もするし……はっきりとは覚えてねぇな」


ロ:「認識違いがあったとしても不思議じゃないね」


ビ:「そうだな。ってか、外国のことベラベラ喋って大丈夫か?」


ア(エ):「なんら問題ない。ここは大西洋上空。どの国の領土でもない故に法の効力は及ばない」


ビ:「脱法行為じゃねぇか……」


ア(エ):「そうでもないぞ。今から向かう国、『ヘルヴェティア』は冷戦の影響を全く受けていないからな」


ロ:「えっ?そんなことってあるの?」


ア(エ):「ある。ヘルヴェティアは永世中立国という立場をとっていてな。国家自体が全ての戦争の交戦国に対して中立であることを宣言している」


ク: 「どゆこと?」


ビ:「俺の顔を見るな」


ア(エ):「一言で示すなら『戦争に干渉しない国』だ。故にこの世界規模の冷戦とも無縁でいられる。ヘルヴェティア国内では外国の情報をどう扱おうと自由で、咎められることもない。まあ、そんな国でもなければ能力者の研究など安全安心に遂行できないからな」


ビ:「なんとなく分かった気がする。旅をしてる俺たちにとっても良心的な国って認識でいいのか?」


ア(エ):「構わない。ヘルヴェティアは俺の知る限り最も安全な国だ。外国人の受け入れにも寛容な姿勢を示している」


ロ:「外国だからって気を張る必要もないってこと?」


ア(エ):「端的に言えばそういうことだ」


ア(バ):「なんかめっちゃたのしみになってきた〜」


ロ:「確かに!不安はさっきよりなくなったね」


ア(エ):「まあそういうことだ。さっきも言ったが、到着までにはかなり時間もかかる。各々適当に過ごしてくれ。俺は論文の執筆をする」


ビ:「ここで?」


ア(エ):「この飛行機は研究所の所有物だ。俺専用の部屋が付いている。お前たちの個室はないが、その椅子も悪くはないだろう?エコノミークラス症候群にだけ気をつけろ」


ク:「えこのみーくらすしょーこーぐん?」


ア(エ):「長時間同じ姿勢でいると血行不良が起こって血液が凝固する。その血栓が何かの拍子に血管を流れて詰まってしまう症状だ。最悪死ぬ」


ミ:「えっ……」


ア(バ):「やべーじゃん、それ!しにたくねーよー!」


ビ:「落ち着け!」


ア(エ):「座りっぱなしが悪いだけだ。適度に立てばいい」


ア(バ):「それだけでいいのか?」


ア(エ):「あ、あぁ」


ア(バ):「たてばしなないんだな?」


ア(エ):「そうだ……顔が近い……」


ア(バ):「よかったぁ」


ア(エ):「……では良いフライトを」


 アダンは個室へ姿を消した。


ロ:「最後、逃げたように見えたけど」


ビ:「あんな詰められたらそりゃ逃げたくもなるだろ」


ア:「だって、しぬって!」


ビ:「極端な話だろ。調べた感じ、水分もちゃんと取ってれば大丈夫らしい。幸い貸切みたいなもんだから騒いでも問題なさそうだし。不安だったら後ろの方でウロウロしてればいいんじゃねぇか?」


ア:「そうする!」


ビ:「近くでウロウロされると落ち着かないからこっち来んなよ!」


ア:「おっけー!」


ロ:「元気だね……」


ビ:「元気すぎるのもちょっとな……」


ロ:「まあね。俺はどう過ごそうかな〜?」


ビ:「それなら意見聞きたいことがあんだけどいいか?」


ロ:「うん。いいよ」


ビ:「ミクリと……クウヤ」


ク:「なんだよ!さんかしたいならすればー、みたいな言いかた!なんかはらたつからきく」


ミ:「私も?」


ビ:「あぁ、ジャックさんのことでさ」


ロ:「君、ずっと気にしてるよね?」


ビ:「なんか引っかかるんだよな」


ロ:「このなんとか許可書とかどうやってとって来たのかとか気になることはあるよね」


ビ:「そうなんだよ。それに前に俺、ジャックさんの能力について聞いただろ?」


ク:「えっ?ジャックさんってのうりょくしゃなの⁈」


ロ:「気づいてなかったの?」


ク:「ぜんぜん。あっ、だからのうりょくのことくわしかったんだ」


ビ:「……続きを話していいか?」


ク:「うん」


ビ:「んで、そん時、ジャックさんの能力は『高速移動』だって聞いたんだよ。でもさ、さっきあの人、クウヤの剣を届けるって言ったよな?」


ロ:「うん。そうだね」


ビ:「高速移動だったら大西洋を渡らなきゃいけないだろ?」


ロ・ミ:「‼︎」


ビ:「それに俺が見た感じも、高速移動ってより瞬間移動の方がニュアンス近い感じがしたんだよな」


ロ:「ジャックさんが俺たちに能力を隠す理由がなんなのかって話?」


ビ:「そういうことだ」


ロ:「まず何か事情がありそうだよね」


ビ:「あの人、俺たちに何をさせようとしてんだ?」


ロ:「言われると怪しく思えてくるね。ミクリちゃんはどう思う?」


ミ:「私たちの敵……ではないよね?いっぱい協力してくれたし」


ビ:「だと信じてぇよな。ただ……味方だって保証もねぇんだよな。それが一番厄介な問題だ……」


ミ:「うん」


ク:「でもぜったいわるい人じゃないって!俺のことめっちゃ助けてくれたぞ!」


ロ:「怪しいけど、友好的っていうのが判断を難しくしてるよね」


ビ:「本当にロッドの言う通りだ。俺もどこまで信じていいのか」


ク:「ジャックさんはしんようだいじってよく言ってんじゃん?」


ビ:「信用第一だろ。自分で言ってのも胡散臭いし」


ロ:「堂々巡りになっちゃってるよ」


ビ:「そうだな。隠し事はもっとジャックさんと付き合って引き出すしかねぇよな。サンキュー。逆になんか話しときたいことあるか?」


ロ:「うーん。他愛無い話なら移動中にしちゃってるしね。ミクリちゃんは何かある?」


ミ:「えっ!何もないよ」


ビ:「些細なことでもいい。ただでさえお前は口数少ないんだ。我儘でもいいし。この際だから思ってること少しでも言ってみたらどうだ?」


ミ:「うーん……し、強いて言うなら女の子の仲間がいたらいいなーって……」


ビ・ロ:「同感だ[よ]」


ク:「俺も!」


ビ:「ミクリのためにも早く見つけないとだよな」


ロ:「簡単そうで結構な難題だよね。この時代に旅をしてくれる人で、且つ俺たちを理解してくれる人じゃなきゃいけないし」


ビ:「そんな奴いるのかって話だ。しかもこれから外国を旅するわけで、外国人に付き合ってくれる奴ってなるとな」


ロ:「そうだね」


ミ:「……」


ロ:「無理って言ってるわけじゃないからね!」


ミ:「うん……」


ビ:「最優先事項にしてもいいかもな」


ク:「そうだよな!女子がいた方が絶対楽しいよな!」


ビ:「なんか論点がズレてそうなんだよな……」


 会話に進展はないが、彼らを乗せた飛行機は目的地ヘルヴェティアへ向けて着実に飛行していた。

次回 フィッシャー人間科学研究所

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