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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第一篇 大米合衆国篇〜ブラジル州〜

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第七十八頁 暗躍

第一章最終話です。

あとがきに作者のコメントを記しておりますので気になる方は最後まで読んでやって下さい。

一七三二四年五月十日(水)

大米合衆国・アメリカ州・東地区 ニューヨーク



「帰ったぞー」


「疲れてるな」


 ジャックは襤褸小屋に帰り、それをグレゴリーが迎えた。


「マジであいつら!容赦なく人をこき使いやがって!」


「ははは。その剣が物語ってるな」


 ジャックは憤り、グレゴリーは笑っていた。


「預かったのか?」


「あぁ、一旦な。すぐ届ける」


「どこに?」


「そういや行き先聞いてねぇな……多分ヘルベティアだろ?」


 グレゴリーは目を見開いた。


「ヘルヴェティア⁈ジャッキー、お前……」


「一瞬で行って、用済ませて、一瞬で帰るよ」


「いい加減能力バレるぞ!」


「そん時はそん時だ。いつかは話すことになる可能性が高いんだ。遅かれ早かれあいつらは知ることになる」


「なんのために隠してるんだかわからないじゃないか……」


「隠してるのは俺の意志じゃねぇよ。お前が隠せっつったんだろ」


「そういう使われ方や使い方をしないためだ。ジャッキー、彼らを気に掛けすぎだ。この前だって、あそこまでする必要はなかったんじゃないか?」




<回想>

一七三二四年四月十九日(水)

大米合衆国・アメリカ州・東地区 ニューヨーク


 数日前、サンタテレサ・デ・ラ・クルス城が崩壊したニュースがジャックらの耳にも入った。

 もちろん瓦礫の下から男性八名の遺体が発見されたことも含まれる。

 ジャックはクウヤを案じていた。


「クウヤのやつ、大丈夫だと思うか?」


 グレゴリーに尋ねる。


「ミロク・インディュラが行方不明って事だろう?無事を祈りたいところだが……」


「奴が無事かどうかなんてどうでもいいが見つかった方がいいのは同意だ。どこに消えたんだろうな?」


「まったくだ」


(これは臭ぇ……画策したのは……考えても無駄か)


「ちと行ってくるわ」


「どこへ?」


「クウヤんとこ」


「おい待……はぁ」


 グレゴリーが何かを言い始める前にジャックは姿を消していた。



一七三二四年四月十九日(水)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア 某ホテル


 真昼にも関わらず、夜中のような部屋だった。

 光がほとんど入っていない。

 昼であるので、流石に何も見えないわけではなかったが、外からの光は厚手のカーテンでほとんど遮られていた。


 ジャックは部屋の中に姿を現した。

 そしてベッドの上で小さくなっている人間を発見した。


「塞ぎ込んでんのか?」


 声をかけた。

 クウヤは反射的に体を震わせて、周りを見た。

 しかし暗さに目が慣れていない。よく見えなかった。


「こっちだ。どこ見てる?」


 再び声が聞こえた。

 そちらに注意を向けた。

 そこには見知った顔があった。


「ジャ、ジャックさん?なんで?」


 いつもの張りのある声ではなかった。

 声に力がない。寝ぼけたような具合が悪いような、とにかく憔悴していることがはっきり感じられる。


「お前の様子を見に来たんだよ。ったくシケた面しやがって。いつもの元気はどうした?」


「シケタツラって……ビゼーにも言われました」


「あとで自分の顔、鏡で見てみろ!ひでぇぞ!」


「すいません……」


 ジャックはため息をついてから再び話した。


「お前がへこたれてるだけだったら気が済むまで沈んでくれりゃいいんだけどよ。仲間、どうするつもりだ?」


「……」


「リーダーなんだろ?だったらシャキッとしろ!仲間ほっぽっていじけてんじゃねぇ!」


 ジャックは怒っていた。

 いつものようにふざけて怒っているのではない。

 クウヤは小さな声で反論した。


「オレはリーダーなんかむいてないですよ。ビゼーのほうがリーダーっぽいし……」


「俺も一応リーダーだからよ。こう言うのは好きじゃねぇが、『先輩』として言わせてもらう。どんな奴がリーダーに適任か知ってるか?リーダーってのは人を惹きつける力がある奴が担うんだ。カリスマ性な。そもそも人望がなきゃ人ってのは寄ってこねぇんだよ。嫌われ者にかしらは務まらねぇだろ?統率力があるからリーダーができるんじゃねぇんだ。人を引っ張っていく力がある奴、ビゼーやグレッグみたいなのはカリスマのそばに置いておくのがベストなんだよ。分業制だ。人が寄ってきて初めて統率力が生かされる。両方なきゃいけないのは何百人もの兵士を束ねる将軍様だけだ。従う奴らだって自分の命は簡単に預けねぇだろ?お前は将軍様やるわけじゃねぇんだ。もっと気軽にやれよ。せっかくお前には人を惹きつける力があんだからさ。負の遺産、一人で抱え込んで仲間の動きを止めてるんじゃ話になんねぇよ。見限られるぞ!今自分にできることをしろ!足りない頭は補って貰えばいい。最低限の自分の役割ぐらい自分で考えて全うできるリーダーになれ!アイツらもお前に何かを決めてほしいと思ってるわけじゃねぇよ。お前がいりゃそれでいいんだ」


「オレがカリスマ?」


「分かったら謝罪の仕方を考えとけ。それだけ!邪魔したな。じゃあな!」


 ジャックは鍵を開けて出入り口から出て行った。

 クウヤは呆然とジャックの背中を見つめていた。


<現在>


「クウヤ君相手だからお前も能力を使って行ったんだろうが、そこまでするか?」


「お前には分かんねぇだろうよ」


 グレゴリーはジャックの言い分に溜息をついた。


「今日のも外国に剣を届けろって依頼か?」


「いや、ついでだ。本題は別にあった」


「なっ!どんな依頼だったんだ?」


「言ったらお前、怒るだろ……」


「怒られることが分かってて引き受けたんだろ」


「よく分かってんな……さすがだ。相棒」


「早く言え!」


 グレゴリーは表情には出さずに圧をかけた。


「分かったよ……」


 ジャックはつい数分前の出来事を話した。


<回想>

一七三二四年五月十日(水)

大米合衆国・アメリカ州・東地区 ワシントンD.C. ホワイトハウス


 大統領執務室の扉がノックされた。

 大米合衆国大統領、ジョン・ジャクソンは入室を許可した。


「失礼します!大統領!」


「——!君か……」


 大統領が驚くのも無理はなかった。

 そこにいたのは若干二十五歳。つい最近下院議員の被選挙権を得たばかりの青年。ジャック・スミスだった。


「突然来るなと言っているだろう」


「すみません。喫緊の要件だったもので」


「……とりあえず聞こう」


「ありがとうございます。では単刀直入に申し上げます。特別渡航許可書を発行していただきたい!」


「何部だ?」


「五枚です」


「五……君たち五人のものか?」


「いいえ。アダン・バスケス、ビゼー・アンダーウッド、クウヤ・インディュラ、ミクリ・イシザワ、ロッド・アーロンソンの五名です」


「ほとんど知らないな。イシザワと言うのはあの家系の御令嬢だね?他は何者かも分からない。どうしてそんな人物のために私が動かなければならない?」


「能力者の未来のためです」


「そう言われると弱いな……」


 大統領は頭を掻いた。


「その五人について教えてくれ。イシザワ氏は私が思っているあの?」


「えぇ。イシザワ家の娘です」


「そうか。アーロンソン?という名前もどこかで……」


「元守護者(ガーディアン)です」


「あー、そうだ、それだ!だから聞いたことがあったんだ。他は?」


「クウヤ・インディュラは……いや……一般人です」


「うん。拒否しよう!」


 考える素振りもなく言い切った。


「大統領!」


「今すぐ特別渡航許可書を発行しろと言うんだろう?規則を破ってまで実行するメリットがない」


「俺もその辺の適当な奴らの適当な頼みならここまで来ませんよ。俺がアポなしでここにいるという事実を踏まえてください」


「踏まえた結果だ」


「大統領!」


「そんなことを許していたら国民に示しがつかない」


「……そうですか。忙しいところ申し訳ありませんでした。失礼します!」


 ジャックは大統領に背を向けた。


「おっ、やけに素直じゃないか」


「駄目元なので」


 大統領は腕を組んだ。


「知らない間に大人になったんだなぁ」


 一つ溜息をつく。


「分かった!今回だけだぞ。もう無茶は聞かないからな」


「いいんですか?」


「いらないのか?」


「いえ!ありがとうございます!」


「私の名前は出すなよ!」


「はい!」


「書類は自分で作ってくれ。日付は二週間前で」


「承知しました!」


 ジャックは書類に記入を行う。

 その間に大統領は特別渡航許可書に判を押した。

 書類の作成が済むと、大統領はジャックに特別渡航許可書を手渡した。


「ありがとうございます!でもどうして急に?」


「娘の件でも君には世話になったからな。そんな君の頼みだ。それと本当に能力者の未来が懸かっていると言うのなら結果で見せてもらおうじゃないかと思ってな」


「期待していて下さい」


「大きなことを言うようになったな……」


「褒め言葉として受け取っておきます。失礼します」


 ジャックは執務室を後にした。



一七三二四年四月三日(月)

大米合衆国・アメリカ州・東地区 マサチューセッツ ハトバアンド大学・図書室


 時は少し遡る。

 国内最高峰・ハトバアンド大学に通う一人の女子学生がいた。

 彼女の名はスカーレッド・ヴィオラ。

 出身はアメリカ州西地区の田舎の村・トアル村である。

 彼女は今年ハトバアンド大学に合格し、日々勉学に励んでいた。

 父親の仕事である鍛冶かぬちになるため、金属の研究をしたいと理系の学科に進んでいた。


 彼女は一年生ということもあり、毎日、授業がぎっしり組まれている。

 そんな中でも彼女は隙間時間を見つけては図書室に通っていた。

 本日、彼女は一冊の書籍に出逢う。

 彼女は普段、無機化学の文献を好んで漁っていたが、今日に限っては生命科学の文献が並ぶ棚を物色していた。


 そこで一冊の本を手に取った。

 興味を惹かれたわけではない。

 完全に偶然だったのだ。


「うん?『能力者に関する研究』?作者は……アダン・エストレ……先生?知らない方だ」


 スカーレッドはその本を借りることにした。

 すぐに本を開いた。

 一ページ目から衝撃の記述を発見する。


「魔人とは()()()()()()()()()()である⁈これって!」


 衝撃的な文を見たスカーレッドは、夢中で読み込み、その日のうちに読み終えてしまった。


「魔人……もしかして私……」


 彼女は図書室を飛び出した。


大米合衆国篇 完

次回 ヘルヴェティア


長くなりましたが、第一篇完結です。


 二ヶ月半、ほぼ毎日投稿しておりました。思ったよりも閲覧数があって驚いています。

 正直なところ、しばらくの間は一回も見てもらえない日々が続くのではないかと思っていました。

 しかし今日(2025/6/18)までユニークアクセスがゼロだったことはなく、エピソード別ユニークアクセスもゼロだったことがありませんでした。

 この日までに1500pv、1000uaを突破し、エピソードを閲覧したのべ人数も1100を超えました。規模の大きさを痛感しています。

 自分の中ではかなり多いと思って(他の有名作品と比べるとゴミみたいな数字ですが……)おり、とても感動しています。

 毎日読んでくださる方がいると思うだけで執筆を続けることができました。

 何処の馬の骨かも分からない底辺作家の拙作駄文処女作を見守ってくださり本当にありがとうございます!

 また読んでいただけると幸いです。


 最後に、傲慢ではありますが、また読んでやってもいいと思った方はブックマークをしていただけると嬉しいです。増えると心が安らぎます。


 まずは自分が、ゆくゆくは多くの人に面白いと感じさせる作品にできたらと願っています。

 続きもご期待ください!

 ここまでお読みくださりありがとうございました!

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