表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔人キコウ録  作者: 长太龙
第一篇 大米合衆国篇〜ブラジル州〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/107

第六十八頁 昏睡

一七三二四年三月十五日(水)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア 郊外の丘


 ビゼーはジャックから指示された場所で待機していた。

 送られてきたメールには「ここへ行け」というメッセージと目的地にピンが刺さった地図アプリの画面が添付されていた。

 拡大して詳細を見ると何もない草原だった。

 周りより小高くなっている丘の上である。


 数秒後、何もないところから突然ジャックが現れた。

 ボロボロのクウヤを抱えて、膝を着いていた。

 あまりに不可解な状況だが、そこを追求する時間的余裕は確保できなそうだ。


「ジャックさん。大丈夫ですか?」


「あぁ?クウヤはヤバい。早く運んでやってくれ」


「クウヤがヤベェのは見れば分かります!そうじゃなくてジャックさんもきつそうにしてませんか?」


「俺は大丈夫だ!お前はもう分かってるだろうから言うが、俺は能力者でよ。久々に能力連発したもんだから疲れちまったのよ。ハハハ……それよりクウヤだ。ここ下ったとこに病院がある。すぐに連れてけ!救急車呼ぶよりちょくで行ったほうが早い。頼んだ!」


「はい!」


 ビゼーはクウヤをおぶると駆け足で病院へ向かった。

 ビゼーが視界から消えるとジャックは草原に背を着いた。

 呼吸が荒くなる。


「んんっ……はぁ……はぁ……あの野郎、本気で殺そうとしたな。マジで向かってきやがって……」


 ジャックは左脇腹に右手を当てた。

 数秒後、その掌は手形をとる前のようになっていた。


「無茶はするもんじゃねぇな。それにしても、あの一瞬でこの傷か……割と当たってないつもりだったんだけどなぁ。バケモンが……あ〜あ、ほっといたら俺もぶっ倒れるよなぁ……もう倒てっか。グレッグに連絡するか。怒られっかな?」


 ジャックはグレゴリーに電話した。

 事情を話すと想定通り怒られた。

 しかしすぐに迎えにきてくれるそうだ。

 ジャックはゆっくり目を閉じた。



一七三二四年三月十五日(水)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア 丘の下の病院


 ビゼーはクウヤを病院に運び込んだ。

 そこの医師はクウヤの状態を見て大変驚いていた。

 生きていることすら奇跡だと言う。

 クウヤは速やかに処置された。

 ビゼーはクウヤがこのような状態になった理由を階段から落ちたからだと説明した。

 恐らく医師は嘘だと分かっているだろう。

 しかし真実を口にしてしまえばミロク・クウヤ姉弟きょうだいは揃って犯罪者に堕ちる。

 能力者が関わっていることを知られると更に厄介なことになる。

 口が裂けてもありのままの出来事しんじつを漏らすわけにはいかなかったのだ。

 医師も何かを悟ったのか深入りしなかった。


 医師は一通りクウヤの体を調べた。

 すると奇妙な事実があった。

 全身傷だらけで体に貫かれた跡さえあるというのに、致命傷が一つもなかったのだ。

 彼の傷は主要な血管や臓器を綺麗に避けていたのだ。

 医師は階段から落ちた傷ではないと確信した。

 しかしビゼーはそれ以外の言葉を発することはなかった。


「クウヤを助けてやってください」


 最後に一言残し、病院を去った。



一七三二四年三月十五日(水)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア 某ホテル


 ビゼーがホテルに戻ると全員起きていた。

 色々あったがまだ正午にもなっていなかった。


「あっ、ビゼー帰ってきた。クウヤは?一緒じゃなかったの?」


 帰るなりロッドが尋ねた。

 ビゼーはクウヤの行動を予測を交えながら仲間に話した。


「クウヤ、俺たちに黙ってそんなことを……」


 ロッドは憂いの表情を見せる。

 ミクリも俯く。

 いつも笑顔のアダン(バ)でさえも表情が強張っていた。


「クウヤ、しなないよな?」


 アダン(バ)が尋ねた。

 ビゼーはクウヤの体に致命傷がなかったことを話す。

 致命傷の言葉の意味を聞いた輩が一名いたが、そのエピソードは省略する。


「それって絶対意図的だよね?」


「偶然じゃそうならないと思う……」


 ロッドとミクリはビゼーの話を踏まえて発言した。


「俺もそう思う。ってかそもそもミロクさんはクウヤを殺す気がないんじゃないか?」


 ビゼーは自らの考えを伝えた。


「その気がないならどうしてクウヤは入院するの?」


 ロッドが反論した。

 ビゼーは何も言えなかった。

 しかしロッドはこうも言った。


「でも悪い人にも思えないんだよね。話した感じがさ。ちゃんと話せればいいのに」


 ミクリはポケットに手を入れ、ミロクからもらった犬のキーホルダーを取り出した。

 優しく握りしめて言う。


「私もそう思う」


 ミクリが言った。


「俺もだ。話し合いをするにしてもクウヤにその気がないからな……あの野郎、目覚めたらまた行くつもりなのか?」


 ビゼーは頭を掻いた。


「……」


 沈黙が訪れた。

 全員否定したかった。しかしできなかった。

 ここでアダン(バ)が一つの提案をする。


「じゃーさー!おれたちでとめるしかないんじゃね?クウヤがねてるあいだにもっとつよくなろうぜ!そしたらクウヤのこととめられるだろ?」


 最後に口を目一杯広げて笑顔を見せた。


「そうだな。クウヤが考えを改めてその必要がなくなったとしても損にはならねぇからな」


「アダン(エ)のところに行こうか!」


「あぁ」


「うん」


 ロッドの言葉にビゼーとミクリは返事した。

 アダン(バ)は名前を呼ばれて「おれ?」と戸惑っていた。

 ロッドは優しく「もう一人の方ね」とツッコんだ。


 ビゼー、ロッド、ミクリ、アダン(バ)の四人はこの瞬間、バトルの世界に入り込んでしまった。


 アダン(エ)の元で研鑽を積む。

 何日か経った頃変化を実感する。

 ロッドは小アルカナのコートカードを使えるようになったことに気づいた。

 またミクリは石澤流魔導基本の技、「石澤流魔導基礎ノ(カタチ)・集中」を習得していたことに気づいた。

 石澤流魔導の全ての技に通ずる重要なものだそうだ。

 ビゼー、アダン(バ)も能力の強化に勤しんだのだった。


一七三二四年三月十六日(木)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア 丘の下の病院


 クウヤの病室に足音が近づく。

 カラカラと扉を開けるとクウヤの枕元で足音が止まった。


「クウヤ」


 ジャックだった。


 ビゼーと丘で別れたあと、グレゴリーがジャックを迎えに来た。

 グレゴリーはジャックを処置した。

 包帯を腹の回りにグルグルと巻きつけた。


「治療がテキトーすぎませんか?ドクター?」


 ジャックが文句を言うと、グレゴリーは患部を叩いた。


「だあぁぁ〜〜!」


 ジャックが悲鳴を上げた。


「大きな怪我ではございませんので、このくらいで上等ですよ。お客様?原石を磨くのはいいが、自分が事故に巻き込まれてどうする?下手をすれば死んでいたんだぞ!」


 グレゴリーは不機嫌だった。


「それは悪かった」


 ジャックは素直に謝った。が、


(だが、患者に対してこの仕打ちはねぇだろ?医師免許よく剥奪されねぇな?)


 内心はこう思っていた。

 グレゴリーは何か勘づいた様子だったが何も聞かない。

 ジャックと共にそのまま帰り、安静にさせた。


 そして現在に至る。


「人間ってのは寝てる時でも耳だけは聞こえてるらしいな。昨日、奴との戦いで何が起こっていたのか教えてやるよ。お前は分からなかっただろ?『怒れる蜂群(アングリー・ビー)』『荒れ狂ふ巨象ランページ・エレファント』『燒かる食鶏(バーンド・チキン)』この三つは奴の必殺方程式、リーサルウェポンだ。怒れる蜂群(アングリー・ビー)()()()()荒れ狂ふ巨象ランページ・エレファント()()()()。最後に燒かる食鶏(バーンド・チキン)()()()再起不能にする。食物連鎖の頂点にいる人間らしい手間暇かけた料理みてぇな技だろ?俺は個人的に『野菜スティック』って呼んでる。奴がそれを使ったってことは能力者としてそれ相応の評価をもらったってことだ。誇れよ。まぁ、お前からしたらそんなんどうでもいいって感じか?悪ぃな、俺にも命ってもんがあってよ。あんなバケモンと正面からぶつかったら俺が地球の藻屑になっちまう。良きタイミングはあそこしかなかったんだ。許してくれよ。ま、死ぬ前に救出できて良かった。あのバケモンからだぞ!本当、褒めてくれよ?冗談はさておき、死ぬなよ!クウヤ。死の淵で闘え!それがお前を強くするはずだ。蘇ったらまた会おうぜ。じゃあな」


 話したいことだけ話してジャックは病室を出た。

 クウヤは変わらず眠ったままだった。

次回 対談

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ