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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第一篇 大米合衆国篇〜ブラジル州〜

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61/107

第六十頁 正体

「——!」


 クウヤが意識を取り戻すとホテルの部屋にいた。


「目、覚ましたか」


 クウヤの視界にはビゼーが写っていた。

 ビゼーはクウヤを見て言う。


「起きたばっかでわりぃけどよ、お前、俺らに説明することあんだろ?」


 クウヤが体を起こすとパーティメンバーが全員集まっている。

 話さないわけにはいかない。


「アイツはミロク・インディュラは……オレのアネキだ」


「やっぱそうか……苗字が親族だって言ってたもんな」


「お姉さんだったんだ!声の感じが妹さんかと思ったよ」


「クウヤのねーちゃんってこえーな」


 ビゼー、ロッド、アダン(バ)はそれぞれ感想を述べた。

 全員身内だと知っているらしい反応だった。


「なんで……か、()()()だって知ってんだよ?」


 「家族」という時だけ異常なスピードで明確な発音をせず、濁すような言い方だった。


「掲示板とこに名前載ってただろ?発音分かんねぇけど、お前の苗字珍しいだろ。一致してたらほぼ確で身内なんだよ」


 ビゼーが理由を教えた。


「……」


 知られていたことが少し恥ずかしかった。


「で、何でお姉さんに斬りかかってたんだよ?姉弟きょうだい喧嘩とかいうレベルの話じゃねぇよな?抜剣までして」


 クウヤはとことん詰められることを覚悟した。

 彼は以下のことを語った。


——<クウヤの記憶>

十二、三年前

某国・某所


 オレが小さかった頃の話だからあまりよく覚えてないけど……父ちゃんと母ちゃんとオレとアイツ(ミロク)は四人で暮らしてた。

 あの日、オレとアイツは叔父さんに遊びに行った。すぐ近くに住んでてさ。

 おやつの時間までは一緒にいたけどアイツは先に帰るって言って叔父さんから先に出ていったんだ。

 オレは夕方くらいまでそこにいて、暗くなる前に帰れって伯母さんに言われて家に帰った。

 家に着いたら、家の中からドンって音がした気がして。

 オレは家の中に入ったんだ。

 そしたら……腹から血流してる母ちゃんと、父ちゃんが寝てたんだ。

 真っ直ぐ綺麗に二人で並んで。

 二人だけじゃなくて、家の中にはオレとあともう一人いた。

 両手が腕まで血で真っ赤になってた、ミロク(アイツ)が……

 オレが見た時、アイツは後ろ向いてたんだけど、オレに気づいて振り返った。

 「ヤベッ」て顔してたの、そこだけよく覚えてる。

 オレ、怖くなって倒れちゃったみたいでさ。

 気付いたら隣に伯母さんがいた。

 オレはそれ以降、アイツに会っていない。

 何日かして、父ちゃんと母ちゃんのお葬式をしたんだ。

 オレが見た時には二人はもう死んでたんだってさ。

 犯人はミロク(アイツ)だ。

 絶対アイツが殺したんだ。

 だからオレが絶対アイツを殺す。

 必ず父ちゃんと母ちゃんの仇を討ってやるって。

 オレはその時誓ったんだ——


<現在>

 クウヤの話を聞いてビゼーは質問した。


「お姉さんがご両親を殺すところは見てないんだよな?」


「うん。でもアイツがったにきまってる!」


 自信を持って言い切った。


「何でそう思う?」


「父ちゃん、こわい人でさ。よくアイツのことおこってたから。アイツ、父ちゃんのことうらんでたんだよ!それでころしたんだ!」


 クウヤは怒りの感情が剥き出しになっていた。

 ビゼーはクウヤの言い分に意見した。


「確かに辻褄は合うような気がするけど……多少強引じゃねぇか?日常的に怒られてたくらいで実の親を手にかけるかって……外部犯の可能性もあるし」


 クウヤはこれに反論した。


「ねーよ。オレたちいがいの人が入ったあともなかったみたいだし。アイツがころしてないんだったらそもそもにげないだろ!」


「まぁ……」


 ビゼーはこれ以上は追求を控えた。

 代わってロッドが言った。


「でも俺はお姉さんが人を殺すような人には見えなかったよ。最後、凄い気を遣ってくれたし、何も知らないけど言うほど悪い人じゃないんじゃない?」


「でもころしてただろ!けっとうとか言って」


「まあ……」


 これ以上は追求を控えた。

 今度はアダン(バ)が言葉を発した。

 クウヤに対する質問ではなかった。


「あのさー、このかみってなんなの?」


「決闘状って言ってたよね。」


 ロッドが言った。


——決闘状。

 正式名称を「法的決闘申請書」という。

 国民の死ぬ権利を保障するために「決闘法」という法律が整備された。

 法的決闘申請書に必要事項を記入し、役所に提出すると法的に決闘が許可された状態となる。


 決闘開始時間を過ぎてから翌日になるまでの間、決闘申請者とその対戦者が互いに加えた身体的暴行は、犯罪要件に該当しなくなるのだ。

 ただし必ずしも犯罪にならないわけではなく、決闘者同士の同意が得られた段階までの行為が認められるのである。

 決闘中に起こった相手に対する過失の犯罪行為(同意外の行為)は通常の罰則よりも軽くなる。

 お互いが死ぬことに同意していれば、殺しても無罪なのであり、誤って殺してしまった場合でも殺人罪の最低限の刑よりも軽く済むのだ。

 反対に、決闘が許可されないままあるいは決闘時間外に相手に対する故意の犯罪行為等が確認された場合、通常の罰則よりも重い刑が下される。また決闘時間中の決闘者の身体以外への犯罪行為も同様である——所有物の窃盗や家屋への放火等——。


 命に関する法律であるため、申請するにも多くの制約がある。

 申請には決闘申請者及び対戦者が揃って窓口に提出しなければならない。それが困難な場合は委任状の添付に限り、条件が変更となる。

 詳しく法律を記すと長くなるのでこの辺りで割愛する——


 決闘状には決闘申請者の欄にミロクの情報が埋められており、対戦者の欄が空白となっていた。また見届人の欄には八人の名前が既に書かれていた。どれも知らない名前だが、恐らくは城の上階にいた男たちの名だろう。

 しかし見届人欄にはまだ加筆できるスペースがあった。


「本当にやるのか?」


 ビゼーがクウヤに問う。


「当たり前だろ」


 落ち着いた口調でクウヤが答えた。


「やめとけ!姉弟きょうだいで殺し合いなんて誰も得しない!」


 決闘状には「同意する犯罪行為」の「殺人」の欄にチェックマークが付されていた。


「べつにおまえにはかんけいないだろ!」


「関係なくねぇよ!お前が死んだらどうする?」


「オレがあんなヤツにまけると思ってんのか?」


「そういう問題じゃねぇ!俺はそんなことで誰かが死ぬのを見たくねぇだけだ!」


「これはオレのもんだいだ!それに父ちゃんと母ちゃんだって……『そんなこと』なんて言い方はゆるさねえぞ」


「お前……」


 ヒートアップして来てしまった。

 ビゼーは一度落ち着いて、そして問う。


「……誰について来たと思ってんだ。俺たちは?」


「旅するのは自分できめたんだろ」


 クウヤは冷たく言い放った。


「クウヤ!そんな言い方ないよ!」


 ロッドが声を荒げた。


「いいよ。ロッド。バカには何言っても無駄だ」


 ビゼーはロッドを宥めた。その後クウヤに言った。


「勝手にしろ」


 ビゼーは部屋を出て行った。


「……」


 クウヤは何も言わなかった。

 ロッドはビゼーを追って部屋を出た。


「あの……」


 ミクリがクウヤに話しかけた。


「本当に殺したいなんて思ってるの?」


「あたりまえだろ。オレから父ちゃんと母ちゃんをうばったんだ。オレがアイツのいのちをうばってなにがわるい?」


 もうなにを言われても靡かないという頑固さをひしひしと感じた。


「そういうこと言う人だと思わなかった……」


 そう言い残してミクリも部屋を出た。

 部屋に残ったのはクウヤと二人のアダン。

 クウヤはエストレに言った。


「アダン。オレにもっと能力をおしえてくれ!つよくなりたい!」


 アダンは目を合わせないまま答えた。というより質問した。


「お前はミロク・インディュラを殺すために旅してたのか?」


「ころすためじゃないけど、見つけてふくしゅうはするつもりだった」


「今の気持ちは?奴をどうしたい?」


「たたきのめしてやりたい。父ちゃんと母ちゃんをころしたこと、ぜったいにこうかいさせてやる」


 アダン(エ)は少し沈黙した後、クウヤと目を合わせて言った。


「決まりだ」


「いいのか?」


「断固拒否する!」


「えっ?」


「能力は人を殺めるための力じゃない。俺は非道徳的な戯言に付き合ってやれるほど暇じゃない。自分の力で何とかしろ」


 アダン(エ)も部屋を出た。


「みんないっちゃったぞ?」


 まだアダン(バ)は残っていた。


「おまえもやめろって言うのか?」


 クウヤは背中を向けてアダン(バ)に聞いた。


「うん。だってひところすのってよくないじゃん?」


 アダン(バ)はいつもと変わらないトーンで言った。

 少し沈黙してクウヤが言った。


「一人にさせてくれないか?」


「わかった」


 アダン(バ)も出て行った。

 クウヤは誰もいなくなった後で決闘状の対戦者の欄に自分の情報を埋めていった。

 書き終わるとすぐに眠りについた。

 

 この日、仲間は誰一人として部屋に戻ってこなかった。

次回 邂逅 参

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