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新しい任務?

今回短めです!

「ぎゃー!ついに!ついに認めてしまったー!」


カトリーナの部屋でのおしゃべりが終わりリディアは自分の部屋でのたうち回っていた。


ルークへの想いーー

それは、一度言葉にすると、しっくりきた。


今までのルークとのやりとりを思い出す。

初めて出会った線の細い少年との魔法談義。

学園で出会ってからの魔法談義。


(……あれ?魔法談義しかしてない?)


一度首を傾げてから、それを否定するようにフルフルと首を振った。

試験勉強では、自分のダンスの練習に付き合ってくれた。リディアが楽しめるよう、工夫をして、自分だって忙しいのに時間を割いてくれた。ナイル国でも、リディアが言語に困らないように配慮してくれて、司教との戦いでは、魔力共鳴をしてくれてーー


思い出すほど痛感する。

自分がどれだけ、ルークに助けられているか。そして、それが悔しかった。自分だって、ルークに頼られる存在になりたいのに、その道のりが見えない。


(フィリアって人には、ルークも弱音吐いたりするのかな)


そう思うとリディアの胸が痛んだ。

フィリアの外見は、特徴だけを言えば、リディアに似ていた。

茶色の髪、緑色の瞳。

なのに、雰囲気が全然違う。フィリアは、女性らしく品があった。リディアを見た時も、楽しそうに微笑んでおり“余裕“のある女性なんだと思う。


(あの人は、ルークのこと好きなのかな)


一瞬頭によぎったことを、即座に打ち消す。

何でもかんでも恋愛と結びつけて考えるような女を、リディアは軽蔑している。

自分の頬を両手で叩き、大きな独り言を呟いた。


「そんなこと考えない!まずは、カトリーナとの任務のことを考えよう!」


リディアは、カトリーナから渡された書類の束に、手を伸ばした。


******


「ねぇ、私があなたたちを部屋に招いたのは、リディアの恋愛話をするためじゃないのよ」


リディアが自分の恋心を認め、場の雰囲気が和やかになったのも束の間、カトリーナは、その空気を打ち消すように話題を変えた。


「別に私からルークの話をしたわけじゃないんですけど!?二人から根掘り葉掘り聞いておいて、それはなくない!?」


セレナは悪戯めいた笑いを浮かべながらも、華麗にリディアをスルーして「そうでした!相談があると言ってましたね、どうされました?」と優雅にお茶を飲みながら確認していく。

カトリーナが思い詰めた表情を浮かべた後、言った内容に、リディアは瞠目した。


「あなたたち、魔獣討伐に興味ある?」


カトリーナは、模範生候補者となり、さまざまな課題をこなしている。

その課題のなかに、遠方での任務があり、カトリーナに割り振られたのが「魔獣討伐」らしい。


「任務遂行のために、候補者は最大3名、学園から同行者を募れるの。私は……レオナルド、リディア、セレナの3人に、ついてきてほしいと思っている。今回の討伐対象は、中型とはいえ油断できない魔獣よ。生半可な覚悟では対処できないーーそれでも、あなたたちについてきてほしい……お願いできるかしら?」


不安そうに2人を見るカトリーナを見て、リディアは胸打たれた。

自分がカトリーナに選んでもらえたことが嬉しかった。


「もちろん!やるよ!」


リディアの快諾と一転、セレナの表情は暗かった。


「…….少し考えさせてください。私の魔法の実力がでは、足を引っ張ってしまいます」

「そんな事ないわ、セレナ」


カトリーナはセレナの手をぎゅっと握った。


「あなたの経験に基づく豊富な知識。ナイル国でのあなたの合理的で無駄のない判断。仲間を思い遣った発言の数々。今回の任務はきっと厳しいものになる。だからセレナには、魔法の力だけではなく、それ以外の力で、私を支えてほしいの」


その言葉にリディアとセレナは驚く。

カトリーナは、良くも悪くも自分に絶対的な自信がある。

もちろんそれは、彼女の努力と実力に裏打ちされたものだが、そんなカトリーナが、自分を支えてほしい、と言ったことが意外だった。


「……わかりました、前向きに検討します」

「ありがとう……リディア、引き受けてくれたことは嬉しいけど、あなたも冷静に考えてちょうだい。これが、今回の任務に関する資料よ」


そう言って、カトリーナが手渡してきた資料は、ずっしりと重かった。


******


「綺麗……」


カトリーナに渡された資料の1ページ目には、今回の討伐対象の挿絵が載っている。

雪山の中に佇む魔獣。

牙は鋭く、雪に溶け込むような白銀の毛並み、ツンと上向いている三角形の耳、瞳は淡い氷青色に光り、闇夜でも獲物を捕らえそうだ。


「なになに……『魔獣グレイシャルは、影のように素早く動き、氷の爪で獲物の命を奪う。一度傷をつけられると、そこから凍傷が広がり、数刻で死にいたる』……ってめっちゃ危険じゃない!こんなの学生に討伐させるわけ!?」


美しい見た目に反して、やはり「魔獣」。その能力は恐ろしかった。

ただ、このグレイシャルの毛皮は保温性に優れ、見た目も美しいことから、非常に高価なものらしい。


「なるほどねー。得意魔法的に、レオナルドが索敵して、私が足止め、カトリーナが仕留めるのかな?セレナは非常時のヒーラーってところね」


魔獣との戦いをイメージすると、ワクワクする。

さらに、カトリーナに言われたことを思い出す。


『レオナルドとの勉強会もいいけど、ルーク様と対等になりたいなら、この任務を足がかりに自分の実力を示しなさいな』


不器用なカトリーナらしい言い方に、リディアは笑ってしまう。


(励ますなら、もっとわかりやすく言いなさいよ、ツンデレめ)


言葉にはしないが、レオナルドと根を詰めて勉強しているリディアに対し、カトリーナも思うところがあったのだろう。書類を机に放り投げ、リディアはベッドに身を投げた。


ルークへの恋心を認めたら、気持ちが少し楽になった。

これからも、レオナルドとの勉強は続ける。ルークと対等になれるように、足りないところは学んでいかないといけない。

でも、一般教養を中心としたレオナルドとの勉強会は、本当に申し訳ないのだけど、実はつまらないのだ。

やはり、リディアにとっては、魔法と関連するものの方がモチベーションが上がる。


(カトリーナとの任務をしっかりこなして、実力を示して、いつかルークの隣に堂々と立つんだ!)


自分の興味、やりたいこと、やらなくてはいけないこと。

全てが合致し、久々にリディアはやる気に満ち溢れていた。


薄情なもので、自分の恋心に気づき、魔法に夢中なリディアは、一種満足状態になって、ルークの元を泣きそうになって走り去ったことも、レオナルドに慰められ、悲しい気持ちになったことも、頭からすっかり抜けていたのだった……。

ちなみにカトリーナの部屋にはナイル国で買ったお土産品がこっそり飾られてます。

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