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セカンドガールの新しい出会い

2025.6.21 改行などマイナーな編集してます。

お菓子パーティーを楽しんだリディアは、心地よい疲れを感じながらベッドに横たわり、数日ぶりの安らかな眠りについた。

久々に昔話をしたからだろうかーーその夜、彼女の夢に現れたのは、かつて出会った旅の魔法使い親子。幼い頃、出会ったばかりの彼らと共に過ごした思い出が鮮やかに蘇る。

特にリディアにとって、息子の方は、初めて魔法のことを話せる同年代の友達で、とても楽しかったのを覚えている。


「リディアちゃんは、どんな魔法使いになりたいの?」

「私はみんなに魔法を楽しんでもらえるような魔法使いになりたい!みんなを幸せにしたいの!」


あの親子は今、どこで何をしているのだろう。今でも、旅を続けているのだろうか。

あの時出会った大人の魔法使い。

泣いていた自分に話しかけ、光り輝く魔法を見せてくれた。輝く光の中、ヒラヒラと舞う蝶や歌を歌う小鳥を出してくれ、リディアの涙は気づいたら止まっていた。

スラリとした体躯に、まるで光を集めたかのように輝く柔らかい金髪、透き通った琥珀色の瞳が素敵で、自分の父親とほぼ同年代だったろうが、リディアの淡い初恋だった。


夢に出てきてくれた彼らのおかげで、温かい気持ちのままリディアは学園に向かった。


嫌がらせは、悪化していた。

机の上に積まれたゴミ、ノートへの落書き、机の中にあるネバネバした謎の液体。


しかし、心が軽くなっていたリディアにとって、それらは特に気にならなかった。

むしろ、魔法実技の授業中に、来週演習として2対2の模擬戦をすることが発表され、さらにその相手がカトリーナとレオナルドの二人組と分かり気持ちが上がった。ペアのクラスメイト男子と、どのように連携しよう?どうすれば勝てる?

考えることがありすぎて、正直嫌がらせどころではなく、鼻歌まで歌って機嫌良く過ごしていた。


多分、その態度が、嫌がらせをしてきた人間を刺激してしまった。


放課後、ペアの子と作戦会議をした後、寮へ戻ろうと中庭を歩いていたその時、不意に足元に蔦のようなものが絡みつき、リディアはバランスを崩して転んだ。見計らったかのように頭上から大量の水が降り注ぎ、全身がびしょ濡れになる。


リディアは驚きのあまり言葉を失い、辺りを見回したが、誰もいなかった。いじめが本格化し始めたことに気づいたリディアは、馬鹿馬鹿しくなってきた。

「やるなら正々堂々やりなさいよ…」ため息をつきながら、風魔法で自分の服を乾かす。

リディアは入学したての頃にも、貴族の生徒たちから数々の嫌がらせを受けてきた。今更水を被るくらい、なんてことないのである。

あの頃は、強い意志で耐え抜き、やがて魔法の実力を認められて嫌がらせは終わった。おそらく、レオナルドに気に入られたことで、周囲に一目置かれたのも大きかっただろう。

今回も決して負けないと、リディアは気持ちを新たにした。


ほぼ乾ききったその時、不意に後ろから声がかかった。

リディアは一瞬、レオナルドを思い浮かべ、少し期待して振り返ったが、そこに立っていたのは日焼けした健康的な青年だった。


「確かに今は温かいけど…1人で水遊びは寂しくないか?」


彼の冗談に、リディアは驚きつつも言葉を失った。

服が不自然に乾いているのに、周囲はビチャビチャ。

彼はリディアが遊んでいたと誤解しているようだった。


「違うわよ!これは...…」


リディアは説明しようとするものの、水をかけられたとも言えず、言葉に詰まってしまう。


青年は「ふーん、まぁいいけど」と軽く笑いながら、手から暖かい光を放ち、リディアの体や服、さらに濡れた地面まで温めて乾かしていった。


「......すごいね、ありがとう。あなたは?」

「アレ?俺って割と有名人だと思ってたんだけど…...優等生はそんなこと興味ないか…...3年のルークだ」


ルークは気さくに答え「水遊びもほどほどにな、リディア」と軽く冗談を言って立ち去った。

リディアは、彼が自分の名前を知っていたことに少し驚きながらも、自分もそれなりに有名だしな、と納得した。


ルークが去った後、リディアが服を整えていると、遠くから誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。振り向くと、今度は息を切らしながらこちらに向かってくるレオナルドが目に入る。


「リディア、大丈夫かい?」


レオナルドが心配そうに駆け寄ると、彼女の姿を見て首を傾げた。


「校舎の上から君が濡れているのを見たんだ。犯人を探しながらも急いで来たつもりなんだけど…随分乾くのが早いね?」

「ありがとう。ちょっと色々あって…それより、犯人って?」

「水をかけられたんだろう?校舎を探したが怪しい人物はいなかったよ」


レオナルドが駆けつけてくれたことに、リディアは少し驚きながらも微笑んだ。


「大丈夫よ、レオナルド。もうほとんど乾いたし、問題なし!」


それでもレオナルドは心配そうにリディアを見つめ、先ほどまで濡れていた彼女の服の具合を確認するように軽く目を細めた。


「何かあったらすぐに言ってくれ。寮まで送るよ」


リディアは少し戸惑いつつも、その申し出を断ることなく、彼の隣を歩き出した。しばらく歩いた後、寮の入り口に着いたところで、リディアはふとレオナルドの顔を見上げ、彼に挑戦的な微笑みを浮かべた。


「来週の模擬戦、楽しみにしてるから。全力で戦って、あなたたちに勝つわ!」


レオナルドは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑みを返して頷いた。


「いつもなら、頑張らなくていいよ、と言うところだがそうもいかないね。望むところだ、リディア。僕も全力を尽くすよ」


リディアは満足げに頷き、自室に戻る。

部屋に入ってからふと、先ほどの出来事について考え込んだ。


ーーなぜレオナルドは、自分が濡れていたのを誰かの仕業だと確信を持ったかのように言ったのだろうか?


『1人で水遊びは寂しくないか?』


ルークの声が、こだまのように聞こえた気がした。


ーーーーーー


ーー時はリディアが水を被った時に遡る。


レオナルドはカトリーナと来週の模擬戦での段取りを確認した後、校舎を歩いていた。

カトリーナと寮まで戻ろうとしたが「シルヴィアとエレノアと一緒に帰る約束をしているの」と断られてしまったのだ。せっかくなので、もう少し図書館で勉強しようと思っていると、ちょうどカトリーナの探していた2人を見つける。

声をかけようとしたが、2人が嬉しそうに手を取り合っていたので、水を刺すのも悪いと思いそっと近づいた。


「今の、いい感じだったわよね!」

「いい気味ね、全身水びだしよ」

「水魔法をこれみよがしに使うほど水と仲良しなようですし、きっと本人も喜んでるわよ」

「あら?でも平民が仲良しなのは泥水じゃなくて?」


2人は話に夢中で、レオナルドには気づかない。「…...水?」何の話かと、下を見れば、リディアが全身濡れている。


「君たち、ちょっといいかな?」

「レオナルド様…」


2人は一瞬驚いた顔を見せたが、レオナルドの普段とは異なる様子に無言で彼の指示に従った。


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