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契約、花言葉

「で、あんたはなんでまだ残っているんだ?ここはお嬢のタウンハウスだぞ、帰れ」


クランがじろりのロニを睨む。ロニは、タウンハウスにいる一人一人の顔をじっと見つめ、重々しい声で言った。


「手を組みませんか?」


ロニは続ける。


「すでに予想が立っているのでしょう?今回、闇魔法入りのハーツは確かに、ソラキ商会によって市民に広がりました。では、その闇魔法はどこからやってきた?教会は、我々議会とソラキ商会が魔法使いを手引きしたというが、そんなことは決してあり得ない!とすれば、誰だ?……教会しかない」

「でも……教会がそんなことするメリットがないじゃない」


先ほどからみんなで議論していたことをリディアがつぶやくと、他のメンバーたちは目を見合わせる。


誰もが、思うことがあった。ルークが口を開き、クラン、ロニ、レオナルドも続ける。


「自作自演、だ。闇魔法で人々を苦しめたあと、女神の力、と言って光魔法で治療し、女神信仰を強固なものにする。最も簡単なやり方だ」

「教会は信者が減って、寄付金もかなり減っていたからな。慈善活動だって、建前上あいつらがやっているが、財源は、税金とソラキ商会の寄付の方が、あいつらからの支援より多いくらいだ」

「それに伴って、教会の政治への干渉力も減っていました。最近では、国政はほぼ議会が仕切っており、それに教会は不満な様子でした」


全員の意見が、ピタリと一致する。


「教会は.自分たちの信者を増やしつつ、邪魔な商会、議会の信用を下げたかった。自分たちの力に気づく可能性のある魔法使いも排除したいなか、捨て駒であるドナルドとカトリーナ嬢が暴れて、魔法使いへの恐れの感情も高まった。仕掛けるなら今だと思ったわけだ」

「だけど、証拠がない」

「そうです。だから、手を組みませんか?あいにく、議会のメンバーは魔法については理解できていない。だから、あなたたちに、教会が闇魔法を本当に使っているのか、確認してほしいのです」


ロニはそこで、ルークを見る。


「ルーク殿。あなたは、ハーツが中毒の原因であることを我々に教えてくれました。だけど、魔法については触れなかった。なぜですか?」


それは、糾弾するような視線だったが、ルークも堂々と答える。


「事実確認が半端な状態で言えば、今の教会のような判断を議会がして、政治的な混乱が発生すると思ったからです。魔法について、あなた方は理解されていない。こちらでしっかりと確認を取ってからの報告が、両国の関係のためにも最善と判断しました」


ロニとルークの視線がぶつかり、ロニが肩の力を抜く。


「その判断が、何より私があなた方と手を組みたい理由です。思慮深く、そして論理的に考えてくださる。安心して一緒に仕事ができます」


ロニがルークに手を差し出し、2人は熱い握手を交わす。


「契約成立ですね」

「ええ、よろしくお願いします」


その2人の手に、クランが自分の掌を重ねた。


「俺もいく」

「「はい?」」

「俺は、お嬢に教会の真相を突き止めるように頼まれたんだ。それに、俺は昔孤児院にいて、教会にも結構出入りしていた。腕っ節もあるし、役に立つと思うぜ」


クランの自己アピールにルークとロニは顔を見合わせ、頷いた。


「そしたら、三人でいくか」

「待って」


リディアがそっと立ち上がる。


「……私も、いく。私が行くべきだよ」


全員の視線が、リディアに向けられた。普段の溌剌とした姿はなりを顰め、どこか焦点の定まらない目。そこには、今まで感じていたリディアの“力強さ“が欠けていた。


「……リディア、なんでそう思うんだ?」


ルークのその問いかけには、怒りも苛立ちもなかった。ただ、冷静に確認していく。そしてその問いに、リディアは答えられない。唇をわずかに噛んで、立ち尽くしていた。


「だって、セレナと約束した。この国を守るって……なのに全然できていない。それに、カトリーナだって捕まって……私だけ、ここでのうのうとしてられないよ……」


それはなんのロジックもない、ただのリディアの想いだった。

弱々しい声で言うリディアの頭を、ルークがそっと撫でる。


「気持ちはわかった。でも、今のお前は連れてけない、連れてっても、きっと冷静な判断はできない……わかるな?」


リディアは言い返そうとして、言葉が詰まった。

自分でも、それが事実だとわかっていたーーそして、怖かった。また、自分が何か判断を誤って、仲間を失うことが。クランも、リディアを励ますように続ける。


「お嬢も、あんたに無事でいて欲しいって願ってた。教会とか闇魔法のことは、こっちでどうにかしとくから、あんたはここでゆっくり休め……お嬢だって、きっとそういうよ」

「うん……わかった」


リディアは涙を拭きながら、頷く。


「レオナルド」

「はい」


ルークに呼びかけられて、レオナルドは返事をする。


「お前だって行きたいんだろう?それはわかる。だけど、ここでリディアを守ってくれないか」

「ルーク殿が残り、僕が教会、ではだめなのですか?正直、闇魔法との対峙となったら……あなたより、僕の方が向いている」


ルークとレオナルドの間に緊張が走る。言葉にはしなかったが、レオナルドは暗に“自分の方がルークより魔法使いとして格上“と言いたかったし、ルークもそれはわかっていた。だが、それを否定したのは、ロニだった。


「ダメです、議会が手を組みたいのはあなたではなくルーク殿です……レオナルド殿、あなたがとても優秀な方であることは知っています……それでも、私はあなたをまだ信頼できない」

「……わかりました」


ルークとクランが身支度を終え、ロニと出発する。


「じゃあリディア、レオナルド。行ってくるから。民衆が襲ってくるかもしれないからくれぐれも気をつけろ」


ルークの言葉にリディアは頷くが、返事はできなかった。クランが、面倒臭い、という顔をしながらも、リディアに言葉をかける。


「おい、いつまでもクヨクヨしてんじゃねぇよ。あんたが落ち込んでるとお嬢が悲しむだろうが」

「だって……」

「……あんたのその髪についている花の花言葉、知っているか?」

「え?」


リディアは自分の頭についている花をそっと撫でる。セレナが、くれた花。


「信頼、希望の光、だよ」


それは、セレナからリディアへの、温かいメッセージだった。


クランは花に対して興味はないけど、セレナが花好きなので、セレナのために花のお勉強してる。だから、花言葉とかも知ってます。

活動報告に、色々小話なども載せてるので、よければそちらもご覧ください〜

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