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セカンドガールの私が学園のプリンスをざまぁします!  作者: 白波美夜
第一章 セカンドガール脱却編
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セカンドガールの弱み

誤字脱字修正しました

ルークはリディアに声をかけると、窓から身を乗り出しそのまま中庭にジャンプする。


「危ない!!」


リディアが思わず声をかけると、ルークは足元に風を発生させ、そっとリディアの隣にくる。


「…すごい」


魔法は手元で発生するのが基本だ。でも、ルークはおそらく足から魔法を発現させた。


「?お前だって、模擬戦でカトリーナの竜巻から逃げるとき、足元から魔法出しただろう」


その言葉にリディアは目を瞬かせる。


「…気づいてたの?」

「当たり前だろうー?俺は模範生だぜ」


足元からの魔法は、リディアが最近ようやく使えるようになった()()()()()だった。

手元からの魔法だけじゃつまらない、と思いつきで練習を始めたが、思ったより難しく、1年がかりでようやく覚束ないながらに使えるようになったのだ。


「…なんだか悔しい」

「学園では確かに習わないけど、国境付近の防衛とかでは足に魔法陣引いて瞬足になったりとか、割とメジャーだからな。使える魔法使いは結構多いぜ」

「え!?そうなの!?」


…使えるようになったとき、自分だけの技みたいでかっこいいと思ったのに。

リディアがそっと落ち込んでいると、思考に想像がついたのだろう。ルークがくっと笑っている。


「…何よ」

「いや、魔法が本当に好きなんだな、と思ってさ」


ルークはそのままリディアの横に腰を下ろすと前のめりでリディアに質問をする。


「なぁ、模擬戦のあの最後に出した鳥、あれなんなんだ?」


リディアは不意をつかれた。あの技は失敗して、周りから試合中失笑を買っていたの知っている。


「あれは咄嗟に思いついて…多分、無意識に闇の棘を打ち消そうと思って鳥の形にしたんだと思う。ほら、鳥って飛ぶの早いし、勢いよく飛んでいけば、それもいい感じになるかなーって」

「水と光を組み合わせたのは?」

「光で闇を喰らうイメージ?でも、私の光だけじゃレオナルドの闇に勝てる気がしなくて…水で浄化したいなって思ったの」


ルークはそれを聞くなり、盛大に噴き出した。


「はははっ!すげー非合理的!なんだそりゃ」

「なら、あなたならどうするのよ!?」

「オレ?俺はわりと肉弾戦も得意だからな。闇の棘は岩か何かで防ぐか攻撃遅くして、その間に加速魔法と身体強化魔法で相手の懐に入って肉弾戦に持ち込むかなー」


彼の率直な笑い声にリディアはむっとするも、次に語られた対策には思わず唸ってしまう。


「…確かに、それ良さそうね」

「まぁでも、俺はリディアのそういう自由な発想の魔法好きだよ。見てて楽しい」


ルークの軽口に、レオナルドと話してささくれ立ったリディアの気持ちは、気付けば和らいでいた。


その後も、リディアとルークは模擬戦の振り返りをしていた。

リディアが使った魔法に対して、ルークなりの見解を述べ、そこにリディアが意見する。

それは、友人と魔法談義をあまりしたことがないリディアにとって、楽しい時間だった。



「…さて、と。今日ここにきたのは、お前と魔法談義するためじゃないんだよな」


話を区切るようにルークが言い、リディアは首を傾げる。

すると、今までの和やかな雰囲気が一転、ルークが真剣な顔をする。


「お前、セレナと仲良いよな?」

「え、うん。…何?セレナに惚れた?協力しないよ?セレナにはきっともっといい人いるし」


わざとリディアがルークを茶化すも、ルークはその軽口には乗ってくれない。


「模擬戦の日の朝、庭園でセレナが攻撃を受けていた」

「…なんですって?」

「俺が助けなかったら、多分大怪我だったと思う」


話の深刻さにリディアも真剣になる。ルークの話を聞く限り、かなり悪意のある所業をセレナは受けたようだ。


「…なんでセレナがそんな目に」


その言葉にルークは少し躊躇い、ベンチから腰をあげ、リディアの前に跪き目線を合わせる。


「…残酷なことを言う。セレナはおそらく、お前と仲がいいせいで襲われた」

「…え?」

「お前、嫌がらせ受けてるだろう?でも、全然へこたれない。どうにかしたくても、お前は模擬戦に選出されるくらい優秀な魔法使いだ、並の使い手じゃ返り討ちになる。でも、お前と仲のいいセレナは違うーー彼女はまだ植物魔法以外に疎いし、お前の弱みになる、そう思う連中がいてもおかしくない」

「弱み、って……」


リディアの心に、チクリと痛みが走る。


「...どうして私が原因だって決めつけるのよ」


リディアは反射的に反論した。


「セレナだって、レオナルドのサードガールと言われているわ。それだけで妬まれる理由になるじゃない」

「うん、まあ、それもあるかもな」


ルークはあっさりと認めた。


「でもな、それだけで身の危険が迫るほどの嫌がらせ受けると本当に思うのか?」

「それは......」


リディアは言葉を失う。

そうだ、きっとそれだけの理由で、セレナが狙われることはない。

リディアとは違い、セレナは穏やかで優しい性格だ。いつだって笑顔を絶やさず、自分やカトリーナのような気難しい人間の気持ちもときほぐす魅力がある。

リディアが初めてセレナに会った時だって、セレナは友人に囲まれ、楽しそうにみんなと笑っていた。

セレナは編入した当初から、みんなに馴染んでいた。


...自分の存在が、セレナを危険にさらしている。

そんなこと、考えたくもなかった。


「……そんなこと、あるわけない」


それでも否定したくて、リディアは小さく呟いた。

だが、心のどこかでルークの言葉が真実であると感じている自分がいる。


「ならいいけどな。あの日、セレナが怪我してたら、騒ぎにはなったけど、模擬戦は予定通り行われただろう。そしたら、お前はきっと試合どころじゃなかっただろうよ」


その言葉にリディアははっとする。

模擬戦前日に、鞄に入っていた手紙。


ーー模擬戦を辞退しろ、でないと後悔することになる


後悔することになる、はまさか、セレナを傷つけるということを意味してたの?


リディアの胸に、怒りが湧き上がった。誰がこんな卑劣なことをしたのか。

自分相手ならまだいい。でも、セレナに手を出し、彼女を道具のように利用するような相手を、絶対に許しておけない。


「……ふざけんな!」


怒りに我を忘れ立ち上がると、ルークがリディアを見上げてため息をつく。


「おーい、待て待て」


リディアがギッとルークを睨みつけると、ルークは苦笑しながら肩をすくめていた。


「そりゃ怒りたくなるのも分かるけどさ、それでいいのか?」

「え?……だって、セレナをくだらない理由で狙う奴がいるのよ?許せるわけない!」

「うん、それは分かる。分かるけどさ」


ルークも立ち上がり、少し大げさな仕草で首を傾げる。


「その怒りをどうするつもり?犯人に心当たりあるわけ?あったとして、そいつを殴りに行く気か?」

「そういうわけじゃないけど……でも!」

「でもじゃないって。今のお前は炎に風を仰いでるようなもんだ」

「えっ?」


あまりの比喩にリディアは呆気に取られる。


「風を仰いだ結果、火事になったり周囲に被害広がったりするだろう。それと一緒。お前が騒げば騒ぐだけ、犯人は喜ぶし、大きな騒ぎになるんじゃないか」


リディアは不満そうに眉をひそめた。


「じゃあ私は、その炎をじっと耐えて見てないといけないわけ?」

「まあ、ちょっと落ち着けって。俺が言いたいのはさ、その炎の被害に遭った人間とまずは話すべきってこと」


ルークの声は穏やかだったが、その言葉はリディアの胸を刺すようだった。


「…それってセレナのこと?」


ルークはリディアのその回答に安心したように笑う。


「そう!まずセレナと話して、セレナの気持ち聞いてやれば?」


リディアは言葉が出なかった。セレナに向き合うことを考えていなかった自分に気づく。


「まあ、分かるよ。怒りの方が先にくるもんな。でもさ、セレナの今の気持ち考えて行動しようとか考えてるか?」


リディアは答えられなかった。

セレナとの今までのやりとりを思い出す。


自分がイライラしていたとき、セレナはそこには触れずお菓子を一緒に食べようと言ってくれた。

模擬戦前は、手作りのお守りを作ってくれた。

模擬戦当日だってーー攻撃を受けたはずなのに、怖かったはずなのに、そんなこと表に出さず、リディアの応援をしてくれた。


セレナは、いつだってリディアのことを思いやってくれていた。


――じゃあ私は?


「……私、セレナが嫌がらせされてるなんて、気づきもしなかった」


ようやく口を開いたリディアの声は小さく、震えていた。


「そうだろ?」


ルークは軽くうなずきながら、リディアの肩をぽんと叩いた。


「お前に今必要なのは、セレナと向き合うこと。そっから始めりゃいいんじゃないの?」


リディアはしばらく黙っていたが、やがて深く息を吐いた。


「……そうね」

「魔法が大好きなのはいいけどさ。大事な人間は気にかけろ、大切にしろよ」


そういうと、言いたいことは全部言い終えた、とばかりにルークは満足げに笑う。


「んじゃま、謹慎言い渡された問題児は、さっさと寮に戻れー。そんで、セレナが帰ってきたらきっちり話してさっさと寝ろ」


そう言って、ルークはリディアに手を振りながら立ち去っていく。

ルークを見送りながら、リディアは心の中で決意を固めた。

ーーセレナと話そう。嫌がらせをどうするか、なんてそれから考えればいい。

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