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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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勘違い×勘違い

談話室で、やり残した公務を進めながら、ふとリュークリオンはミナミの言葉を思い出した。


──”私がアンジェリカ様なら良かったのに”


違和感?とでもいうだろうか。

彼女(ミナミ)は自分をしっかり持っている女性だ。

周りがどう言おうと”自分は自分”と、しっかりとした軸を持っている。

だから、そんなミナミがアンジェリカを羨ましがるなんて、違和感が拭えないのだ。


──まあ、彼女も人間だ。他の者が羨ましいと感じることもあるだろう。


だが、あの時彼女が一瞬見せたあの表情は……。


「どうしたの?手が止まってるよ。考え事?」

パトリオットが尋ねる。


「まあ、ちょっと、気になることというか……。ある令嬢が、”私がアンジェリカ様だったら良かったのに”と言ったんだが……いまいちその発言とその令嬢が結びつかなくてな……」


リュークリオンはなんとなくミナミという名前を伏せて話した。


「ええ?!そのご令嬢大胆だね!リュークに面と向かってそんな事言ったの??」

「は?どこが大胆なんだ」

「何って、そりゃ……リュークリオン(皇太子)アンジェリカ(婚約者)になりたいってことだよ!!やるね~。かなりの野心家かな?!」

「いやいや、そんなタイプでは……!むしろ権力などにはまったく興味がなさそうだぞ」

ありえない!というように、必死にかばう様子をみせるリュークリオンを見て、ピンときたパトリオットは少し揺さぶってやろうと思った。

「だったら、単純にリュークの事が好きだってことじゃないの?」

「――なっ!!」


――そういう事なのか?!ミナミが私を?!


心臓の音が途端、うるさくなった。


「心当たりない?他にもその子からアプローチされてたりしていない?」

そう言われて、ミナミとのこれまでの出来事を思い返す。

――が、特にアプローチの様な事はなかったと振り返る。


「いや……そんな態度は」


「入るよ~」

ガチャっ。

そこにセシリオがやって来る。


「おやおや、セシリオさん、セルジュールさんと一緒だったのですか?仲睦まじいようでなによりです~」

パトリオットはからかうようにセシリオに言う。

「パトリオットはもう少し、真面目に婚約者に接した方がいいと思うけど」

「なんだよ、自分がちょっと上手くいってるからって、もう僕に説教??勘弁してよ~。大体、この前まで、タクマに嫉妬してモヤモヤしてたくせに!」

セシリオは、なんで知っているんだ?という表情をしてパトリオットを見る。

「バレバレだったからね~。いつもと態度が違ったの。すぐわかったよ」


――そうか?


まったく気づいていなかったリュークリオンだった。


「タクマの事は、もう嫉妬しないさ。ただ彼が面倒見がいいってだけの事のようだからね。それに……タクマの想い人はミナミさんだろ?」


「はぁ?違うだろう!どう考えてもタクマはアンジーの事が……」

見当違いの回答に思わず反論しようとするパトリオットだが、そこまで言って、ハッとする。

周知の事実だとしても、実際に口にするのでは重みが違う。

仮にもアンジェリカは、今はまだ皇太子の婚約者なのだ。

パトリオットは口ごもる。


「セルジュールが言ってたんだ。間違いないって。それでミナミさんもタクマの事を好いているらしいんだけど、義兄妹ということを気にしているみたいだって……」

「いやいや、ありえないでしょう~」

そう言いながら、パトリオットはチラッとリュークリオンを見るが、リュークリオンはすでに上の空だった。


「なんだい?パトリオットはセルジュールの言う事が信じられないと言うのかい?!」

セシリオはムッとしたようにパトリオットを責め立てる。

「いや……そういう訳ではないけどさ……その仮説には根拠が……」



「悪い、用を思い出したから少し図書館の方へ行ってくる」

リュークリオンは、そう言って立ち上がると、談話室を出て行った。

「待ってよ!リューク!」

引き留めるパトリオットの声は全く耳に入っていない様だった。


パトリオットはセシリオを睨みつける。

「もう!君は恋愛ごとには鈍感なんだから、人の色恋に首を突っ込んじゃダメでしょ!」

「なっなんなんだよ!急に!そんなに怒ることかい??」

セシリオは、タクマとミナミの恋の話をしただけで、なぜこんなに怒られるのか全く分からなかった。


――”ミナミさんもタクマの事を好いている”


さっきからずっと、セシリオのこの言葉がループしていた。


――私は、とんだ勘違いをするところだった。


リュークは改めて深呼吸する。


落ち着け。

よくよく考えたらわかることではないか。

いつも傍にいて、私がミナミを偏見の目で見ていた時も、変わらずミナミを理解し、支えていた。

素直で、良識もあり、誰にでも気遣いができる。

顔だって悪くない。


あのアンジーでさえ惚れてしまうのだ。

いつもそばにいるミナミが惚れないわけがない。


そこでリュークリオンはハッとする。


”私がアンジェリカ様だったら”


――この言葉は私がアンジェリカ様(タクマの思い人)だったらの意味なのではないだろうか。


タクマのアンジーへの気持ちは私でさえ気づいたのだ。

一番近くにいるミナミが気づかないわけがない。


「ミナミ……だからあんなにも切ない表情を浮かべていたのか?」


あの時のミナミの表情の意味を知って、胸が苦しくなるリュークリオンだった。


そして……。


ミナミが自分の事を好きかもしれないと思った瞬間、なぜあんなに胸が高鳴ったのか。

勘違いだとわかった瞬間、恥ずかしさと同時に押し寄せた絶望にも似た苦しさ。


なぜ、こんなに胸が苦しいのだろう。


アンジーがタクマに好意を寄せていると気づいた時ですら、こんな思いはしなかったのに。


リュークリオンは最悪なタイミングで自分の思いを自覚するのだった。

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