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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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学園祭5 終わった。

――嫌われた。

あの人に嫌われたら自分はどうやって生きて行けばいいのか。

前世からの推しだったのに。

初めて見た時から、好きだったのに。

初めて話してみて、あなたの優しさに触れて、やっぱり好きだと確信したのに。


――終わったわ。何もかも。


アンジェリカは涙が溢れてきた。


「ふっう…ぐすっ……」


「いた!こんなところに……泣いているのですか?!」

振り向くとそこにタクマが居た。


「え?!なっなんで……」

「いや、なんでって……あんな状態で走り去ってくアンジェリカ様見たら、そりゃ追いかけるでしょ!!」


――私に失望したのではなくて?

アンジェリカは理解できなかった。

なぜ、タクマがこんな失態を見せた私を追って来てくれたのか。


「……セルジュール様に追うようにでも言われた?」

「え?違いますよ。俺は単にアンジェリカ様が心配だったから。それ以外に理由はありませんよ」

そう言ってにっこりと微笑むタクマはいつもの優しい笑顔だった。


二人は近くのベンチに腰を掛けた。

「……少し落ち着きました?」

「ええ……まあ」

アンジェリカはゆっくりと口を開く。

否定される前に自分から言った方が傷は浅い。


「最低よね……せっかくセルジュール様が謝って来たのに突っぱねるような事を言って。相手が誠心誠意謝って来たのだから、謝罪を受け入れるべきだったのに」

セルジュールの誠意は伝わった。

だからこそ、余計腹立たしかった。

その素直さが憎かった。

自分がいかに心が狭く、嫉妬にまみれた人間かを思い知らされるようだった。


「そうですか?」

「え?」

「ずっと、いやがらせ?を受けていたのでしょう?そんな1回謝ったからって許せないですよ。当然です」


タクマの意外な答えにアンジェリカはキョトンとしてしまう。


「いやいや、性格悪いですよね?!私!!特に最後の方なんて根拠もない話で一方的に責め立てて……」

「そうですか?でもセルジュール様は今までアンジェリカ様にそれだけの事をしてきたのでしょう??許さなきゃいけないなんてことはありませんよ。そんなのアンジェリカ様の自由でしょ」

タクマはにっこりと微笑む。

「……それに、後半は俺の事を心配して言ってくれたところもありますよね?」

アンジェリカは思わず赤くなる。

――あれは聞く人が聞けば、嫉妬心から言っているのがバレバレではないか!!

「あの、それは……その、タクマ様はセルジュール様の髪にキスされたとも聞きましたし、お慕いしているようだったので……」

「その話ミナミから聞いたの?まいったな……まあ、セルジュール様に関しては俺の方がむしろ利用してた?ところもあるし……とにかく!アンジェリカ様が心配している様な関係ではないから安心して下さい。俺はセルジュール様に傷つけられたりはしていませんので」

少し気まずそうにタクマが話す。


――どういうことなのだろうか?……でも特別な感情を持っているわけではないって思っていいの??



「とにかく……俺が言いたいのは、アンジェリカ様だって貴族である前に一人の人間なんだし、言いたいことや思った事、どんどん言って良いってことですよ」



――本当にいいの?



ずっと、悪役令嬢にならないよう、断罪されないようにとアンジェリカは”良い人”になろうと努力してきた。

本当はセルジュールの事は憎らしかったが、他の人に話して報復しては悪役令嬢になってしまうと我慢した。

幼馴染のみんなにも誰にも、嫌われない様にずっと、ずっと、自分の気持ちを押し殺してきた。


「安心して下さい。そんなことでアンジェリカ様に引いたりしませんから」

タクマは少しいたずらっぽく、目を細めてアンジェリカに笑いかけた。


その笑顔にアンジェリカは何もかもが許される気がした。

「タクマ様……私っ!」

嗚咽の様に泣き出すアンジェリカをタクマはそっと抱き寄せる。


「大丈夫です」

そう言って、何度も優しくアンジェリカの頭をなでるのであった。





遡ること数分前……。


――アンジェリカ様が行ってしまう!追いかけなきゃ!

タクマは今すぐにアンジェリカを追いかけたかったが、この状況のセルジュールを一人置いていくのもそれはそれで心配である。

タクマが頭を抱えていたところ……。

「あ!!いいところに!ちょっと、セシリオ様をここまで連れてきてくれ!絶対だからいいな!!じゃ!俺は行くから!!」

そう言って、セルジュールを近くのベンチに座らせると一瞬でタクマはいなくなった。


「いやいや、簡単に言っていくけど、セシリオ様って今どこに?!しかも俺、面識ないから!!」


可哀想にたまたま通りかかっただけのタクマの友人は恐ろしく重要なミッションを任されてしまったのであった。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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