学園祭1 そのネーミングセンスはどうなの?
「ミナミさん!皇太子セット追加で!!」
「こっちは騎士セットを!!」
執事侍女喫茶は、今までにないコンセプトと、あの皇太子やランフォースが実際に給仕してくれると言うプレミアム感が功を奏し、予想以上に大盛況である。
おかげで共同責任者のようなミナミも大忙しである。
「タクマ様、幼馴染セットが入りましたので、お願いします!」
「……あ、はい」
タクマはランナの言葉に戸惑いつつ、セットを持って、給仕に向かう。
あらかじめメインの4人(リュークリオン、ランフォース、アンジェリカ、セルジュール)にはセットを頼んだものだけが給仕されるとし、そのセットを限定とした。
そのため、多少の待ちはあるものの、比較的混雑なく運んでいた。
しかしながら、
「タクマ様!7番テーブルへご指名ですわ!」
「タクマ様、次はこちらにもお願いしますわ」
気軽に?頼めるタクマを名指しでお願いするお客が出てきたのだ。
そこで、次の日から急遽タクマセットを組んで、限定にしたのだ。
「幼馴染セットって……もっとマシなネーミングなかったのか??ミナミさんよぉ」
タクマがミナミを軽く睨む。
「うっ……ごめんって」
だって、前世のゲームであなたは幼馴染ポジだったから!それ以外に特徴が思い浮かばなくて!……とはとても言えないミナミだった。
タクマは渋々ながら給仕に行くが、お客の前では見事な接客を見せ、早くも午前中分の限定セットは売り切れになりそうだった。
「タクマの頑張りで予想以上に売り上げが伸びそうだわ!これなら模擬店部門で優勝どころか、総合優勝も狙えそうね!」
ほくほくしながら、ミナミがアンジェリカに話すが、アンジェリカは「ええ、そうね」と気のない返事で返すだけだった。
どうしたのかと尋ねようとしたミナミだったが、すぐに注文が入り、アンジェリカとはそれっきり時間をとれないでいた。
ーアンジェリカ様、何だか様子がおかしいのよね……。ランナもそう言ってたけど、イマイチ反応が薄いと言うか……。
ミナミはアンジェリカの事が気になってモヤモヤしたが、それ以上に今日は今回最大のミッションが控えていたので、それに備えなければならなかった。
そう、セシリオ(とパトリオット)が来店する予定なのだ。
「そろそろ来る予定の時間よね??」
ミナミがランナにそう言ったところ、店内がざわつきだした。
ミナミはこのざわつきでだいたい予想できたが、顔を出してみるとやっぱり予想は当たっていた。
「やあ、ミナミさん、約束通り来たよ」
セシリオとパトリオットが約束通り来てくれたのだ。
「お待ちしておりました」
ミナミは少し仰々しく挨拶をする。
「あれ?アンジーは?」
セシリオの問いにミナミは「今は、他の接客中なのよ」と答えて、席に案内する。
メニュー表を見せると二人は感心したようにメニューをまじまじと見る。
「すごいねぇ、これ、全部ミナミさん達だけで??聞いたことのない茶葉やお菓子の種類もあって、迷っちゃうなあ。ねえ?セシリオ?」
「本当に。店内の雰囲気も上品ですごく素敵だよ。センスが良いね」
「お褒めに預かり光栄です」
「なんだか謙虚なミナミさんはちょっと新鮮だけど、慣れないね」
パトリオットの言葉にどういう意味だ?と思いながらも、メニューを決めるように促す。
「お決まりですか?」
「うーん、そうだねえ……」
セシリオは改めてメニューを見つめる。
ーアンジーにはいつも紅茶を入れてもらってるからなあ。だけど、普段と違った侍女姿を間近で見て見たいとも思うし……。単純に美味しいそうなお茶とお菓子をセレクトするのもいいな。ミナミさんやランナさんにお茶を淹れてもらうのも素敵だ。
ふと、愛猫セットの文字が目に入る。
ーこれが、ミナミさんの言ってたセルジュールのセットか。愛猫?他のもそうだけど、変わったネーミング付けるな。どうやらミナミさんにネーミングセンスはないようだな。……頼むべきか??
「僕はこのアップルパイをアールグレイのセットで!給仕はミナミさんにお願いできるかい?」
パトリオットが視線を合わせてミナミに言うので「特定のセット以外はランダムになっております」とつれなく話すミナミだったが、パトリオットの上目遣いに、危うく”もちろん”というところだった。
――ほんとに攻略対象は心臓に悪い!!
「僕は……」
「もちろん、セシリオ様はこちらのセットですね??」
「えっ……」
「ね!!」
ミナミの圧に押されて、半ば強制的にセルジュールのセットを頼むことになったセシリオだった。
「はぁっ。ミナミさんは時々圧が凄いな……」
「まぁ、そこがミナミさんのいい所なんだけどね」
セシリオの言葉にパトリオットが笑いながら答える。
「あっ……セルジュールさんだ。ちゃんと給仕してるんだね」
見ると、セルジュールが侍女服を着て給仕をしているではないか。
少し質素ではあるものの、清潔感があり、きっちりと首までとめられたブラウスはむしろセルジュールの気品さを際立たせていた。
「へえ、侍女服姿のセルジュールさんも中々素敵だね。僕はむしろいつものように派手な装飾のドレス姿より、今日の様な……」
「パトリオット!……あまり他人の婚約者についてとやかく言うもんじゃないよ」
――いや、他人って。他でもなくお前の婚約者だろ??
セシリオの無自覚な嫉妬にあきれるパトリオットなのであった。
「お待たせしました。アップルパイとアールグレイのセットになります」
「わぁ!ランナちゃんだ!とっても可愛いね!こりゃ、ランフォースもメロメロだね」
「なっ!何を言っているのですか?!たちの悪い冗談はやめて下さい!!」
顔を真っ赤にするランナに「ええ~。冗談じゃないのに」と悪びれる様子の無いパトリオットだった。
そして……。
「お待たせしました……。あっ……愛猫セットです」
ざわざわっ。
周囲がざわつく。
――?!
見ると、目の前に猫耳を付けたセルジュールが、セシリオの目の前に紅茶セットを持って来た。
「セルジュール!?えっ??耳!?あれ??さっき、給仕した時にはつけてなかったような……」
セシリオはあまりの驚きに次々と質問する。
心臓の音がうるさい。
自分が何を聞きたくて何を言いたいのか、セシリオ自身もわかっていない。
こんなにもセシリオがテンパっているのは初めてだとパトリオットは妙に感心する。
――あのプライドの塊の様なセルジュールが?猫耳を付けてる??僕は幻を見ているのか??侍女の格好を大人しくしているというだけでも、晴天の霹靂だというのに……。
「その……これは……、セシリオ様にだけの特別仕様でございます。……にゃ?」
そう言うと、セルジュールはあまりの恥ずかしさに耐えきれず、真っ赤になって目をそらす。
トスっ。
この瞬間、セシリオは自分の心臓が何かに射抜かれたと確信した。
しばらく学園祭編続きます!!
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