お誘い
「セルジュール様、少しお時間よろしいかしら?」
セルジュールが振り返ると、そこには扇子を携えた、アンジェリカが仁王立ちしていた。
ーいったいアンジェリカ様が私になんの用ですの?!
談話室に招かれた、セルジュール(とついでにいつものとりまき達)は、先ほどから、何もしゃべらないアンジェリカに恐怖を感じていた。
ーセシリオ様とのことで何か言われるのかしら?!私の今までの行動が、セシリオ様の婚約者に相応しくないとでも言われるのかしら?!でも何で今更…。
セルジュールはこの前の事もあり、心が折れかかっていた。
「ごめん、ごめん、待った?」
そこへ、息をきらしてミナミとランナが談話室へ入ってきた。
「何なんですの?!騒々しい!」
やっと、口を開けるとばかりに、セルジュールの取り巻きたちが、口々にミナミ達を非難する。
だが、ミナミはそれらを見事にスルーする。
「遅いですわ!!私だけではセルジュール様達とまったく、会話が成り立ちませんの!」
アンジェリカが小声で泣きそうになりながらミナミ達に訴えるが、ミナミはそれも「ごめんって」と軽くあしらって、机の上に2枚の紙を置いた。
「これを生徒会からもらうのに、ちょっと手こずってさ」
「なんですの?」
セルジュール達が見ると、それは学園祭のポスターと、その出し物のエントリー用紙だった。
「学園祭のポスターですわね。まあ、参加は2年からで、1年はほぼお客のようなものだとうかがっていますけど」
セルジュールの取り巻き達がそう話す。
「これに、私達で参加しませんか??」
ミナミがにっこり笑って言う。
「は?」
「誰がこんなもの!しかもあなた達となんてー」
セルジュールの取り巻きたちが声を荒げだしたところで、セルジュールが急いでそれを制す。
「…アンジェリカ様もご参加に?」
慎重にセルジュールが聞く。
ミナミとアンジェリカは目を合わせる。
「もちろんですわ。ですが、こんなものに、私なんかと参加してくださる方なんて、いらっしゃらないわよねぇ」
アンジェリカが、セルジュールの取り巻き達に視線をやる。
彼女らはもはや顔面蒼白だ。
ーちょっと、やりすぎか。
セルジュールは、ミナミの方を見る。
ミナミは”よくできましたっ”と言うように、にっこり笑って返す。
「…わかりましたわ。アンジェリカ様のお誘いに私たちが断れるはずありませんわ」
そう言って、ため息交じりにセルジュールは承諾する。
もはや、脅迫と言ってもいい誘いだったが、とりあえず、これで参加をとりつけたので、ミナミとアンジェリカは密かにガッツポーズをする。
取り巻きズ(セルジュール以外の3人の令嬢)も、仕方ないというように、大人しくうなだれた。
「それで、何をするかはもう決まってますの?まだなら、まずそこから話し合わなくてはいけませんわ」
セルジュールが聞く。
「ああ、それならもう決まってます」
ミナミの満面の笑みにセルジュールはなぜか、嫌な予感がした。
「メイド喫茶です!」
「ーえ??」
予想外の答えに、セルジュールの空いた口がふさがらなかった。
取り巻きズはもはや、目が点になっていた。
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