ヤキモチ
授業が終わると、セシリオは淡々と教科書などをしまい始めた。
セルジュールは迷っていた。
ーあんなセシリオ様初めて見ましたわ。あきらかに怒っていましたわ…。
私たちの私語があまりにもうるさかったのかしら?…一言あやまるべき??
「セルジュールさん、また来週もよければ一緒に座りましょうよ」
ミナミの言葉に「ええっ、まあ、構わなくてよ」と素っ気なく答えるセルジュールだったが、どことなく嬉しそうだった。
ーやっぱりツンデレ!
「ふふっ、じゃあ僕もご一緒してもいいかな?」
タクマが言う。
「え?まあ、あなた達はセットのようなものでしょう?」
当然とばかりに言うセルジュールの言葉にタクマは思わず吹き出す。
「やっぱり、セルジュールさんって、可愛いね」
タクマはそう言って、セルジュールの髪をすくうと、軽く口づけした。
ーなっ?!
さすがに、婚約者の前でこれはいかがなものかと、セルジュールはセシリオの方を振り向いた。
しかし、セシリオはいつも通り、にっこり笑うと
「それじゃあ、ミナミさん、セルジュールさん、また」
そう言って、何も無かったように席を立ち、教室を出て行った。
「待ってよ、セシリオ!」
パトリオットとランフォースも続く。
立ち尽くすセルジュール。
「タクマ、流石に今のはやりすぎじゃぁ…」
ミナミがそう言うより早く、リュークリオンがタクマの胸ぐらをつかむ。
「…おい、どういうつもりだ?」
「どうって?なにがです?」
タクマはリュークリオンの手を振り払う。
「髪にキスぐらい、セシリオ様だって、アンジェリカ様にしていたじゃないですか!」
「く…たしかにそうだが…あれは、アンジーとセシリオの仲だからいいのだ。それに、婚約者の私も容認していることだ」
「…セシリオ様はなんとも思ってなさそうだったけど?」
「お前ってやつは!」
再度タクマの胸ぐらをつかみかかりそうだったリュークリオンを、ミナミが必死でとめる。
「落ち着いて!」
「しかし…!」
だが、そこで放心状態になっているセルジュールが視界に入り、リュークリオンは冷静さを取り戻した。
「とにかく…タクマ…お前が何を思って、そのような態度をしているのかわからないが、自分の問題に他人を巻き込んでいるなら今すぐ止めろ。わかったか?!」
そう言って、タクマを睨むとリュークリオンは去って行った。
ーなんか途中から意味わかんなかったけど…どういう事??
ミナミはリュークリオンの言葉に困惑したが、当のタクマは黙ってうつむいたままだった。
「…セルジュールさん、すみません。俺、やり過ぎました」
先ほどまで、放心状態だったセルジュールは、タクマの言葉でやっと我に返った。
「ううん、いいのよ。ヤキモチ…やかせようとしてくれたのでしょう??セシリオ様に」
「……」
「でも、もうこんなことやめて頂戴ね。あの人のさっきの態度みたでしょう?何も無かったよう行ってしまったわ。少しは…怒ってくれるかと思ったのだけど」
そう言って、セルジュールは片付けをして、立ち上がると、「…来週からは別の席で座りましょう」と言った。
「えっ…でも」ミナミが、慌てて引き留めようとするが、
「これ以上…みじめにはなりたくないの!」
そう言って、セルジュールは教室を出て行った。
ミナミはタクマに言ってやりたいことは山ほどあったが、なぜかタクマも泣きそうな顔をしていたので、何も言うことができなかった。
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