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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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33/50

栗毛色で琥珀色の瞳

「リュ……リュークリオン様?!」




「アンジーが談話室に来ないので、探しに来たのだが……お前だけか?」


ーああ、そう言うことね。


こちらも頭に葉っぱをつけている。


リュークリオンには、意図的に教えてあげないことにした。


だって、面白いから。


「なに、一人でニヤニヤしている?気持ちの悪いやつだ」


「なんですって?!」




ーしかし……なぜこの人は、公爵令嬢がこんな茂みの奥に居ると思ったのか……この執着ぶり、引くわ……。




「あー、アンジェリカ様ならさっき、お会いして、今さっき談話室に行かれましたよ」


「何?!すれ違いか!」


そう言って、リュークリオンは、ミナミには目もくれず、去ろうとする。




ー頭に大量の葉っぱがついて、ミノムシみたいになればいいのに……。


そう、リュークリオンに呪いの言葉を唱えていたら、ミナミのお腹の音が、豪快になった。




ぎゅるるるるる~。




ー……お腹空いた。私も食堂に行って何か食べよう。


早くしないと、くいっぱぐれてしまう。




ところが、行ったはずのリュークリオンがなぜかまた戻って来た。




「やる。食え」




そう言って、差し出されたのは、サンドイッチだった。




「豪快なお腹の音が聞こえてきたぞ」


「ええっ?!嘘でしょう??」




ミナミは恥ずかしくて、顔が真っ赤になったが、リュークリオンはお構いなしに続ける。


「あの音を無視して行っては、流石に将来国を治める者として、どうかと思った」


「ええっ?!そこまで?!」


益々恥ずかしくり、顔を赤らめるミナミを見て、リュークリオンは声を出して笑った。


「ハハっ!……まあ、それは冗談だが、アンジェリカと食べようと思い、持ってきたのだ。アンジェリカの分はあげられないが、私の分をくれてやる」


「……リュークリオン様でも、冗談とか言うんですね」




攻略対象(リュークリオン)の笑顔……破壊力……ヤバっ。




こんな無邪気に笑うリュークリオンを見たのは、ミナミは初めてだった。


少年の様に屈託なく笑うリュークリオンは、恐ろしく可愛く、不覚にもきゅんとしてしまった。


さっきは滑稽に見えた、頭の葉っぱさえ、あどけなさを増させる演出になった。




ーこれは……しょうがないって。


誰にともなく言い訳をするミナミだった。




「あっ、でも私が食べたらリュークリオン様の分が……」


「気にするな。何度も言うが、あの腹の音を放ってくのは、皇太子として……」


「ああっ!もう、わかりましたから!……では遠慮なく頂きますね」


ミナミはそう言って、リュークリオンからサンドイッチを受け取る。


サーモンとクリームチーズが挟んであり、バジルソースがかかっている。


見るからに美味しそうだった。




「お……美味しい」




「当たり前だ」


ミナミは、相変わらず自信満々だな、こいつは、と思いながらも本当に美味しかったので、夢中で食べ進んでしまった。


すると、リュークリオンが、今度は吹き出すように笑う。




「何なんですか……」




ーやばい……がっつき過ぎたかも……。でも本当に美味しいし、お腹空いてたんだもん……。




「ついてる。パン」


リュークリオンが笑いながら、ミナミの口元を指さす。



ー?!




「え?どこ?!」




ミナミは焦って、顔に付いたパンくずを取ろうとするが、全く見当違いの所ばかりを触っていた。




「違う」




そう言って、リュークリオンはミナミの口元に手を伸ばした。




そして、そのパンくずを取ると……。




そのまま、ミナミの口にねじ込んだ。




「んんっ!!」




「大事に食え」




ーいやいや!そこはさぁ、とったパンくずを自分の口に持っていって、何故か無駄に舌とかペロっと出して、「ごちそうさま」とか言うところでしょ!!ねじ込むってなによ!?




ミナミはリュークリオンの指がほんの一瞬、自分の唇に触れたことにドキドキしながらも、乙女ゲームの攻略対象者とは思えない残念行動にツッコミを入れて、何とか自分を落ち着かせるのであった。




ーまったく、だからこいつ(リュークリオン)は残念王子なのよ!




だが、次の瞬間。

リュークリオンはミナミの口に触れたその親指を、無駄に舌を出してペロっと舐めた。




「食事作法は、まだまだ勉強が必要だな」




そう言うと、ふっと笑った。




「うっ……うるさーい!」




指をなめるのは作法的にどうなのか?!など色々ツッコミたかったが、もはやそれどころでは無かった。




「おっと、こうしちゃいられない。アンジーにサンドイッチを持っていかないと。談話室に戻ったんだったな。あっ、こっちのフルーツサンドも置いていくから食べろ」


そう言って、バタバタとリュークリオンは茂みから出て行った。




ー何なのよ!残念王子のくせして!




「……本当に……何なのよ」


ミナミは自分の唇をそっと指で触った。


まだ、リュークリオンの指の感触が残っている。






「アンジー!!」


「あら、リューク、今お茶を淹れたところですの。リュークも飲みますわよね?」


「ありがとう。サンドイッチがあるんだ。食べるだろう?」


「私の為に?嬉しいですわ。私の大好きなフルーツサンドまで。あっ……大変、今パトリオット達が私の為に何か買ってくると今、食堂に……どうしましょう」


「ああっ、だったらそれは私が食べる。アンジーは私が用意したサンドイッチを食べるといいさ」




セシリオがふと、リュークの頭についている葉っぱを見つける。


「リュークったら、こんなところに葉っぱを付けちゃって。可愛いな」


そう言って、セシリオがクスクス笑う。


「笑ってないで、さっさと取れ」


恥ずかしいのか、リュークリオンは、少し赤くなりながらも不機嫌そうな顔をしてセシリオを軽く睨む。


「ハイハイ……。あっ、そう言えば、ここに来た時、アンジーも頭に葉っぱを付けていたね。もしかして、ニアミスだったのかな?」


丁度、お茶を運んできたアンジェリカとリュークリオンの目が合う。


「いや……これはその……」


リュークリオンが、言いかけた時、「お待たせ~サンドイッチ買って来たよ~」と、パトリオットとランフォースが、談話室に入って来た。


「ああ、二人ともありがとう。でも、実はリュークが私のお昼を用意してくれていて……」


「私が、それを食べる。寄越せ」


「え?そうなの??まあ、いいけど。と言うか、リューク、自分のは用意していなかったの?」


「やだ、リュークったら、もしかして私に気を使ったのです??これ、もしかしてリュークの分ですの?!」


「あ……いや……そういうわけではない!アンジーの為に用意したものだから食べてくれ!」

「ご自身の分は買わなかったんですの??」

「いや……買ったよ」


「だったら、無理しなくていいよ。ランフォースならまだ食べられるでしょ?」

「問題ない」

パトリオットは、そのまま買って来たサンドイッチをランフォースに渡した。


ランフォースは躊躇なく、サンドイッチにかぶりつこうとする。


「まっ……」




ぐ~う~




これまた豪快にリュークリオンのお腹の音が鳴った。




「もう、お腹空いているなら、早く言ってくれれば良かったのに。ああ~面白かった!」


パトリオットが涙目で笑いながら言う。


「うるさい。言おうと思ったが、お前たちが話を聞かなかったんだ」


サンドイッチを食べながら、リュークイオンが、パトリオットを睨みつける。


「あれ?でもそしたら、リュークの分のサンドイッチはどうしたの?本当は買わなかったってこと??」


ふと、パトリオットが疑問に思い、リュークリオンに尋ねる。


他の皆も気になった様で、一同がリュークリオンの方を見る。


「あ~……なんだ、え~と……あれだ、その……猫!そう、迷い猫がいたもので、そいつにあげてしまったんだ!うん」


ーなぜ、私は嘘をついてしまったんだ?!


なぜか、浮気をしてごまかす亭主のような気分になり、冷汗をかくリュークリオンだった。


「ふ~ん……。」


パトリオットは納得いかないと言った返事をしたが、セシリオは猫という単語に飛びついた。


「猫?!え?迷い猫がいたのかい??僕も会いたかったな~!どんな猫だったの?」


ーしまった!こいつは無類の猫ずきだった!!


興味津々と言ったように、聞いて来るセシリオに適当に誤魔化そうとした時、アンジェリカが口を開いた。


「猫ちゃんなら私も見ましたわ」


「ええ?そうなのかい?あ!だから、二人とも葉っぱを……茂みにいたんだね。でっ、どんな猫だったの?」


リュークリオンはなぜ、アンジェリカが話を合わせたのか解らず、きょとんとしてアンジェリカを見た。


ーもしかして、本当に猫がいたのか??


リュークリオンがそう思いかけた時だった。




「そうねえ……栗毛色で、琥珀色の瞳をした、とっても可愛らしい猫ちゃんでしたわ」




ー?!




「ねっ……リューク!」




「あ……あぁ」




リュークリオンはそれ以降、アンジェリカの顔を見ることができず、もくもくと下を向いて、サンドイッチをほおばった。




リュークリオンの態度に、何かあるなっと思う、パトリオットとランフォースだったが、アンジェリカがとても上機嫌だったので、悪い事ではないのだろうとそっとしておくことにした。




「アンジーも見たの?いいなぁ。今度いたら教えてよ!あっ、リューク!フルーツサンドは今度からあげないでね!猫ちゃんが虫歯になっちゃうから……それから……」


猫に夢中なセシリオだけはそのことに全く気付いていなかった。






栗毛色の髪に、琥珀色の瞳……それはミナミの色だった。





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