裏庭での乙女会議
「アンジェリカが、前世からタクマを慕っていたってことをどうにか伝えたかったんだけど…全く聞く耳持たずで……力及ばずごめんなさい」
「いいえ、ミナミさんのせいではないわ。それに、今下手にタクマ様に私の気持ちを言っても、信じてもらえないでしょうね」
正直、ミナミもまったくの同意見だった。
返す言葉が見当たらない。
「でも、理由がはっきりして良かったですわ!理由がわからなければ、対策も立てられないですもの」
思ったより、前向きなアンジェリカの答えに、ミナミは安心する。
「それに…正直、セルジュール様の事が気になって…タクマ様と一気に距離を縮められましたわよね??」
あのパーティーでの事を言っているのだろう。
確かに、あれにはミナミも驚いた。
セルジュールの印象があまり良くないミナミとしては、複雑な気持ちもあった。
「まあ、タクマはあの性格だから、基本、人を悪く言わないし、誰とでも仲良くなるタイプよ。そのおかげで、タクマがそのつもりはなくても、相手が好意を寄せることがチラホラ…」
ミナミはこれまでのタクマを思い出す。
孤児院の子にも好かれていたし、入学してからも何人かアプローチされている。
当の本人は、まったくその気はないようだが。
「こうなれば、婚約者のセシリオにしっかり、セルジュール様をつなぎとめてもらいたいところなのですが…」
二人はセルジュールとセシリオの今までを思い出す。
「難しそうね…」
「ですわね…」
二人は同時にため息をつく。
「今は少し様子を見ながら、頃合いを見て、誤解をとくように頑張ってみますわ。では、そろそろお腹もすいてきたので、私は談話室に戻りますわ。ミナミさんも一緒にいかが?」
「私は、ランナと約束しているから」
アンジェリカは「それなら、また今度一緒に食事しましょう」と言って、茂みから抜けて行った。
ーあっ、頭についた葉っぱの事、言うの忘れてたわ。
まぁ、どうせ、リュークリオンがそれに気づいて、「そそっかしいな」とか言いながら、優しく葉っぱをとるんだろうなぁと、勝手に妄想して、勝手にやさぐれるミナミだった。
ガサツ
その時、茂みの向こうで何かが動いた気配がした。
ーえ?何…?
ミナミが警戒を強めると、そこからまさかのリュークリオンが顔を出した。




