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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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30/50

番外編 シスターとミナミ

避暑地から戻ると、ミナミは孤児院に行き、シスター達に会いに行った。


本当は直ぐにシスターに会いに行きたかったのだが、ランクレッド家の用事やらなんやで、すぐにアンジェリカとの約束の日になってしまい、そのまま避暑地へ行くことになってしまったからだ。


タクマも誘ったのだが、用事があると言われた。

避けられているのかも知れない。

「また、今度改めて行くからシスターによろしく」と言っていた。


久しぶりに会うシスターや、子ども達は変わらずの優しさでミナミを受け入れてくれた。

何人か新しい子も入った様だった。


「ミナミ、学園での生活はどう?苦労していない?」

シスターは心配そうにミナミに尋ねる。

「大丈夫よ、みんないい人たちだから心配しないで」

「ならいいけど…。差別や偏見をなくすのは、難しいことだから…。ってシスターの私がこんな事言ってはだめね」

そう笑いながらもシスターは安堵した表情を見せた。


ミナミはシスターに心配させていたのだなっと思うと、嬉しくもあり、ウソをついた事に少しの罪悪感もあった。

身分がある以上、差別はある。


「新しい子が増えているわね」

「そうなの。でもまだなじめないのかしらね。親を流行り病で失くして…兄妹なのだけど、いつも二人でいるの」


ミナミは二人のところに近づくと、声をかけてみた。

「初めまして。私はミナミよ。あなたたちは兄妹なんだって?シスターから聞いたわ」

二人は明らかに警戒した視線をミナミに向け、小さくうなずいた。


ミナミは戦争孤児で、もう物心ついた時にはこの孤児院にいたので、元の家庭の事を知らずに育った。

だが、この子達はどうだろう。

突然両親がいなくなり、幼い兄妹二人が取り残されたのだ。

比べることなどできないのだが、ミナミにはそのほうが自分よりよっぽど辛いことのように感じられた。


「みんな、事情はそれぞれだけど、縁あってここにいるわ。不安な事や辛いこともあるけど、あなたたちから何かを奪おうとするものは誰も居ない。もう、大丈夫よ」

そう言って、ミナミは優しい笑顔を二人に向けると、二人の表情が少しだけ和らいだ。

「さぁ、今日はミナミお姉さんと一緒に遊びましょう!何がいいかな…お人形遊び?それとも鬼ごっこなんてどう??」

二人は顔を見合わせて「鬼ごっこ!」と言った。

「よ~し!じゃあまず、ミナミお姉さんが鬼ね、1,2,3…」

そうして、3人で鬼ごっこを始めると、”楽しそう””入れて”と、何人もの子どもたちが参加してきたのだった。


ーやっぱり、子ども達の体力は凄いわ…。

1時間もすると、限界が来たミナミは無期限のタイムを施行していた。

ーまあ、もう私がいなくても大丈夫そうだけどね。

ぐでっと机に寝そべりながら、横目に子ども達を眺める。


「お疲れ様、ミナミお姉さん」

シスターが冷たいお水をくれたので、ミナミはお礼を言って、それを飲む。

生き返る。


「ああ、やっぱりもったいないわぁ」

シスターがため息をつく。

「何がです?」

「実は私はあなたが、私の後を継いでシスターになってくれたらと思っていたのですよ」

「ええ??そうだったんですか?」

思いもよらぬシスターの発言に、ミナミは驚いた。

「いえね、昔から、あなたの言葉は妙に説得力があるって言うか…あの子達、私がいくら言っても、いつも2人で遊んでたのよ?それなに今日は…。やっぱり、あなたには特別な力があるのかしら。それもこれもー」

ーそれもこれも、全部聖女の設定ね。

私がどうとかじゃなくて、きっとこれも聖女という設定なのだろう。


「それもこれも、全部、あなたが昔から、その人の為に何かしてあげたいという、純粋な思いがあるからね」

「ー?!」

「なあに?驚いた顔して…自分で気づいていないの?まあ、そこがいいのかも知れないわね。あなたは昔から、困ってたり、落ち込んでいる子を見るとほおっておけなかったじゃない??ほら、タクマ…様だってそうでしょ?町で一人、寂しそうにいたところをあなたが声をかけてここに連れてきて…。あなたはいつだってそう。泣きそうな子を見つけると、何かしたいと思ってしまうんだわ。」


「…ずっと…昔から?」

「いやだわ、そんな泣きそうな顔をしないで。誉め言葉よ?」

そう言うと、シスターは優しくミナミを抱き寄せた。

「ミナミ...忘れないでね、何があっても私はミナミの味方よ。いつでも孤児院ここに帰ってきてもいいのよ。がれきだらけの中から…まだ2歳だったミナミを見つけたのはこの私なんだからね」

「…シスター」

「なんて、駄目ねぇ!今はランクレッド家の令嬢であり、光属性をもつ国の保護対象のあなたに独占欲を出してしまうなんて!」

シスターはそう冗談っぽく言うと、大げさに笑って見せた。


ー私は少し前世に囚われ過ぎていたのかもしれない。

このところ、アンジェリカの告白もあり、余計に現実(今)と前世を結び付けて考えることが多くなっていた。


それ故に全てが設定上の事だと感じ、逆に自分がどうあがいても無駄なような気さえ感じ始めていた。


でも違った。

間違いなく私はここで生きていた。

2歳からシスターに愛情を注いでもらい、私の人生を自分の考えで歩んできたんだ。


「シスター、誰がなんと言おうと、私の心の母はあなたです。…もし、私に何か特別な力があるとしたら、それは紛れもない、あなたから頂いたものだわ」


ー設定なんかじゃない。


「いやだわ、ミナミったら…私はただ自分のしたいようにしただけよ。だからお願い、ミナミ、あなたもあなたのしたいように生きてね」

そう言って、シスターは優しい笑顔をミナミに向けた。

小さい頃から変わらない、ミナミを包み込んでくれる優しい笑顔だ。

「…シスター」


設定とか、フラグとか、運命とか…もう何が正しいかわからないけど、とにかく今は私が正しいと思うように行動してみよう。


例えそれが間違っていても…大丈夫…私には帰る場所があるから。




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