タクマにとどめをさしたのは??
「アンジー!!もう大丈夫なのか??」
必要以上にアンジーの体をくまなく観察するリュークリオンに、「もう、せっかくの食事が冷めてしまいますわ。早く席につきましょう」あきれた様にアンジェリカが言う。
相変わらずの溺愛っぷりに、これのどこを見て、アンジェリカは心配ないと言うのか、ミナミにはさっぱりわからなかった。
アンジェリカに婚約破棄されたら、ショックで家出でもしそうな勢いに見える。
食事中も、リュークリオンはしきりにアンジェリカの体調を気にして、お世話する。
いつもの事なのか、他のみんなは平然と食事をしている。
セシリオもそんな二人を微笑ましく見ている。
今日はセルジュール嬢の所にいかなくていいのか。
そして、タクマは未だに気にしているのか、いつものような明るさがない。
ー私がどんだけ気にするなって言ってもだめだろうなぁ…どうしたものか。
「あの、タクマ様、改めて助けて頂きありがとうございます。タクマ様は命の恩人ですわ!」
そう言って、花のような微笑みをタクマにむけるアンジェリカだったが、タクマは目を逸らして答える。
「いえ…そんな。当然の事をしたまでです。たまたま一緒に乗り合わせていたから。むしろ、他の誰かならあなたを危険な目に合わせなかったでしょう」
恐ろしいくらいの自己嫌悪に、いつものタクマらしくないとミナミは心配になった。
「はっ。まだそんな事を言っているのか!お前はもっと明瞭なやつだ思っていたが、案外女々しいのだな。いつまでも辛気臭いぞ」
「ちょっと!そこまで言わなくてもいいんじゃない??確かにタクマはちょっと落ち込みすぎだし、逆にここまでくると、アンジェリカ様が気を遣うじゃん?何考えてるの?とは思ったけど…」
そこまで言って、しまったと思い、ミナミはタクマの方を向いた。
「俺…ちょっと体調がすぐれないので、部屋に行って休みますね。」
そう言って、フラフラとタクマは部屋に戻っていた。
「どうやら、ミナミさんがとどめを刺したようだね」とパトリオット。
「いやいや、もとはと言えばリュークが言い過ぎたからじゃないの?」とセシリオ。
「…どっちもだろ」
ランフォースの言葉にリュークリオンとミナミは顔を合わせてるのだった。
その後は、タクマもいつもの様子を取り戻し、ミナミ達はアンジェリカに案内されながら、幼馴染ブラザーズ達と共に、イーストランド(避暑地)を楽しんだ。
ただ、何となくだが、以前よりタクマがアンジェリカに距離を置いている様にミナミは感じた。
アンジェリカもそれは感じていた様で、あんなことがあったから仕方がないとも思えるし、あるいはドミエール家と生家との、貴族としての違いに改めて気づいたのかもしれないと「ここにお誘いしたのは時期尚早だったかしら」と思い悩んでいた。
そして、いよいよ明日は最終日で、親睦パーティーが開かれる日でもあった。




