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追試が終わった!

それからあっという間にアンジェリカの追試の日がやってきた。

ミナミはアンジェリカに聞きたいことが山ほどあったのだが、あれ以来二人きりになるチャンスもなく、話せずにいた。


アンジェリカはミナミのスパルタな教えや、ランナ達が見つけてくれた参考資料のかいもあって、見事に追試を一発クリアした。


「皆様!本当にありがとうございます!おかげで私、アンジェリカ・サン・ドミエール、無事追試に合格しました!」


おーっという歓声が沸き上がる。

そもそも公爵令嬢が追試3つもとっていいのか?とミナミの疑問は他の人には感じられていない様であった。


「アンジェリカ様、凄く頑張られてましたもんね。絶対に合格できるって、思ってましたよ」

タクマが優しい笑顔で、声をかけると、アンジェリカは頬を染めて、「そんな…」と口ごもる。


あれ以来、ミナミは改めてアンジェリカとタクマの様子を見ると、誰がどう見てもアンジェリカはタクマに恋をしていると実感するのであった。


ー先入観って怖いわ…私はてっきり、アンジェリカ様はあいつを…。


「アンジー!良かった!こいつらに任せて大丈夫かと心配したが、無事合格できたな!さすがは私のアンジーだ!おめでとう!」


その横で”こいつら”に含まれていたランフォースが無言で立っていたが、相変わらずの仏頂面なのでどう思っているかはわからなかった。


しばらく会えなかった反動か、リュークリオンはアンジェリカをいつも以上に強く抱きしめる。

「くっ苦しいですわ!おやめになって!」

それを、あきらかに煙たそうに、アンジェリカがはねのけようとする。


ーなるほど、見れば見る程一方通行だわ。


アンジェリカの気持ちを知って、改めて二人を見ると、あからさまなリュークリオンの一方通行に、ミナミは、リュークリオンが不憫に思えてくるのだった。


ー”私の”言ってるけど、実際、お前のモノじゃないけどな。

ただ、さんざん今まで馬鹿にされてきたので、若干ざまあという気持ちも否定はできなかった。


「おい、貴様、なんで私をそんな憐れむような目で見る?!」

色恋以外の他人の心情には敏感な皇太子リュークリオンであった。


「何はともあれ、これで無事にバケーションに入れますわ。皆さま、ご心配をおかけしてごめんなさい、そして助けて下さり本当に感謝しますわ」

そう言うと、アンジェリカはミナミとタクマに避暑地へ行く日程などを書かれた紙を渡してくれた。

「本当に、その身一つで来てくださればいいのですわ。どうか、お気遣いなさらないで」

「えっええ…。」


そうは言っても本当に手ぶらでいいのだらうか?友人としてとは言え、公爵家の避暑地に招待されたなら何か贈り物をするのが常識なのだろうか?

答えがわからず、タクマの顔を見るが、タクマも悩んでいる様だった。

ーとりあえず、後でタクマと相談してみよう…。


「ふん、何を神妙な顔をしているんだ?ここは言葉通りに受け取ればいいんだ。第一、ランクレッド家がドミエール家に贈りものなんてしても、ドミエール家が困るだけだ。それくらいもわからないのか?これだから元平民は」


「なんですって!」

「ちょっと!リューク!…ごめんなさいね、でも、これは本当に私が友人としてミナミさんとタクマ様を招待しているのであって、何か贈られると家と家でのことになってしまうから…」


なるほど、そういうものなのかとミナミは納得しながらも、いちいち元平民を出してくるリュークリオンの言い方が気に入らなかった。


「じゃあ、着替えと歯ブラシと洗面道具くらいでいきますね~」

ミナミはパジャマパーティーくらいの感覚で行くことにした。

「…」

「ミナミさん、差が激しいわね?!」

公爵令嬢にに呼ばれてるにもかかわらず、あまりにも軽いノリに思わずランナが突っ込んだ。

「…さすが、元平民だな」

今回ばかりは、リュークリオンの悪態を誰もたしなめなかった。


そのあと、アンジェリカはランナも誘いたかったが、急だとかえってランナに迷惑をかけるからと残念そうに言った。


ランナはアンジェリカにそう言ってもらえるだけで十分だと、恐縮そうに笑った。

その時、チラッとランフォースと目が合いそうになったランナだが、直ぐに目を逸らしてしまった。


ー駄目ね、普通に接しようと思うのに、ランフォース様のお顔を直視できないわ…。


ランナはあの日以来、ランフォースの顔をまともに見る事ができなかった。

それでも、どうしてもランフォースを目で追ってしまい、隙を見ては盗み見るのだが、目が合いそうになると、こうやって避けてしまうのである。


ーこれじゃあ、おかしな子だわ…。この思いは胸の奥にしまうって決めたのに。


でも、それももう、今日でおしまいね。

そもそも、ランフォース様と私には何も接点がないのだから。


「どうした?何かあったか?」

傍から見れば、いつもと変わらない仏頂面でも、付き合いの長いパトリオットにはランフォースがいつもと違うことに気づくのだ。

「別に…」

そう言ったランフォースの視線の先に気が付いたパトリオットは、そういうことかと理解した。


ーはたして、見守るべきか否か。


幼馴染の初めて見せる表情に嬉しくなるも、仏頂面このままじゃあ気づかれもしないのではと、心配になるパトリオットだった。


「そういえばセシリオ様、セルジュール様は今年もイーストランドでお過ごしかしら?」

「ああっ、まぁ、そのようだねぇ」

セシリオはなんとも歯切れの悪い返事をして返す。


イーストランドは避暑地がある場所の事だ。

王族や公爵家などのいわゆるセレブが御用達の場所なので、侯爵のセルジュール様の避暑地もあるのだろう。前世で言うところの軽井沢とか那須?といったあたりだろうか。

正直、ミナミはあんな事があったので、セルジュールが来ると聞いて気が重くなった。


「もうっ!今年はミナミさん達もいらっしゃるのですから、絶対に前回のような事は無いようにして下さいましね!そもそも、セシリオ様がセルジュール様を婚約者としてもっと誠意をもって…」


アンジェリカのお説教が始まるが、やはり今回もセシリオはニヤニヤしながら、聞いているだけなので、まったく効果はないだろうとミナミは思うのだった。

そして、前回何があったのか気になったが、怖いのでそれを聞くのは止めにした。

「…前回は何をしたんだろうな?」

同じことが気になっていたタクマがミナミに耳打ちした。


そして、ついにバケーションに突入するのだった。










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