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前世を信じますか?

ー前世を信じますか?


思いもよらない、アンジェリカの問いかけに思わず、ミナミは固まってしまった。

この場合は、何かの宗教ですか?と冗談でごまかすべきだったのだろうが、あまりにも突然で、ミナミは何も反応できなかった。


もちろん前世の記憶を持っているミナミは前世を信じるが、まさかにアンジェリカからそんな事を聞かれるだなんて思いもしなかった。

そもそも、前世とは、設定は似ているのに展開が全く違う今に、ミナミの前世の記憶とやらも、怪しいものだと思い始めていたところだった。


ミナミがアンジェリカの質問の意図が分からず、押し黙っていると、アンジェリカがやっぱりと言ったように、深いため息をついた。


「…断捨離っておっしゃったでしょう?先ほどのそれを聞いて、思いましたの。これって、私の前世の世界で流行っていたものじゃなかったかしらと。おまけにコンマリもその断捨離の第一人者ですわ」


アンジェリカが真剣な表情でミナミに言う。


…まさか…断捨離で前世の記憶を暴かれるとは!!

そしてアンジェリカには悪いが、真剣な顔でコンマリって言ってるアンジェリカが滑稽に感じてしまった。


ーいやいや!そんな事より今なんて言った?!


「えっ?!…ちょっと待って、今、アンジェリカ様、私の前世の世界って言った??まさか…アンジェリカ様も…」


「ええ、私も前世の記憶があるの。しかもおそらくミナミさんと私は、同じ世界で、同じくらいの時代にいたようですわね」


確かに、コンマリまで知っているなら似たような時代に生きていたのかもしれない…。そうミナミが考えていると、こちらが本題というように、また改まって、アンジェリカが話し出す。


「ミナミさん、もしかして、乙女ゲームの「聖フォース学園」をおやりになったていたのでは?」

「えっ?!どうしてそれを?…まさか…!」


「ええっ。私もその乙女ゲームを前世でやり込んでいたのですわ」


アンジェリカが謎のドヤ顔でミナミを見た。

ミナミは、正確にはゲームをやり込んではいなかったのだがと思ったが、まあ、そこはスルーすることにした。


「おっしゃる通りです。…じゃあ、もしかしてアンジェリカ様も、ここがあのゲームの世界だと?」

ミナミは、少し緊張した面持ちでそう尋ねた。


アンジェリカはゆっくり頷くと、「ええ、もちろんそうだと確信してますわ」

静かにそう答えた。


アンジェリカの話を要約するとこうだった。


アンジェリカが前世の記憶を思い出したのは、ミナミよりもずっと早く、5歳のころだったと言う。

最初は自分が自分じゃない記憶があることが受け入れられず、困惑し、そして、今の自分が悲惨な末路を迎えるかもしれないことに、ただただ恐怖して泣いてばかりいたという。


「あの頃は、リュークやセシリオ達の事も信じられず、ただただ怯えていましたわ」


確かに、将来自分を断罪するかもしれない人が目の前にいたら恐ろしいだろう。

ましてやアンジェリカはその時5歳だ。無理もない。


そのうちに、前世の記憶と今の記憶がだんだん融和するように、頭の中が整理されてきたと言う。

この辺はミナミと一緒だ。


「それで、思ったのですの。それまで私は自分で言うのもなんですが、本当にワガママな女の子だったのですわ。でもこのままでは断罪されてしまうと思った私は、気持ちを改め、皆に優しく接し、リューク達とも表面上の付き合いではなく、真に友だちになれるように努力しましたわ。そうすれば、あなたが現れても、ひどいことにはならないかもしれないと思ったの」

そう言って、アンジェリカは力なく笑う。

「そうこうしているうちに、あのルートを思い出したの。ほら、あなたがリュークリオンルートに入った時に、私が辺境に飛ばされるだけで済むのがあったじゃない?」

ーあったけ?

と思いながらもミナミは話を合わせることにした。

「そのルートには入るには、私があまりひどい悪さをせず、タクマ様に同情を買う必要があるでしょう?だから、そのためにはタクマ様の中で、私への好感度がある程度必要なのですわ」


アンジェリカの話によると、その他は家族共々流刑や、一番最悪なのは処刑まであって、唯一マイルドなのが、公爵家は存続だが、アンジェリカは家族と絶縁し、監視下で辺境で暮らすというパターンらしい。

そして、その辺境の領主がタクマとのことだった。


ミナミは、ランクレッド家の遠縁の子どものいない伯爵家の養子になる話が、タクマにあった事を思い出した。確かそこは相当な僻地だった。


ミナミは、前世でのわずかな乙女ゲームの記憶をもう一度思い出そうとした。

それと同時に、たいしてやり込んでいない私をどうして乙女ゲームに転生させるかな?!と恨めしくさえ思い始めた。


「だから、私は…絶対にタクマ様の好感度を得たいのですわ!」

そう言った、アンジェリカの顔は真剣そのものだった。


ミナミは何と言っていいかわからず、困惑した。


トントンッ。

そこへ、ドアをノックする音がして、程なくランフォースとランナが部屋に入って来た。


「遅くなってごめんなさい。でも、中々いい資料がありましたわ。アンジェリカ様が気に入って下さるといいのだけど…」


ーそういえば追試の勉強をしていたんだっけか。


ミナミはあまりにも衝撃的な事が起こりすぎて、すっかりそのことを忘れていた。







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