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アンジェリカの3つ

永遠とセシリオに対するアンジェリカのお説教が続きそうだったので、パトリオットが口を開く。

「で、アンジー、今回はいくつだったんだい?」

「そうだった!この女の事なんてついでだ。アンジー、俺たちはそれを確認しにここに来たんだ」


えっ?今この女っていいました??

ミナミは仮にも皇太子ともあろう人が、言い方に気をつけろと思ったが、それより何を確認しに来たかが気になったので、聞いてみた。

「何の話ですか?」

アンジェリカは何も答えない。

これは何かまずいことなのか?

そう思い、部屋を出たほうが良いか考えていると、アンジェリカが気まづそうに口を開いた。

「…3つです」

何が?

「3つだと!?」

だから何が??

「アンジー!!どういうことだ?!追試が前回より増えているではないか!!」

リュークリオンがガクッとうなだれる。

他の3人もため息をつく。


ミナミとタクマとランナは頭が追いつかないでいた。

「えっ?…ちょっと待って…。あの、私の聞き間違えだったら非常に失礼に値するのですが、今、えっと、追試って言葉が聞こえたのですが…?」

ミナミは慎重に言葉を選びながら聞き直す。

不敬罪にでも問われてしまっては大変だ。

「いや、聞き間違えではないぞ。アンジーは、追試が今回3つということだ」

「ええ?!アンジェリカ様が?!」

ミナミ達は信じられないと言った表情で、アンジェリカを見ると、なぜか堂々としているリュークリオンの横で、恥ずかしそうに小さくなるアンジェリカがいた。


「数理、政治学、それから、魔法基礎。この3つが追試になったんだな?」

リュークリオンが確認すると、アンジェリカは小さく頷く。

「なんでなんだ?!アンジー!あんなに教えたのに…!」

リュークリオンが泣きそうな表情で言う。

「本当に…面目ないですわ…」

しゅんとするアンジェリカを見ながらミナミはふと疑問に思う。


貴族はだいたい家庭教師をつけて幼い頃から勉強しているんじゃないのかしら??

あのタクマでさえ、家庭教師がどーのとか言ってたくらいだし、ましてや公爵家のご令嬢なら…。

納得のいかないようなミナミの表情に気づいたのか、アンジェリカが言う。

「昔から家で家庭教師をつけていたので、教養や歴史学、古典文学などはなんとか出きるのですが…他はなんと言うか…。どうもや苦手で…」

「どんだけ教えても本人にやる気がないんじゃあねぇ」パトリオットがお手上げと言った表情を見せる。

「まあ、そんなところもアンジーの可愛いところさ」セシリオが微笑む。

え?どんなところが?流石に甘すぎないか?!

「アンジー、追試に合格するまでバケーションに入れないぞ。つまりだな、そこのミナミとかなんとかを誘って避暑地に行く約束をしていたが、そもそも君が行けないじゃあ話にならない」

この件に関してはリュークリオンがまともな事を言う。

ただ、ミナミとかなんとかじゃなくてミナミですけどね!

「…ですわよねぇ」

アンジェリカもため息をつくのだった。


「しょうがない…私がつきっきりで教えるから、必ず追試を1回で合格させるんだ!」

そう、リュークリオンが気合い十分で言うのとは反対にアンジェリカは顔面蒼白になり、パトリオットの顔を見る。

パトリオットは仕方ないっと言った様子で助け船を出す。

リュークリオンの教え方はスパルタ過ぎて頭に入ってこないのよねぇ。それに、頭のいい人にありがちな、わからないことがわからないから…。

「リューク、僕と君は公務代行の仕事があるだろう?まさか僕にだけやらせるわけじゃないよね??」

「そんなもの…パトリオットだけやればいいじゃないか」

「はぁ?君の父君である皇帝が、言ってきたから僕と君が呼ばれたんだろう??君だけやらないなんてそんなのいいと思ってるの!!」

父の名を出されて、リュークリオンは渋々頷く。

「じゃあ、今回は僕が教えよう」

「いや、セシリオ…またセルジュール嬢に知られたら面倒だ。君はやめておけ。ランフォース、アンジーを頼むよ」

パトリオットがそう言うとランフォースは頷いた。

だが、ランフォースとじゃあ、黙々と問題集を解いて終わりそうだ。


「そうだ!ミナミさん!良かったらアンジーに勉強教えてあげてよ!」

「えっ?私がですか?!」

突然立てられた白羽の矢にミナミは戸惑う。

「いいじゃない!ミナミさん、教え方がとても上手だもの!!」

そう無邪気に言うランナ

おいおい、待ってくれよ、それってめっちゃ責任重大なんじゃないの?!

もし追試に合格できなかったりしたら…。

「私もミナミさんに教えてもらいたいわ…!駄目かしら?」

そうアンジェリカに言われて断れるわけがない。

どっどうしよう…私一人でアンジェリカ様の勉強を教えられるの…?

「タクマ!タクマは数理が得意だったわね!ランナさんは魔法基礎が!よぉし!皆でアンジェリカ様の勉強を見ましょう!!」

「えっ?いや…ミナミさんの方が点とってたような…」

「みんなで勉強した方がはかどるってものよ!どうかしら?アンジェリカ様!」

ミナミは二人に反論の隙をあたえずアンジェリカに返事を促す。

「もっもちろんですわ」

なぜか頬を染め、アンジェリカがそう答えるのであった。

「みんなで気持ち良くバケーションを迎えたいもんな。頑張りましょうね、アンジェリカ様」

そう、タクマがアンジェリカに言うと、アンジェリカは恥ずかしそうに頷くのだった。

追試に、なったことがそうとう恥ずかしかったのかな?と思うタクマであった。

「ランフォース…アンジーとあのタクマってやつを絶対に二人っきりにするなよ」

リュークリオンがランフォースに耳打ちするのであった。


ー寮にて。


「もう!勘弁してよ~!アンジェリカ様に勉強をお教えするなんて私、無理よ?」

男爵家の娘が公爵家の娘であるアンジェリカと会話するだけでも凄いことなのに、ましてや何かを教えるなんて、曲がりなりにも貴族として育ったランナには、あり得ないことであった。


「いや、あなた、真っ先に私を差し出そうとしましたよね!?」

「いや、あの時は頭がふわふわしてて…なんか非日常的な?普通にミナミさんが、教えることが上手いことしか頭になくて」

「…本当にぃ??」

疑いの目でみるミナミを、ランナは愛想笑いでごまかそうとするのであった。

「…ところで…今日は色々衝撃が多すぎて…なんか眠れそうにないわ」

ランナがため息をつく。

「確かに色々ありすぎて、濃すぎる1日だったわね…私がセルジュールさんに絡まれたことに始まり、セシリオ様がそのセルジュールさんの婚約者だったとか、極めつけはアンジェリカ様が追試を3つもとっていたなんて!あっ!ランナさんがタクマにお姫様抱っこされて、運ばれたりもしてたわね~?」

「もう!やめてよ…思い出したらまた恥ずかしくなってくるから!…でもなんというか、リュークリオン様って…うん、なんというか…」

ランナが一生懸命言葉を探しているようなのでミナミが助け船を出す。

「ああっ!想像以上に残念な感じでしょ?近くで会話しないと気づかないわよね~(笑)」

「ちょ!…私は別にそんなこと思って…」

「ここは二人きりなんだから、不敬罪も何も無いわよ!そもそも本来なら身分関係なくって学園ではなってるはずなんだしさ」

そうミナミが、いうのでランナは思わず笑ってしまう。

「それもそうね。でも本当にびっくりしたわ~。リュークリオン様があんな感じだったなんて。勝手に紳士的でお優しい方だとばかり…いや、アンジェリカ様には凄く優しいのだけど、それもちょっと過ぎるというか…」

「ドン引きよね」

的確なミナミの突っ込みにランナはまた笑ってしまう。

「もう~ミナミは正直過ぎよ!本当…貴族には向いてないわ。あのリュークリオン様とも普通に話してたし、ある意味相性いいんじゃない??」

「げっ。やめてよ!私も現実知って、無いなって思ったんだから!いつまでも黒歴史をえぐられるのは辛いのよ。大体、私が勘違い女なら、あいつは残念王子よ!残念王子!」

「ちょっ!やめてよもぉ~!」

ランナは思わず吹き出してしまう。

こうして乙女たちの不敬な夜は過ぎていくのであった。


くしゅんっ!

「リューク、風邪か?」

終わらない公務を一緒にしていたパトリオットが言う。

「違うと思うんだがな」

「じゃあ、誰かがリュークの噂してるんじゃな~い??」

「ふんっ噂など、気にしてたら皇太子は務まらない」

リュークリオンはそう言って、黙々と残りの仕事を片付けにかかる。


ぶれない男。

周りの反応や噂話など一切気にしない。自分が見たもの、聞いたものしか信じない。

芯のある、まさに皇帝にふさわしい男だ。


ーただ、決めたことにこだわりすぎて融通利かないところがあるんだよなぁ。それが、自分自身を苦しめなきゃいいんだけど。

「なんだ?サボってないでお前も早くやれ!」

「はいはいっ」

ーまっ、そんな時の為に僕たちがいるんだけどね。

「ハイは、1回でいい!!」

「は~い!皇太子様!」


こうして、貴公子達の夜も過ぎていくのであった。



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