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もしかしてもしかして?私転生しちゃいました?

 窓から差し込む陽の光に照らされ、その金髪は一層輝きを増した。

 形の良い唇、通った鼻筋、やや切れ長の目の中にはコバルトブルーの瞳が揺らめいている。


身長180センチはあるであろう、高身長から伸びる手足はスラっと長く、しかしながら、しっかりとしている。


"ああ、彼が私の運命の人なのね!”


ミナミは胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


私、ミナミは前世の記憶を持っている。

前世は日本のブラック企業に勤めるOLだった。

あまりの激務に心が病みそうだった私の唯一の癒し、それが乙女ゲーム「聖女の学園」だった。


そこで、王道ルートの皇太子リュークリオンに甘い言葉をかけてもらうのが1日の中で私の心が唯一、満たされる瞬間だった。


だが、どういうわけか、今私はそのゲームの世界の主人公としてここにいる。


いわゆる異世界転生というやつだ。


そして、今、目の前には前世で唯一の癒しだった、皇太子リュークリオンが目の前にいるではないか!


高鳴る鼓動は抑えきれるはずもなく。

いつまでも見続けていたい-。


いや、私が主人公なんだから、実際にあんな言葉やこんなことを間近で言われるってことよね?!


私は有頂天で、前世の記憶を頼りに彼とのフラグ作りにいそしんだ。


だがー。


一向にフラグが立たない!

それどころか、むしろ避けられてる?!


なんで?!

どおして??


いや、それもそのはず。


だって……。


皇太子リュークリオンは、悪役令嬢のはずの彼女を溺愛し過ぎてて、私なんて全く眼中にないんだもの!!



さかのぼること、約1年9ヵ月前……。





「ミナミ!!おいしっかりしろ!!ミナミ!」

自分の名前を呼ぶ声にミナミは目を覚ます。

見るとそこには心配そうに見つめる幼馴染のタクマがいた。

「良かった!おまえ、あの木から落ちて一瞬気を失ってたぞ。念のため医者に診てもらった方が良さそうだな…。立てるか?」

どうやら、私ミナミは、あの木の上から落ちて気を失っていたらしい。

「あ…うん、大丈夫!大丈夫…なんだけど」

何かしっくりこないでいる私の様子をいぶかしく思ったタクマは、

「やっぱり医者行く?」

もう一度医者を進めてくるのであった。


心配するタクマと別れを告げ、私は孤児院に戻りシスターに挨拶すると、「今日は疲れて早く寝たいので悪いから夕食はいらない」とベッドに横になった。


そして私は頭の中を急速フル回転した。


えっ?ちょっと待って?私…転生した?!


そうなのである。


どうやら私は俗にいう転生者ってやつで、ここは恐らく乙女ゲーム「聖女の学園」の世界!

私ミナミは、いわゆる戦争孤児で、両親の顔を知らない。

ここの孤児院のシスターに拾われ、つつましくも穏やかな暮らしをしていた。

さっきまでいたのは幼馴染のタクマ。

本当は領主の息子だが、私生児なので家では居場所がないようで、度々平民と偽って街に出ていた。

そこで孤児院に顔を出すようになり、私とも仲良くなったのである。

もちろん、本人からはそんなこと一言も聞いていない。


じゃあ、なぜ知っているって?


タクマはそういう設定だからだ。


さっき頭を打った時、走馬灯のように記憶が流れ込んできたのである。

前世と言うべきか、転生する前の私は、日本の企業ので働いていた普通のOLだった。

勉強することが好きで、それなりの大学を出たが、就職活動で失敗をし、いわゆるブラック企業に入ることになる。

そんな時、高校の友達から勧められて始めたのがこの「聖女の学園」という乙女ゲームだった。

タクマは私の幼馴染のいわゆる攻略対象の一人だ。

艶やかな黒色の髪、グレイかかった瞳の色、ぱっと見は目立つ風貌ではないが、よく見ると整った顔をしている。

面倒見が良く、兄貴分で、困っている人がいるとつい手を貸してしまう。

何かと主人公をを気にかけて面倒を見てくれる、それが「聖女の学園」のタクマだった。

そして名前、ビジュアル、性格もそのままのタクマがミナミの幼馴染であるタクマだった。


一度に情報が流れ込んだせいか、まだ頭がついていかないこともあるが、もし私のこの記憶が間違いじゃないのなら、14歳になる3ヵ月後の花祭りで私が希少な光魔法の属性をもっていることが発覚する。

光魔法は国の保護対象となっているので、身分問わず、国営聖フォース学園に入学することとなる。

そして、私は領主の養女(つまりタクマとは兄妹となる)となり、学園に通うのだ。


正直、半信半疑なところもある。

頭打った私の妄想?やっぱりお医者さん行くべき??


「3ヶ月後…3ヶ月後の花祭りまで待ってみよう。そこで光魔法の属性が発見されなければ、全て私の勘違いだわ」


そう自分に言い聞かせ、ミナミは眠りにつくのだった。

1話に、プロローグ的な内容を追加しました。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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