剣鬼
先生登場です!!
「………ほぉーまさか剣鬼様が出てくるとは、少しばかりゆっくりしすぎたようですね」
幻夜は忌々しそうに、自身と美咲の間に立ち塞がる初老の男を睨んだ。
「フォフォフォそんな事はないぞ小童、後1秒でも遅かったら此奴の首は吹き飛んでたじゃろう、
にしても美咲よ、こんなに分の悪い賭けをしたんじゃ?」
「先生が来ないわけがないじゃないですか、弟を泣かせたくないのは先生も同じでしょ?」
「こりゃ一本取られたなぁ……だが美咲お主はもう助からんぞ、その出血量に治癒師は根こそぎ 抑えられてる。
逃げる事はできても、生き残れん」
剣鬼と呼ばれる、初老の老人は美咲と涼の師匠である
国防軍総元帥の愛山凪である。
美咲は、特殊部隊の最高責任者としての元帥。
その他にも、陸、海、空軍にもそれぞれ元帥が居る。
そしてそれらを一括して命令権があるのが、凪である。
剣鬼と呼ばれる所以は、彼の剣筋と刀を見れば誰でもわかる。
「なぁ小童共よ、ここは一つ見逃してくれんかのぉ?後3分もしないうちに私の部隊が到着するだろう。
この場面だけ見れば拘束する理由は十分じゃ、お主達も逃げたいじゃろう?どうも此奴が奮闘したおかげで重症者がおるようだし……どうじゃ?双方利益しか話じゃが」
しばらくの間沈黙し
「………その提案受け入れよう」
幻夜が刀を引いた。
「冷静は判断じゃそれじゃの」
凪は、意識が朦朧としている美咲を担ぎ人間とは思えない速さで、その場を後にした。
「幻夜あれで良かったのか?」
先ほどまで煩かった戦場が、撤退を始める不死鳥と金鶏の軍靴と指示を出す声しか聞こえなかった、そんな中
東条が幻夜に話しかけた
「俺ら全員で掛かれば元帥の息の根を止めることぐらいはできたはずだが」
五藤も同じく話しかけてきた。
「……そうしてたら狄斗に北条まで死んでたぞ。見ろ元帥の鞘無いだろ?今さっき剣鬼に回収された。
お前達は剣鬼が鞘を回収するのを感じれたか?俺も拾い上げるのを見てから反応できた、誰も反応できてないんだ。最悪全滅していたし、重症の狄斗にA級の北条なら確実に殺られる。
そして戦術の面でも、今の交渉は我々の方が利があるぞ、元帥の首を取る事は大事だが指揮官クラスにA級治癒師を失う事は事実上負けだ、これを見ろ元帥からでた血だ常人だったらとっくに死んでる。
剣鬼が言ってたように元帥は死ぬ確実にな。
そう考えると無理して指揮官クラスとA級治癒師を殺してまで瀕死の敵を殺すのは分が悪いだろう?」
「だが、国防軍に俺らのクーデターがバレてしまったぞ」
「………それは少し誤算だが特殊部隊と国防軍の指揮系統は違う、独立宣言をすれば影響を受けずに済む
結果だけ見れば、こっちには重症者1名で世界最強のSS級能力者を殺したんだ」
「そうかもだが元帥が確実に死んだとは不明だぞ、それに元帥が持っている研究ノートの奪取も失敗に終わった、情報の入手する手段は全て失った事になったぞ」
「………そうかもしれないが、情報はいくらでも手はある、候補地をしらみ潰しに探せば良いんだ」
「これで一区切りはついたのか」
「………さぁ喋ってないで足を動かせ、さっさと撤退するぞ」
「先生」
「ん?どうしたんじゃ?もうすぐ涼に会えるぞ、そこまではあまり喋るな血がでるぞ」
凪の黒い軍服は、腰から足まで、美咲の血で染まりつつあった。
卯月家までは後1kmも無くこのままのスピードいけば、10分もしない内に着くであろう。
「今のうちに遺言いいかな?涼には聞かせられないからね」
「……言ってみろ」
「ありがとう先生」
「涼を立派な煌剣使いにしてあげて、そして私の研究結果を教えてあげて。
それをどうするかは彼次第、破壊して見ないことにするのもよし、取り込むのもよし先生が1番使い方を知ってるでしょ?使い方を求めれれた教えてあげて」
「………分かった」
「あ、後これも伝えて、絶対に絶対に命を投げ出そうとしないで、必死に必死に生きて生きて何か、生きる目的探して。週末剣を買ってあげられなくなってごめんね、約束を守れなくなってごめんね」
「・・・・・・・・・・・」
凪は思った、死の淵に立っているのにも関わらず美咲は、死を恐れていなかった、弟に二度と会えなくなる事を恐れていたのだ。
過去の涼と美咲の両親がそうであったように。
死を恐れない美咲……さすが元帥ですね
次回は凪の回想シーンになります
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この続きは前話の「舞鶴事件」です
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