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「結婚式」

 円状の石組みは段になっておりそこに椅子が配置されている。それは観衆用の座席で、この出来上がったコロッセオの闘技や歌を見たり聴いたりするために設けられたものだ。

 今日はコロッセオの落成式でもあり、ある二人の男女の結婚式でもあった。

 中央に設けられた木組みの段の上にその二人はいた。一人は煌びやかな衣服で、もう一人は純白のドレスであった。

 煌びやかな衣服の主、シンヴレスが手を振ると、観客達は声を上げた。何を言ってるのかは分からないが、熱烈な歓迎を受けているのは確かだ。

 加工した鉱石ドラゴンオーブを口元に当て、皇帝エリュシオンが手短に挨拶を済ませる。そしてドラゴンオーブをシンヴレスに手渡した。

「あ、あー。よし。皆さん、初めましての方もいるかもしれませんが、私がシンヴレスです。この度、私の隣に居られるべリエル王国の姫君、サクリウス様と結婚をします」

 観客達が祝福の声を上げる。

 シンヴレスはガランから招いた司祭プワブロにドラゴンオーブを渡した。

「それでは、挨拶も終わりましたので、誓いの口付けをお願い致します」

 シンヴレスはサクリウス姫の方を向いた。相手もこちらを見ている。もう、サクリウス姫がシンヴレスに合わせて腰を落とす必要などない。シンヴレスの背は突然伸び始め、サクリウス姫を少しだけ追い抜いていたのだ。

「サクリウス姫」

「はい」

 シンヴレスはサクリウス姫の肩に手を回し、ゆっくり唇を近付けた。

 そして唇が触れ合った瞬間、観客達はまたも祝福の声を上げた。

 上空をウィリーとヴァンのドラゴンが駆け、空の警備に就いている。

 来賓席にはドラグナージーク、ルシンダ、リカルド、べリエル王にベリエリ王妃アナスタシアが座り拍手を送っていた。

 ドラゴンオーブを持ったプワブロが、声を上げて言った。

「ここに竜に祝福されし新たな夫婦の門出となりました!」

 観客達の割れんばかりの拍手一色になり、シンヴレスはサクリウス姫を見て、その大きくなったお腹に触れた。まだ見ぬ二人の赤子だ。名前はまだ決めてはいない。

 それからは普段着に着替えたシンヴレスとサクリウス姫は、鬼とカーラに護衛され、叔母のルシンダのオーブで拡声された綺麗な歌声を聴きながら、帝都へと戻った。

 本当はルシンダの歌も、ドラグナージークとリオル王の剣舞にもアーニャの百人斬り演舞や他のイベントも全て見たかったが、思いの外シンヴレスは緊張し、疲れてしまったのだ。

「御曹司、いや、皇子殿下、この度は真におめでとうございます」

「二人とも、おめでとう」

 馬に乗りながら閑散とした人気の無い城下を進む。途中、巡回していた兵達に何回か出会い、敬礼された。

「ありがとう」

「今度は鬼殿と、カーラの番ですよ」

 サクリウス姫が言うと、二人の護衛は顔を赤くさせ、チラチラお互いを盗み見ていた。

 その様子を微笑ましく思い、貴族街を抜けて城へと辿り着いた。

 居残った兵士や文官、メイドに侍女らが口々に畏まって祝いの言葉を述べてくれた。

「今日ほど良い日はないかもしれない」

 二人の部屋に着くと、椅子に座り、シンヴレスは熱狂に興奮している心を抑えながら言った。

「そんなことありませんよ。今日より良い日を私達で作って行くのですから」

 サクリウス姫は自分のお腹の触りながら微笑んだ。

「そうですね。ところでまだ見ぬ長男か長女の名前はどうしようか?」

「今は頭の中が会場の声と拍手の音が残っているようで、上手く考えられません」

「私も同じです。さぁ、お互い疲れたみたいだし、二次会まで寝ておこう」

「はい」

 大きな一つのダブルベッドはこれから尚も愛し合う二人にとってちょうど良い大きさであった。だが、横になる前に二人は思い出した様に頷き、目を閉じた。

「竜の神に感謝を。この巡り合わせに感謝を」

 シンヴレスとサクリウス姫は揃ってベッドに座り、そう祈りを捧げたのであった。



 シンヴレス皇子はサクリウス姫が大好き。 fin

 最後までお付き合いいただいてありがとうございました。深くお礼申し上げます。

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