幕間001 ラ・メール王国国王、激怒する!
碌なスキルもない無能な小娘が騎士に連れられて部屋を退出していった。
「ダグ、これからどうする? 儀式を行った魔法師団長含む精鋭5名はしばらく使い物にならんぞ」
幼いころからの友人である、宰相タオ・グイ・オーランドが私に問いかけてきた。
「・・・ウソの報告をした魔法師団長は奴隷落ちにする」
そもそも、異世界からの稀人召喚を持ちかけてきたのは、魔法師団長のディークである。
一般には詳しく知られていないが、300年ほど前に異世界より稀人召喚があった事は、我が国の資料と4か国協議の際に確認したので真実らしい。
稀人が何処から来たのかは不明だが、召喚された本人の第一声は「まさか創作物の・・・しかも二次創作の私が生を受けるとは・・・18禁の存在なのだが、いいのだろうか?」と伝わっている。
異世界からの召喚者は、己を【獄✝炎の征服者ギルガハーン】と呼称し、右手には暗黒竜・左目には邪気眼、手には聖剣エクスカリバーンを装備した最強の男性だったようだ。
「創作が全て現実に・・・すごい!」と自身の覚醒した真の力に喜んだと伝えられている。
そして、魔族がいることを知った召喚者は、当時良好な関係を築いていた魔王国に勝手に攻め込んでは乱暴狼藉の破廉恥の限りを行った。
当時の魔王(その時代は魔王は一人)も倒してしまう。
最終的に、意気揚々と「ハーレム国の建国じゃ〜!」と凱旋してきた召喚者を油断させた後に討ち取ったらしいが、それ以降魔王国との関係は最悪になった。
乱世の原因になった力を欲するのは本末転倒な気がしたが、隷属の腕輪等で制御出来ると説得されて召喚を行ったのだが・・・
「まさか碌なスキルを持たない、一般人が召喚されるとは」
「ダグの好みだと思ったが・・・舐め回すように見てただろ」
「そうだな、すぐに寝室に連れ込みたかった・・・あのスキルがなければ」
その時、顔を引き攣らせた騎士の一人が足早に現れた。
「報告致します!近衛騎士団長のカルロ様が、召喚者に手を出し金的攻撃を喰らいました」
「ぶはっ!!!あいつは堪え性がないな」
「くくく・・・ダグの言う通り確かに危険だったな、戦場では使えんが」
たしかに、ある意味強力ではあるが女性には無意味だし、戦場では使えんな。
この世界は男性は筋力、女性は魔力が強い傾向ため、戦力的にあまり格差はなく、男性限定の力では意味がないのだ。
「ツテもなく露頭に迷ったところで、拾い上げれば大人しくなるだろう、その時まで・・・な?」
「ふふふ、悪いやつだな」
「引き続き、召喚者の監視を続けろ」
「はっ!!!」
さて、最近落としたメイドとシケこもう、と思っていたら・・・・
「みなさん!!!聞いてください!!!」
思わず耳を傾けたくなる、心地よい音声が響き渡った。
転生者か?こんな事が出来るのかと、少し驚きながらも宰相と笑って聞いていたのだが・・・
「そして、言葉も分からず動揺する私に、いきなり隷属の腕輪を付けようとしました」
「しかし、こちらも習得する際に、王への絶対服従の思考を植え付けられるという悪質な罠がありました」
・・・隷属と言語を看破した?スキルとして表示されない魔力感知の力が強いのか?
「罠は回避出来ましたが、今後どんな恥辱を受けるか・・・私は隠蔽魔法を使い、ステータスチェックで最低値が表示されるようにしました」
ははは、隠蔽魔法だと!?あの魔道具に対して隠蔽できるわけがない!うちの魔法師団長でも無理だ。
「ちなみに、先程兵士を伸したことで分かると思いますが、実際の存在値はレベル127です」
・・・盛り過ぎだな、50が最高なのだ。せめて30台なら多少の信憑性もあるだろうが。
「その言葉を順守するため、私はこの国に対し宣戦布告致します!!!」
「お前ら!!!レディース【同盟】総長のサマンサ様に手を出して、この国が無事で済むと思うなよ!!!」
・・・やつは愛人にしたかったが・・・まあ良い、もう見逃すわけにはいかん。
「宰相タオ、我が国の国父たる私を冒涜した罪は重い!殺せ!」
「御意、王の望みのままに!」
抹殺指示のために退出する宰相を見送り、私は玉座に戻り報告を待つ。
その後、命令を終えた宰相と合流し続報を待つのだが・・・・
「正門を守る兵士達が倒されました!」
「城前の広場半壊!正門も破壊されました!守衛も全滅!」
「城壁が次々に破壊されています」
「鎮圧に向かった先行騎士隊32名、魔道士6名、皆逃げ出しました!」
・・・・夢でも見ているのだろうか?たかがレベル2の小娘に?
「ダグ、隠蔽魔法というのも間違いないのかもな、このままでは不味いぞ!」
「分かっておる、おい!第三王子に討伐指示を!聖剣マキナ様を含めた完全武装でな」
「はっ!」
「それと念の為、後詰めに城の入り口に第一から第三騎士団すべてを配置しろ、魔法師団もだ!」
「はっ!」
「そして王都の外に5千の兵士たちを配置して、ネズミ1匹たりとも逃してはならん!行け!」
「はっ!」
国王達より矢継早に指示を受けた近衛騎士たちが、各所へ伝達に向かう。
「聖騎士スキルを持つ第三王子と国宝の聖剣「マキナ」を使うか・・・後が面倒であるが」
「ああ、報奨に王位継承第一位にしろと騒がれるだろうが、聖剣マキナを最低限でも使えるのは、やつしか居ない。仕方がないだろう」
少しは力があるようだが、私を激怒させたことを後悔させないとな。
我が国の宝刀、あの聖剣マキナの力を見て怯えるが良い、小娘が!!!
だが、意外と強い小娘に対して、ひとつ不安な事を思いついてしまった、タオも同じだったようで。
「・・・なあ、ダグ。聖剣マキナを稀人が使えるなんてことはないよな?」
マキナ様は意思があるが、使用者登録が必要なので大丈夫とは思うが・・・確かにそういう可能性も想定したほうが良いか。
「念の為に対魔王捕縛用の魔道具を用意しておけ!」
「・・・あれは再利用出来んぞ」
「あくまでも念の為だ、過去の稀人召喚の例もあるので、万全を期すべきだ」
軽い気持ちで承諾した稀人召喚だったが・・・どうしてこうなった!なぜ、何一つ上手くいかなかったのだ!?
<伊月サイド>
「みんな、この国の名前ラーメン王国だってよ!なんか美味しそうだよな!」
『『『・・・ラ・メール(だよ)(じゃ)(でござる)』』』