040話 総長、家族の濃ゆい愛情に辟易
イツキが生まれてから一週間が経った。3日間は全く反応がないので少し心配だったが、その後は元気に過ごしている。
そんなイツキを日々抱いていると、胸の内から熱い何かが出てきて・・・もう居ても立っても居られない。側にいないと、とにかく不安で・・・日々イツキにベッタリだ。
そして、その我が子を狙う猛禽類が3人。スキがあればイツキをさらうお母様。イツキを抱く私ごと抱きついて離れないお父様。そして寝込みを襲うイザベルと、最近はイツキ争奪戦を繰り広げている。
兄二人はそんな光景を苦笑しながら見ているが、時折、私に許可を貰ってから抱いている。やはり可愛いとは思っているようだ。
それに比例してイツキからの苦情も増えている。今日は『なあ、お母様よ!・・・お祖母様に言ってくれよ!オシメの必要ないのに、一日何回も着脱されるんだよ〜』『「これが夢だったの〜」とか言って、断りづらいし』とか話すイツキが可愛い!と、ギュッと抱きしめる。『ここにも親バカがいたか・・・』と諦めムードだ。
色々と話しを聞いていると、イツキは生まれた時から、将来の成長を危惧した深淵帝(外道!)から瘴気攻撃を受けており、その影響で周りから気味悪がられていたようだ。で、3歳の時に『氣』の力に目覚めて、さらに嫌悪されて4歳の時に逆に親を叩き出したそうだ。その後はトメという女性を拾い同居して生活していたそうだ。
このトメさんには可愛がられたが、親の愛というのが未経験でこそばゆいらしい。
もうね!これを聞いた家族は、それはもう!・・・もうね!イツキへの愛情が倍増した感じになった。24時間常時2名はイツキに張り付く感じになった。お父様はさらにヤバくなり、兄たち二人もあまり遠慮しなくなった。
イツキはげんなりしているが『まあ、これも経験か・・・でも後少し』と何やら企んでいるようだが・・・それも可愛い!と、ちゅ!ちゅ!すると呆れられた。でも仕方がない!これが母性だ!と開き直ることにしている。
今日も今日とて、イツキ争奪戦の最中、お父様の手をするりと躱したイツキ・・・えっ!?飛んでる!?と驚いたが、それ程は飛べないらしく、侍女頭の背中に引っ付き逃亡をはかる。
が、それが侍女達の抱っこ理由を与えた。飛んでいると「危険ですので」と、風のように現れて即座に捕縛されて、頬をスリスリ等、可愛がられるそうだ。
まあ、イツキ自身が女性陣を氣で強化したので、ある意味自業自得なのだが。
飛んだ事を聞いたら「超能力」という力で、安定すれば色々出来るらしいが、今は難しいらしく強化中との事だ。
『侍女達、なんであんなに身体強化出来るんだ?』と不思議そうだが、犯人はお母様だ。「イツキちゃんの安全確保!」と侍女達を日々鍛えているらしい。まあ、私にも否はないので放置している。
そんなある日、先に報告した調査の為に、王国の使者が男爵邸を訪れた。
「私は宰相補佐のジョージ・サイジェントです、連絡頂いたお話について確認に参りました」
まさかのサイジェント侯爵の来訪に驚きたいところなのだが・・・サイジェント侯爵の頭上で、七色に輝き点滅する輪っかを見ると笑いがこみ上げる。
それには本人も苦笑していて、出来れば解除頂きたいと話すと、イツキが輪っかを解除した。
応接室にサイジェント侯爵をお通しすると『うん、威厳も必要だね』と言うやいなや、飛行して、既に着座しているお父様の頭の上にうつ伏せで乗り、ペチペチとお父様の額を叩いている。イツキは『威厳だ!しっかりしろ!』と叱咤しているのだろうが、お父様は新しい孫のスキンシップ方法にデレデレで、逆効果だった。
お母様と私も着座して、早速話を始めたいのだが・・・溶けているお父様は役に立ちそうもないため、私から話を切り出す。
「私どもの不明瞭な報告に、わざわざご足労頂き誠にありがとうございます」と挨拶をする。
サイジェント侯爵は私達の領地の親的存在で、顔見知りであるので名乗りは不要だ。
「早速ですが、その子がイツキ様ですか?」と、お父様を見るが既に見限られたようで居ない、今はお母様の頭に陣取っている。侯爵がお母様を見て「ひっ!?・・・暴君!?」とおののいていた・・・お母様、若い頃は相当ブイブイ言わせてたようだ。私が放任されている理由が分かった。
でも、この暴君をお父様はどうやって射止めたのだろうか?
「んんっ!失礼しました、お若いご尊顔を拝して、当時の黒歴史が蘇りました・・・しかし、その若さ、それもイツキ様の力なのでしょうか?」
当然の疑問なのだが、とりあえず眷属の話はせずに「氣」の力を簡単に説明する。
氣使いを育成すれば、ある程度の延命や若返り、または身体強化による戦闘時の戦力向上にもなる、と伝える・・・ついでに、お母様の暴君もパワーアップして復活したと話すと、侯爵は口を引きつらせていた。
「そうですか、それなら私に試して頂いても・・・」というと、お父様が復活!
「あれは駄目です!一週間は死の苦しみに悶ます!意識が朦朧としてお花畑と大きな川が見えました!あれは無関係なものが見たら、侯爵に危害を加えたとして、私共が犯罪者になります!」と体を震わせている。
侯爵は驚きはしたが「他にやり方は・・・」と聞かれたので、女性専用のやり方を説明する。私が後ろから抱きついて、イツキから私経由で丹田に力を与えて30分程処置をする。と話すと、良い悪い以前に妻に知れたら殺されます!と断念した。お母様が「オーガ」は凶暴ですものね、ほほほ、と笑っていた。
イツキが『侯爵夫人がこちらに来れば、処置するよ〜』というので、そのまま伝えた。きっと「オーガ」を見てみたいのだろう。
後で知ったが、貴族学校で侯爵夫人が「オーガ」でうちのお母様が「暴君」、二人で血で血を洗う真っ赤な学校生活を送っていたようだ。侯爵はお父様のお仲間だね、と言ったら「うちの嫁は、あんな獰猛な猛獣ではない!」と怒られた。珍獣と猛獣の違いだけではないだろうか?
取り敢えず、『神かどうかの判断は、あと数年待て』と言っています。と話すと疑問を抱かれた。成人から赤子への変化で、力の調整が難しいこと。魔法は範囲を広げたほうが楽なので、攻撃魔法が見たいならどこかの領都を吹き飛ばすことになる、と告げる。
侯爵は頬を引きつかせながら「ですが、この侵入の魔法などは、それは精緻なコントロールだと思いますが・・・」と侯爵が話すと『あれは、お母様の胎内で半生命体状態だったので、力が使いやすかった』
『今は不安定な上に、生まれた時に力が以前の30倍近くに増えているので、危険』と話す。理解を得るために、金色発光の理由も付け加えると、納得してくれたようだ。
『さわるな危険と覚えておけばいい』とそのまま話すと、苦笑していた。
「では、そちらはイツキ様の成長を待ち判断したいと思いますが・・・教会も含めて敵は多いですよ」というと、イツキはニヤリと笑った。
『自分が弱ければ、周りを強化すればいい。とりあえず、うちの家族を最強にしておく』と聞き、お母様からイツキを取り上げ抱きしめた。「家族」との言葉にキュン!とキタ!キスの雨を降らせる!かわい〜!
皆に説明すると、感動したお母様にイツキを掻っ攫われた!・・・ぐぬぬ、暴君にはまだ敵わないが!負けん!
濃すぎる愛の猛攻で萎びたイツキが『あっ!?』と声をあげる・・・どうしたんだろう?
『そう言えば、私のインテリジェンスソードに代読させればいいじゃん!』えっ!?異常者呼ぶの!?と聞くと、唯一の成功例だそうだ。魂に付属しているので、ついてきているはず!というので呼んでもらった。
『生まれたばかりで、まだ言葉が拙いけどいい娘だよ!・・・絆!居る?』とイツキの側に細身の片刃の剣が現れた・・・刀身が反っていて、色が真っ白の不思議な剣だ。
「ご無沙汰しております、ママ!・・・ようやくお会いできて嬉しいです」・・・まともだ!とイツキを見ると、イツキも驚いている。
『随分流暢になったね?』と聞けば「こちらで大量のエネルギーを頂きましたで・・・ようやく正常に稼働出来るようになりました」ほけーと見ていると、周りが驚きで思考停止しているのに気づいた。
慌てて「イツキが前世で作った剣で、思考が出来る剣、インテリジェンスソードの『絆』というそうです」と説明した。
「あと、イツキの代返が出来るそうです」と話す。
インテリジェンスソードに興味を持った侯爵が「いずれ、献上用で作れませんか?」と聞くと、『あれは、やばい!』と、猛烈に反対していた!思わず吹き出してしまった。
この絆が唯一の成功例で、男同士のまぐわいに興奮する聖剣、男嫌いで村人を斬り殺して封印された魔剣等を説明するも、まだ諦めきれなそうだが『どうしても、というなら作るけど返品NG!責任なしで!』と聞き、ようやく諦めたようだ。『やばい聖剣は、聖剣を所持していた国王を教皇にして、王城跡地にホモを保護するブルーライン教なる施設を建設中。完成予定図見たら男性のシンボルだった。侯爵、あんた王国内にそんなのが建って許容出来る?』が決め手だった。
「最後に、女神メルビナ様のお話ですが・・・」これが一番面倒そうだ。




