幕間007 娘達の進化状況(アリス)
金糸の繭に穴が空き、その繭を食い破った1匹の大きなアリが這い出てくる。といっても20cm程度だが。そのアリはワインレッドに染まっており、その背中には8本のトゲが生えており、それぞれ金色の光を帯びている。体の形状はツノアリのようだ。
「ふ〜 イツキにはひどい目に合ったよ、体中がひどく痛い・・・もう、あの液体には二度と漬かりたくない」
精神生命体といわれる幻獣にとって、さらなる高エネルギーな液体に漬かるのは非常に苦痛ではあった。しかし、痛みの代償として同調に問題のない伊月のエネルギーはしっかりと取り込め、進化を果たしたようだ。今なら自身のステータスも見れる。
<ステータス>
名前:アリス(伊月の長女)
年齢:対象外(不老のため)
性別:女
種族:牙智ナ死酸魂蟻
存在値:対象外
<マスタースキル>
◎軍隊蟻(分体作成・眷属召喚・指揮管理)
◎迷彩色(周囲の景色に同化可能)
<称号>
◎妹の守護者(妹関連の行動には能力が微増)
「ん?種族名が読めない・・・牙智?攻撃と知識を司る? ナ?カタカナなの?もしや十字?わからない。死酸、は酸を吐けるけど、威力は全然なんだけどね〜? 最後は魂?いや魂と蟻を併せて読むのかな?タツキの時は普通だったのにね、う〜ん、あとで伊月に相談してみよう」
ちなみに読み方は『ガチナシスコンアリ』だ。後日、これを知った伊月に大爆笑される。
「ああ、伊月の提案は反映されたようだね。うん、私の攻撃サポートも反映されてる。で、新たな【軍隊蟻】の詳細は、と」スキルの詳細は以下の通りだ。
①天界調査班召喚(隊長:メリッサ 隊員1000体)・・・グンタイアリ(1cm〜1m)
②神域調査班召喚(隊長:ニーナ 隊員5000体)・・・ヒアリ(1cm〜1m)
③土木工作班召喚(隊長:チカゲ 隊員1000体)・・・シロアリ(20cm)
④アリス騎士団召喚(隊長:カチェ 隊員30体)・・・ブルドッグアリ(3m)
⑤親衛隊(仲間達のサポート要員)召喚(【アリス分体のトゲアリ(20cm)】10体 内2体は妹専属報告員)
「これは予想以上だね。では早速! メリッサ!ニーナ!チカゲ!」
「「「はっ!」」」
そこに現れたのは、サイズが1m程の大型サイズのグンタイアリの天界調査班隊長メリッサ、サイズが1m程のヒアリの神域調査班隊長ニーナ、サイズが20cm程のシロアリの土木工作班班隊長ニーナ、なぜか配色はすべてワインレッドだ。
「みんなには、今後色々な仕事に励んでもらいことになる、特に伊月はトラブルメーカーだから、忙しくて大変だとは思うけど、よろしく頼むよ」と挨拶をする。
私の愚痴を含めた挨拶に対し「「「・・・は、はい・・」」」と微妙な感じを醸し出した3体。・・・イツキと何かあったのかな?すると、私の不審げな雰囲気に気付いた、中央にいるニーナが話し出す。
「・・・いえ、あの〜・・・その、イツキ様は・・・・そ、その・・・『私がお姉様よ〜!』と抱き留められて、テンション高くて・・・散々わしゃわしゃされまして・・・疲れました」
「あ・・・理解しました」
あの馬鹿が〜!私にはシスコンだなんだ言ってるくせに!自分は家族バカじゃないか!・・・でも、いいこと聞いた。私の子だからイツキは祖母!ババアだよね、と言ってみようwww
「ま、まあ、それはご苦労様でした・・・では、お仕事の話ね、まずはメリッサ。班総動員で天界マーキュリー全域の調査をお願い」
「はい、分かりました」
「それと、ニーナは神の座を含めた神域の調査を班総動員でお願い。出来ればアカシックレコードを抑えて、継続的な情報ルートを確立して欲しい」
「了解しました」
「チカゲは、イツキが中途半端に壊した城を全壊させて欲しい。力を付けたイツキがやると大惨事になりそうなので」
「分かりました。とりあえず100体いれば問題ないです」
「では、解散!」
これでイツキに頼まれていたことはこなせそうだ。・・・さて、これからが本番だ!!!
「騎士団長カチェ!親衛隊の妹専属調査報告員招集!」
「「「は!」」」
こちらの部隊もすべてワインレッド。イツキはこの色が本当に好きなんだね。・・・なら部隊名はアリスの赤備え(あかぞなえ)かな。いいね!
「まず、親衛隊の妹専属調査報告員!」
私の呼びかけに、少し嫌そうな顔のアリさん2体が前に、私と同体のトゲアリだ。
「我が天使たち、イツキ、ムースの監視は最重要任務だ。それに妹達の萌えショットは一瞬たりとも見逃すな!」
我ながらシスコンだとは認識しているが、家族なので合法だ!すると、妹専属調査報告員の2体が言いづらそうに話し出す。
「実は、イツキ様から『動画はイツキ様経由で』『画像はイツキ様経由で』『行動報告は概要のみ(イツキ様には詳細報告)』と命令されてます」との事だ・・・イツキ!!!!
でも萌え動画・画像は確保出来そうだ、親バカ伊月は我慢出来ずに周りに自慢する傾向があるので問題ない。
「あと、それが破られたら、即時に妹達にイツキ様から誇張盛り盛りでキモい行動を告げ口されるとの事です」・・・駄目だ!イツキに有ること無いこと報告なんてされた日には、妹達に勘当されてしまう!
「・・・それでお願いします」
「「分かりました」」・・・悲しい。いや、まだやることはあるぞ!!!
親衛隊が戻った後「騎士団長カチェ!」
「おうアリス様!残念だが妹殿関連の軍事行動は概ねイツキ様から禁止されてるぞ・・・シスコンも大概にしろよ!」・・・イツキ〜!!!!
あんた達私の部下でしょ!と言うと
「無理に決まってんだろ!魔力供給はイツキ様だぞ!自由に使いたかったら、アリス様が供給しろよ!」
それで、力の供給にノリノリだったんだ!退路をすべて塞がれてるよ・・・だいたいイツキが出動すると過剰戦力になるの、いい加減分かって欲しい。
がっかりしていると「イツキ様より伝言だ『妹達への過剰行動に対しては、騎士団全軍で粛清しろと厳命しているので、安心して・・・ちなみにアリスと立花が対象よ』だそうだぞ。もう一人は幻獣キチらしいな?」
「・・・それで問題ないよ、手を抜かずにね」と答える。
「おいおい、お前も含まれてるけど本当にいいのか?」と聞かれたが、妹を悲しませる存在は即キル・・・たとえ私でも、だ!と話すと「やばいな、こいつ」とドン引きされた。
しかし、ここは妥協しないのだ!と話すと「イツキ様の言った通りだな。でも信念を通し切るのはよし!」と上から目線で納得された。
まあその点は否定しない。私は真正のシスコンなのだから!!!声を大にしていえるぞ!!!
一通りの指示が完了したところで、タツキとムースの繭から音が聞こえだす。なんか二人が出す音までもがかわいい!・・・はっ!?動画、動画!!!
「早速、妹専属報告員招集だ!」
・・・24時間年中無休でシスコン絶好調だ!