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幕間004 ラ・メール王国国王、己の愚かさに気づく

2022/9/25 内容を一部修正

国王 ダクテート・ユグド・ラ・メール は頭を抱えていた。


万全を期して、聖騎士である第三王子のフェルテートに聖剣マキナを帯剣させて送り出したが、あっさり撃退されたとの報告が・・・我が国の守護神たる聖剣マキナが負けただと!


我が国はお世辞にも強兵というわけではないが、神剣と讃えられる聖剣マキナの威光により、他国からの侵略から守られている。

この威光に強靭な異世界人を加え、私を英雄王と称僭して世界統一を宣言、各国への軍事進攻を行う考えだったのだが・・・

先程、ようやくこの話を聞かされた宰相で王の友人でもある タオ・グイ・オーランド は呆れ顔だ。


「聖剣マキナ様と異世界人の二柱で周辺国の牽制強化と思っていたが・・・口説いている女への寝物語を本当に実行だと!?馬鹿か!!!」と、国父たる王へ辛辣な言葉を放っていた。

「ここまで無能だとは・・この問題が終息したら、お前を退位させて第一王子マクシミリアン様に王位を継がせる。分かったか!」

たかが宰相に癖に・・・とは言えない。何しろオーランド公爵家は政治のみならず軍事にも精通している。また、幼い頃からの親友なので、過去のやらかしはすべて把握されている。


宰相のお小言を聞かされていると

「ご報告します!第三王子フェルテート様がお戻りになり、宰相様に面会を申し出ております」

との朗報が・・・聖剣が無事だったか!「通せ!」と宰相。

私をないがしろにした言動には腹が立つが、今は早く報告が聞きたいので黙る。

フェルテートが入室してくるが、聖剣を鞘に収めていない。様子も何かがおかしい。


『宰相、ちと話があるのがよいか?』この生意気な言動にカッとなり

「フェルテート!!!貴様国父たる王になんた」

「静かにしろ!」と宰相に阻まれた。なんでだ!?

そして、宰相はフェルテートの前まで移動して、ひざまずいたではないか!?

・・・いったいどういうことなのだろうか?

「マキナ様、どの様な要件でしょうか?」

ん?マキナ?あいつが?なにを言っている?と訝しんでいると

『実はな、我を祀る宗教を作って欲しいのだ』・・・意味が分からん。

「・・・私どもは、既にマキナ様を敬愛しておりますが?」

「いや、我を頂点としたガチホモ教を作りたいのだよ。そのために神殿も欲しい」

・・・・????


「あ、あの、ガチホモ?・・・ですか?あの男同士の同性愛の」

さすがの宰相もシドロモドロだ、なんか気分がいい。しかし、本当に聖剣マキナが話しているようだな。フェルテートとは明らかに感じが違う。

『宗教名はブルーライン教にする。でだ!ホモは最高だ!男達のほとばしる・・・(云々)・・・』

『・・・でだ、イツキよりこのような提案・・・(云々)・・・・』

30分ほど程、卑猥な情報を聞かされた・・・私はこんなのを旗頭に戦争を考えていたのか。


「・・・分かりました、今回の騒動が片付き次第、準備に取り掛かります。ただ、側は用意いたしますが、人員や運営はマキナ様が管理される、ということでよろしいでしょうか?」

「ふふふ・・・人材はイツキが集めておるので心配ないわ」

・・・イツキ?我が国宝の聖剣をたぶらかしたのはそいつか!?

「失礼ですが、イツキとは、どなたのことでしょうか」宰相も同じ考えのようだ。

「ほれ、外で騒いでるサマンサ?だったか、実はイツキという名なのだよ。イツキはガチホモ神に愛された、まさに聖女だ!!!我もイツキの貢献度を加味して、ブルーライン教の枢機卿の地位を与えるつもりだ」

光り輝く聖剣マキナ様は死んだ・・・私はいったいどうすればよいのか?もう頭がついていかない。


「マキナ様、大変申し訳無いのですが、イツキとやらは我が国の敵!例の魔道具での封印も考えております。たとえあなたと敵対しようとも!」

・・・何を言っているのだ!腐ったとは言え聖剣マキナを敵にしては、我が国が立ちいかなくなるだろ!!!

と、宰相の言動に私は慌てたのだが、マキナ様は逆に嬉しそうた。


「ふふふ、やはりお前は見どころがある。安心しろ、何をしても文句は言わん・・・ただ、イツキに敵対した時点でこの国はもう終わりよ。これを心得て道を選択せよ」

「はっ!心得ました」・・・やはり分からん、これは宰相に丸投げだな。

イツキがこの言葉を聞いたら、こいつ誰?えっ!?マキナなの!って思うことだろう。

だが、宰相にとってはこちらが聖剣マキナである。もしや洗脳された?と訝しんでいた宰相も安心して対応にあたる。

「まあ、経過を観察させてもらうぞ・・・ところで近衛騎士団長はいずこだ?」

「カルロでしたら、サマンサ・・・ではなくイツキの金的攻撃で医務室送りになっています」

「・・・そうか、なあ宰相よ。フェルテートが受けで近衛騎士団長が攻め、いいカップリングとは思えんか?あとで二人の交合を見たいのだが・・・」

「いえ、あの、それは・・・本人たちの同意が得られれば、はい」


宰相がしどろもどろになったところで、新たな報告が

「ご報告します!第一から第三騎士団、すべて壊滅しました!」と、驚きの報告が持たされた。


詳細を聞くと、その内容には飽きれるばかりだ・・・我が騎士団は馬鹿なのか?

「タオ、この騎士団の失態はなんだ?なぜ敵に背を向けたあげく、敵前で演説を始めるのだ?意味が分からんぞ!」

最もな疑問の回答を求める。

宰相タオは汗だくになりながら「・・・おそらくですが」と過去の出来事を話し出す。


300年ほど前の異世界召喚者のやらかしで、魔王国との関係が最悪になり、我が国へも侵攻が始まった。その際に雲霞のごとく迫りくる魔王軍を目の前に、砦の門を開け放ったうえで、敵軍に背を向けながら、部下に対して平然と演説を放った剛毅な将軍がいた、そのものの名はセル・モントール将軍。

大軍を前にしても物ともしない勇猛な行為に、敵は怯え恐れをなして撤退したそうだ・・・こんなホラ話、ありえないと思うのは私だけか?

「おい、さすがにホラ話だろ?」「ごく・・・一部は事実です」と、宰相は真実を話し出す。


真実は、聖剣だのみで無謀にも籠城せずに砦前に兵士を配備。で、敵勢に怯えて逃げ出そうとして(門を開門)いる兵士を「もうちょっとで聖剣来るから、ね!お願い!」

と一生懸命になだめ引き止める将軍。その名はセル・モントール将軍。

その後すぐに聖剣帯剣者が到着したので(雲霞のごとくではない小規模の)魔王軍は引き上げた。とのことだ。

後にその将軍の子孫が(華美に装飾して)武勇伝として広めたそうだ・・・・そのホラ話を信じて実行したのか?馬鹿すぎて頭が痛いな。

さすがの宰相も言葉はないようだ。


「仕方がありません、私が魔道具で封印して参ります・・・よろしいですねマキナ様」

・・・おい、まず私に確認だろう!?

「出来るものなら、やって見るが良い。骨はブルーライン教で拾ってやる。お主と後ろの友達とやらは相性いいぞ」・・・・なぜか背筋に悪寒が。

「では!」と、魔道具を手に部屋を去る宰相であった。


・・・おい、何気に逃げたよな?腐剣から。私もこいつと一緒の部屋にはいたくないんだけど!?

だが、いい機会だ。マキナ様にイツキとは何者なのか?確認してみよう。

「マキナ様、イツキとはそれほどのものなのでしょうか」

「お主のような無能に話す言葉はない」・・・く!?なんと腹立たしい聖剣よ!

その瞬間、凄まじい衝撃が私を襲う「な、何事だーーーーー!!!」と喚くが、この部屋にはマキナ様(体は第三王子)と私しかいない。もどかしく報告を待っていると・・・


「報告いたします。城直上に巨大な光る蛇が現れ、その口から怪光線を発して4つの尖塔がすべて破壊されました」・・・・蛇!?イツキによる攻撃ではないのか?もしや魔物のスタンピードか!?

さらなる衝撃音がした後、別のものが報告に現れた

「報告致します。魔族の小隊が王都の正門に進行中。城の周囲を守っていた軍五千が対応のため持ち場を離れ、魔王軍撃退のために正門に移動中です」

「どういうことだ?小隊ごとき、ただ正門を閉めればよいだろう?なぜ持ち場を離れた?誰が命を下したのだ!」

「・・・功を焦った独断と思われます」

・・・呆れてしまった。ここまで我軍、我が騎士団はひどいのか。これで世界統一とか、タオに怒られるわけだ。そして、私もその無能のメンバーの一人、いや筆頭だったか。


しばらくして、真っ青な顔をした宰相が戻ってきた。

「無事、イツキとその取り巻きを封印して参りました」「・・・そうか」

「????」宰相は訝しげだが、早めに譲位した方がいいな。

「タオ、私は自分の無能さを認識した。早めにマクシミリアンに譲位したいと思う。準備を頼むぞ」「!!!!ははっ!」


うなだれながら自室に引き上げる無能な王のお尻をじっと見つめる聖剣マキナ

「うむ、無能だが受けとしては合格だ!・・・イツキの帰還が楽しみだ。入信手続き、頼むぞ!」


いつでも平常運転のマキナ様である。



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