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65. 寝返ったシルファ 

『採点が終了しました! なんと、驚きの結果が!』


 司会進行の受付嬢が、第二回戦の結果発表を張り出す。




『満点を叩き出しましたパーティーがありました! これには採点をしてくださった商業ギルドの方々も驚愕しております!』



 当然のことならが、俺たちは満点。

 難易度の高い数論問題もあって驚いたが、この程度であれば学業が本職だった俺からすれば造作もない。



「僕らが2位には付けたのはいいけど、彼女達の『薔薇の乙女』が総合1位だね」


 クレオスは総合順位表を見て言った。


 俺たちが7位から2位に上がったのは喜ぶべきだが、シャル姫達が3位から1位に躍り出たのは危機的状況だ。



『では、暫定1位から3位のパーティーは壇上へ上がってください! いよいよ最後の勝負となりますっ!』



「「おぉぉお!」」

「今年の優勝はどこだ?」

「おい、見ろよ! シャル姫様と『鉄の絆』と、あれはラングフォードの英雄だぜ!?」

「今年の天頂杯のキャストはとんでもねー!」

「こりゃ、最後までわかんねーな!」

「姫様! 頑張ってくだせぇー!」



 天頂杯のクライマックスなのか、観客達も増えている。

 シャル姫が出場しているという噂が広まっているのか、彼女を見に来ている人もいる様だ。




『最後の勝負に臨む前に、皆様に意気込みを一言ずつ語っていただきましょう! では暫定3位の『鉄の絆』さんから!』


『鉄の絆』は、男3人の冒険者パーティーの様だ。

 硬派なイメージを与える強キャラ感溢れる人たち。


「俺達はこの街で最強。それを証明するだけダ」


『なるほどなるほど。では、優勝賞品の”惚れ薬”を手に入れたらどう使いますか?』


「賞品に興味はない」


『おっと、流石は『鉄の絆』! 求めるのは最強の二文字だけ! ということでしょうか。これはカッコイイですね。続いて、暫定2位の『月と愉快な仲間達』さん! 意気込みは?』



 俺たちに話を振られ、クレオスとシルファは俺を見た。


 ーーあ、俺が答えるのね……。

「勝負内容次第ですね。まぁ、どんな内容でも最善を尽くしますが」


『おっと、2位とは思えない消極さ。ちなみに、”惚れ薬”を手に入れたらどう使いますか?』


「んー……。本当に効くなら成分を分析して原理を解明するかな。まぁ無理そうなら厳重に管理してヤベェ奴に渡らない様にしますかね」


『なるほどなるほど。よくわかりませんが、どうやら随分と特殊な性壁をお持ちの様です。』


 ーーなぜそうなる……。


『是非頑張ってください。最後に、暫定1位で最も優勝に近い『薔薇の乙女』さん! 意気込みをお願いできますか?」


 シャル姫が一歩前に出る。


「優勝を確信していますわ。臨む未来は自分で掴むものですから。負けるわけにはいきません」


「なるほどなるほど。力強いお言葉です。では、優勝賞品を手に入れたらーー」


 シャル姫は司会役の受付嬢の耳元に口を近づけて囁いた。


「ヒソヒソヒソ……」

「おっと。ワタシは一介の冒険者ギルドの受付嬢。この街にから追い出されたくはないため、何も聞かなかったことにします」


 ーーおい、今のやり取りなに!? 不穏すぎるんだが!?


 観客達は余興の一つだと思っているのか、気に求める様子もなく笑っている。


 俺だけが強迫観念にも似た衝動に背筋にゾワッと悪寒が走った。



『では、最後の勝負する冒険に必要な資質は……ドルドルドル……』


 司会役の受付嬢がくじを引く。


『デデドン! おっと、これは予想外の資質が求められております! ずばり、料理スキルです!』


「料理だってよ」

「これはまたニッチな」

「いや、野営を行う冒険者に料理力は重要だぞ」

「確かに、遠征の時にレパートリーが少ないと辛いよなー」

「これは優勝はどこになるか……」



『勝負内容は、料理対決! 勝負方法は、観客の中から10名の審査員を募りますので、審査員から一番多くの評価を集めたパーティーが優勝とします!』


進行の女性の声で観客が名乗りを上げる。

「審査員は引き受けた!」

「俺もやるぜ!」

「シャルロット様の手料理だと!? 10万Gゴールド払う! 俺を審査員に!」


『おっと、抽選にしようと思いましたが、オークションにしましょうかね……。』


「汚ねえぞ!」

「ギルド規定を守れ!」

「ヘリカス、ネコババすんなー!」


『コホンッ、冗談はさておき……。では、参加者の皆まさは食材等の用意をしますので、少々お待ちください。追加で必要な食材などありましたら、そちらのギルド職員にお伝えください。』



 ーーはい、勝ったー! 勝ち確! お疲れっした〜!

 俺の口元がにやける。


『鉄の絆』は男3人。勝負内容を聞いて口をへの字に曲げている。どうやら自信はないみたいだ。

 シャル姫もエレナと難しい顔で話し合っている。



「はははははっ。すでに勝敗は決したな。さぁ、偉大なるシルファの料理の腕を見せつけて……って、あれ。シルファは?」


 俺のすぐ後ろにいたはずのシルファの姿がいつの間にか消えている。


「シルファエル君なら、あっちに行っているよ?」


 クレオスの指差す方に目をやると、シルファが『鉄の絆』のメンバーと何やら話し合っている。


 ーー何してんだ?


 二、三こと話し終えた彼女は戻ってきて言った。


「マスター。『月と愉快な仲間達』から離脱してもよろしいでしょうか」


「……は? ……え?」


わたくしは『鉄の絆』に移籍し、決勝戦に臨みたいと思います」


 唐突な脱退宣告に、理解が追いつかずにクレオスの顔を見る。


 クレオスも両手を上げて「僕も知らないよ」と肩をすくめた。


「きゅ、急に何を言い出すんだシルファ……。お前が抜けたら、カップ麺とパスタぐらいしか作れない俺と、雑草を煮込んでスープとか言い出す森霊族エルフしか残らないんだが!?」


「あれは森霊族エルフ伝統の薬草粥なんだけどな……」


「マスターの目的は、シャルロット様を優勝させないことだと認識しております。わたくしが『鉄の絆』を優勝させても目的は達成されるかと思います」


「……いや、まぁそうだけど……」


 ーーえぇー。シルファが何考えてんのか意味わかんねぇ……。いや、まぁデフォルトで意味わかんない奴だけどさ……。

 ーー合理的な解釈としては、3チーム中『月と愉快な仲間達』が優勝するより、俺たちが分散して2対1で『薔薇の乙女』の優勝確率を下げようとしてのことだろうか……。


「ワガママを申しているのは承知しております。マスターのご意志に反し、不利益になると判断される場合には提言を撤回しますがーー」


「いや、まぁシルファがそれを望んでるなら構わないけど」


「……よろしいのですか?」


 シルファも自分で言っておいて驚いている様子。

 俺が反対すると思っていたのだろう。


「シルファにもシルファの考えもあるだろうし、やりたいこともあるだろ。別にいつも俺に合わせなくていいんだぞ?」


「……感謝申し上げます、マスター」


「大袈裟だなぁ。むしろ、いつも献身的すぎなんだよ」


 あまりに身近すぎて忘れてしまう。

 彼女がいつも、俺のために動いていることを。


「それがわたくしの存在意義でもありますから。本能と言っても差し支えないかと」


「本能……ねぇ……。初めて会った時、賭けの報酬で俺が望んだものは覚えてるか?」


「……? はい。……マスターは、わたくしと友人になることを要求しておりました」


「そ。そして賭けには俺が勝った。つまり、俺とシルファとは対等な友人だ。だから、我が儘言って上等だろ」


「ありがとうございます、マスター……。同時に、申し訳ございません……」


 シルファはそう言って謝罪する。


「何が?」


「娯楽的な企画とはいえ、偉大なるマスターに敗北を強いるなどーー」


「ははっ」


 俺の口から笑い声が漏れ出た。


「驕るなよ、シルファ。勝負する前からもう勝った気か?」


「で、ですが……。マスターの料理の腕は……その、独創的で……。客観的に判断しましてもーー」


「……なかなか言いよるな……。だが、お前が偉大なる創造主と崇める旧人類の端くれだ。無様な負けは晒せないだろう?」


「……わたくしに勝利するおつもりで?」


「ああ。勝負は勝負だ。勝負ならば負けれんな。悪いが今度も俺が勝たせてもらうよ」



 俺はそう自信気に言い放つのだった。

次話 『料理対決』


下の☆☆☆☆☆から作品への評価ができます。

感じたままで構いませんので、よろしくお願いいたします。

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