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37.*帝国皇帝の狙う先


 ********



 帝国軍最強と謳われる序列一桁ナンバーズ


 一騎当千と恐れられる彼らが、三人も集結することは珍しい。


 序列第八位の”岩人形師ゴーレムマスター”であるエドウィン・ローグ。


 それから序列第六位の”魔獣傀師パペットテイマー”に、序列第四位の”魔殲滅師ルーンウォーカー”。



 彼らは今、落ち着かない様子で一台の馬車を出迎えた。



「へ、陛下……。こんな前線までお越しいただき恐悦至極……。」

 序列四位の”魔殲滅師ルーンウォーカー”ことゼスターが、馬車の中から現れた帝国皇帝を前に膝をつく。



 皇帝自らが今回の『超古代文明人拉致計画』の作戦指揮を取ると言い、ラングフォード湾岸都市から数km程離れた森の中にある仮設前哨基地にやって来たからだ。



「うむ。」


 通信手段が伝書鳩や早馬程度しかないこの社会では、現場指揮官が現場に出向くのは当然だ。


 だが、皇帝自ら現場指揮官になることなど前代未聞のこと。


 それほどまでに皇帝は、超古代文明人である夜斗に執着していたのだった。



「それで、作戦の準備はどうなっておる。」


「はぁいっ。もう2日もすればー、追い込んだ魔獣ちゃん達がー、ラングフォード湾岸都市を襲うと思いますよぉ?ニッヒッヒ。あの数ならぁ、きぃっと街の人はぁ、みぃんな魔獣ちゃん達の餌になると思いますけどねぇ〜。キャッキャッキャッ。」


 序列六位の”魔獣傀師パペットテイマー”。20代後半の女性だが、可愛らしい声とは裏腹に汚く笑う。


「うむ。待ち遠しいものだ。」



 皇帝の考えた作戦は次の通り。


 フェーズ1

 夜斗のいる湾岸都市周辺の森を焼き、”魔獣傀師パペットテイマー”が魔獣達を扇動し街を襲わせる。


 フェーズ2

 街が魔獣達に兵力を割いている間に、ゴーレムを街に侵入させ、城壁内で暴れ混乱させる。


 フェーズ3

 混乱に乗じて”魔殲滅師ルーンウォーカー”が夜斗を攫う。



「よいか? 決して帝国の介入を悟らせるなよ?」

「「はっ!」」



 他国の街に”魔獣襲撃モンスタースタンピード”を意図的に仕掛け、要人を拉致したなんてことが露呈すれば、大陸中の国家や教会をも敵にしかねない。



「陛下っ! お願ぇございやすッ。」

 ”岩人形師ゴーレムマスター”のエドウィンが口を開く。


「なんだ。」


「俺は先日、その古代文明人にハメられやした。」


「知っておる。貴様のせいで国内外から余は批判を受けておる。貴様が王国に捕まるなど失態を犯すからだ!」


「つ、次こそは! 次は奴を絶対ぇにボコして連れてきやすから! 俺とゼスターの役割を変えて下せえ!」


 エドウィン・ローグは以前ミリア嬢を襲った際に、夜斗に返り討ちにあったことを根に持っていた。


 王国と帝国の交渉で戻ってきたとは言え、帝国の代償は高い。


 それは、エドウィン自身にも言えることだった。



「このまま引き下がったら序列一桁ナンバーズの名が廃ります! 今度はヘマしねえッスから!」


 彼は自信げに力説する。



「エドウィン殿。そなたは一度負けている。今回は私にーー」

「ゼスター! あの時は不意打ちを喰らったからだッ。ガルグ執政官からは穏便にやれと言われてたし、ゴーレムも急造品で調整も十分じゃなかったからだッ」


 エドウィンは、敗北は自分のせいではないと示す。



「それに、見てくだせえ!」


 彼の指差すところには、前回のものより二回り程小さい2m程のゴーレムがあった。


「小型にした分、俊敏性が高くて屋根だって走れますぜ! そのヤトって男を捕まえて街から連れ出すのに、ゼスターが担ぐより俺のゴーレムが担いだ方が速いと思いやす!」


 エドウィンの訴えに皇帝は顎に手を当てる。


「……うむ、一理ある。しかし、なぜあんなにテカっておる。油でも塗っておるのか?」


 皇帝の目に、岩とは思えない光沢が見えて不思議がった。


「超古代文明人対策ですぜ! あいつは気持悪ぃスライムみたいな液体投げてきやがりました。あれのせいで俺様のゴーレムは……。クソッ。思い出しただけでイラつくぜ……。でも、今回は対策万全ですぜ! これで負ける気がしませんぜ。陛下ッ! このエドウィン・ローグにどうかあいつをブチのめす機会を!」



「ふんっ……好きにしろ。殺さず連れてくるのだぞ。」


「へ、へい! お任せくだせぇ!」


 皇帝はエドウィンの憎しみの混ざった熱意を受けて、了承するのだった。



序列一桁ナンバーズである貴様がよもやまた失態をさらすとは思わんが、もし次も失敗するようなことになれば……分かっておるな。」

「……ッス。」


 エドウィンは皇帝の冷たい視線を浴びながら、再び夜斗に挑めることに闘志を燃やした。



「では。作戦を変更する。」


 皇帝は、即座に配置変えを伝える。


「エドウィン。貴様は先に街に潜入せよ。」


「ウッス。しっかし、陛下。それでは俺様のゴーレムは……。」


 平時にゴーレムを街の中に入れるのは不可能だ。城門前で大問題になる。


 ”岩人形師ゴーレムマスター”とはいえ、ゴーレムを作るには手頃な岩が必要な上、街の中では作れないだろう。


 エドウィンは、ゴーレムなしでは他の序列一桁ナンバーズに比べれば劣る。



「案ずるな。貴様のゴーレムは魔獣が街を襲った際の混乱に乗じて、ゼスターの遠距離砲術魔法で街の中に送り届けてやる。」

「さ、流石っす、陛下! それなら、俺様の最強のゴーレムで奴をぶちのめしてーーいや、とっ捕まえてきやす!」

「うむ。くれぐれもしくじるなよ。」




 かくして夜斗の拉致作戦が、人知れず始まろうとしてた。



 ********

次話 『モンスタースタンピード』


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感じたままで構いませんので、よろしくお願いいたします。

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