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2度目の召喚


「よくぞ応えてくれた。勇者達よ」

 王冠にふさふさのマントを身に纏った偉そうなおじさんの第一声が、これだった。

 俺は、いや、俺達は顔を見合わせた。

「あの、ここは?」

「おお、申し訳ない。ここはアールズハイム王国じゃ。其方らからしてみれば、異世界の国じゃな」

 『異世界』

 何とも信じられない事だが、信じない訳にはいかない。だって、兵士さんは全身を鎧で固め、腰には剣を、手には槍をもっている。

 日本なら、イタいコスプレか銃刀法違反覚悟のヤバい人達だ。

「ん? 1人多いな」

 おじさんの発言に周りがざわつきだした。

「どういう事ですか? 1人多いって?」

 おお。白澤くん、君は勇気があるね。

 白澤結城、斎藤快斗、桐嶋七海、聖黒霧。

 男3人に、女性が1人。

 この中で勇者として召喚されたのは3人。

内、1人が違うという事だろうか?

 おじさん・・・いや、王様の秘書(宰相)らしき女性が耳打ちした。

「皆、<ステータスオープン>と唱えてくれんかの」

 言われるままに<ステータスオープン>と唱える。

 すると、全員の目の前にウィンドーが表示された。

 白澤、勇者。斎藤、剣聖。桐嶋、聖女。そして、当然ながら俺だけ違う。

「やっぱりね。だと思ったよ」

 俺の言葉に、全員、ざわめく。

「どういう事じゃ? やっぱり、とは?」

「だって、2回目だし? てか、思い出したよ。スティーブ。そして、クラリス。お、出世したんだな、ガルム大佐?」

 兵士達が槍と剣を構える。口々に「不敬な」と、叫ぶが、

「鎮まれ!」

 国王スティーブンソン=フォン=アールズハイム陛下の叱咤に、構えを解いた。

 白澤、斎藤、桐嶋の3人は距離を取る。

 それを見て、俺は苦笑した。

「忘れたかよ? 俺だよ、クロムだよ」

「な!? クロム=ヒーリンか!?」

「大正解。ほら、これが証拠」

 俺はネックレスを外して、国王スティーブに投げる。

「こ、これは!! 双剣に黒龍の紋章!!ま、間違いない。儂が10年前に与えた物じゃ」

 それ即ち、【先代勇者】の証。

 ざわつく兵士達は、一斉に跪く。

「おお、クロム!! クロム!!」

 玉座のスティーブが、座ったままよろめいた。クラリスは涙を流し、ガルムは目を真っ赤にしている。

「ひ、聖くん? どういう事?」

 動揺して止まない桐嶋七海が、訊く。

「ん? ああ、簡単。俺、この世界に召喚されたの2回目なんだよ。桐嶋さん達が当代の勇者なら、俺は先代の勇者って事だよ」

「先代の勇者・・・? 聖くんが?」

「そういう事。ほら、これ」

 クロムは、ステータスの【称号】を示す。

【称号】先代勇者 冒険者 赤髪の悪夢

とある。

「赤髪の悪夢か。懐かしいな」

「ふん。1人で50000の魔獣を屠った、赤髪の悪夢か。返り血で黒髪が真っ赤に染まっていたからな」

 ガルムも懐かしそうに微笑む。

「ひ、1人で50000の魔獣を!?」

「そうだ。何だ知らなかったのか?」

 桐嶋達はブンブンと首を横に振る。

「そりゃ、知らないさ。言ってないからな」

「何故だ?」

「決まってる。向こうの世界でそんな事を言ってみろ。頭が狂ったってんで、間違いなく病院送りになる。そんなの困るからな」

「確かに。それは困るな」

 ガルムとクロムは豪快に笑った。

「で、どうする。俺はあくまでも先代の勇者だ。今回は、ただの冒険者でいいんだろ?」

 スティーブは、困った顔をする。

「うーむ。出来れば助力を頼みたいのじゃが。駄目かの?」

「助力ねぇ」

 クロムは、桐嶋達のステータスを見る。

 全員、レベルが20前後。

 白澤は勇者で、火属性魔法の遣い手。

 斎藤は剣聖で、水属性魔法の遣い手。

 桐嶋は聖女で、光属性魔法の遣い手。

 全員、初級魔法は使えるようだ。

 比べて俺は、レベル1200。全属性魔法を帝級まで使える。称号は、冒険者だが、プラスαで【殱滅の撃墜王】となっている。

 魔王を始め、邪龍、魔人、魔族、魔獣と、世界を脅かす者を片っ端から討伐していたからだ。

「僅か10年で、魔王が復活したとでも言うのか。スティーブ?」

「いいや、違う。魔王など足下にも及ばぬ。相手は魔神じゃ」

「魔神・・・シヴァルツか!? 馬鹿な。奴は俺とお前とガルム、クラリス、エレン、協力的ではなかったが、7神の力で浄化したじゃないか。また、邪心を抱いたというのか」

「その通りなのじゃ。神託があっての。完全に邪神に堕ちるのは時間の問題だと言うのじゃよ。そこで、な」

「勇者召喚の儀式を行ったという事か」

「うむ」

 クロムは頭をガシガシと掻く。

「どうして、もっと魔力を注がなかったんだよ。俺の時だってレベル100越えだったじゃないか? こいつらはレベル20前後。魔界の最下級魔獣だって30はあったぞ」

「うむ。じゃから、助力を頼みたいのじゃ」

「時間は?」

「後、1年」

 クロムは絶望的な顔をする。

 それを見た白澤が恐る恐る訊く。

「な、なあ。聖。俺達って、弱いのか?」

「ああ、弱い。近衛騎士団の中級騎士並だ」

「聖が倒した魔王のレベルは?」

「800。お前らの40倍だな」

「邪神のレベルは?」

「当時で2000越え。今は・・・恐らく3000を超えている筈だ」

 白澤達は、余りの実力差に愕然とし、気絶した。

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