私
まず、なにから話そうか。
君が知ってることがいいよね。
…あ、まあ全部知ってるか。
ずっと一緒にいるもんね。
どっから話そうか…。
うん、やっぱりここからにしよう。
高校に入学してからの話。
私には大切な友人がおりました。
中学1年生のときに知り合い、そこからずっと付き合いが続いている親友です。
高校は離れてしまいましたが、休みの日には互いを遊びに誘って2人で出かけたりしていました。
えぇ、すごく仲が良いでしょう?
私にとって初めての親友でしたし。
幼い頃の私は入退院を繰り返しておりましたから、病気が移るとかなんとかいじめられ、友人なんてできませんでした。
私たちはずっと変わらない。
この仲が良いままなのだと思っていました。
…ですが、変化の時は思ったより早く来てしまったのです。
アニメが好きで、現実より2次元が好きだった友人に彼氏ができたのです。
もちろん私は祝福しました。
彼女の良いところは、人一倍知っていたので。
…ですが、ここが私と彼女の分岐点だったのです。
彼女はどんどん綺麗になりました。
メイクをし、服に気を使い、いわゆるイマドキ女子になっていたのです。
えぇ、どんどん私は置いていかれたのです。
私は彼女との仲をここまでにしたくなかった。
彼女に追いつくために必死に努力しました。
自身もメイクの勉強をし、ファッション雑誌を見て、流行りの曲を聞く。
彼女はそんな私をとても褒めてくれました。
そんな彼女の言葉が嬉しくって、どんどん変わろうと努力しました。
…途中から、彼女の顔が寂しくなっていくのを知らずに。
私は変わっていきました。
そんなある日、ついに彼女にこう言われたのです。
「悠歌には、変わらないでいて欲しかったなぁ。」
それ以降、私たちが連絡を取り合うことはありませんでした。
いえ、彼女に一方的に切られたのです。
私は酷くショックを受けました。
そして、自分に絶望しました。
彼女から離れた私に残ったものは、何も無かったから。
中身のない、ただの波に飲まれる人形。
それしか残りませんでした。
私は自分を責め立てました。
どうして彼女の思っていることに気がつけなかったのか。
…いえ、こう責めるのはいけませんね。
きっと、私は心のどこかで気づいていたでしょうし。
中身が無くなるほど自分を変えた私を責めるべきでしょう。
親にも、他の友人にも、先輩にも、先生にも、私の笑顔が嘘っぽいと言われました。
心から笑っているのに。
私から彼女という存在がいなくなっただけで、こうも変わるとは。
私はせせら笑ってしまいました。
馬鹿な私。
だから、みんなから嫌われるのよ。
真面目に生きてるから、こんなになるのよ。
だから私は人生をリセットするために、甘いケーキを用意しました。
ケーキはお好きですか?
あの素敵な甘いケーキが、人によっては毒になることなんて知らないでしょう?
えぇ、私にとっては毒なんですよ。
食べたら最後、お腹が痛くなり、気持ち悪くなり、吐き気がし、喉が痒くなり、息ができなくなります。
まさにリセットにはピッタリ。
誰も来ない学校の教室で、私はそれを口に入れました。
なんて重い女なんでしょう!
私もそう思います。
でも、人の心なんて案外呆気なく壊れてしまうもの。
…私はそのココロを治すのに疲れてしまいました。
さて、喉が痒くなってきました。
私は横にでもなりましょうかね。
走馬灯が走り始めるのを待ちながら。