国家改革計画②
今回の計画で最も重要なのは工業であるとイオは思っていた。
「次に工業だ。俺としては今回の改革のメインはこっちを優先したいと思っている」
イオはこの世界に来てからずっと思っていたのだ。この国の工業力はこの地域なら高いが、西にある国々とは比較にならないほど貧弱なのである。そこでイオは工業化をするための地盤を貴族から取り上げた土地と一緒に作り直そうとおもっていたのだ。
「まず工業の集団化、そこから重工業の工業化を進める」
「イオさん、工業も農業の様に集団化させるのですか?」
「そうだ。貴族の力が弱まった今やらないと今後、どんどん西の国々においていかれるぞ」
現に前に西の列強の国々に訪問した時、イオが思っていたよりも技術が進んでいて驚いていたくらいだ。
「そのためにはまずは都市の工業化、特に第2都市『リヴニスク』を優先する」
「首都の『ムルマンスカヤ』を工業化するのではないのですか?」
イオもスヴォーロフが言うよに首都を工業都市にするのも最初はここ、ムルマンスカヤを発展させるのは考えた。
「確かにこの国ではここが一番工業も盛んだ。しかし、あくまでここは政治を行い、この国の物流の中心地だからだ。」
だからイオはリヴニスクで工業製品を作り、それをムルマンスカヤに流すことで交易で収入を得るということだ。
「でもこの国にはそんなことを出来るお金があるんですか?」
「それは今回貴族からむしりとった金で十分に行えるし、本当は国家予算の三割位使っている魔法使い宛のの金を使うつもりだったから問題ないぞ」
ここまで魔法使いに金を使っていたのは父のヨーゼフの影響が強かったからだ。
「後、せっかくだし穀物や毛皮を工場で加工して他国に売るために第三都市『アルハグラード』も直接手をつけるか」
この国の主な交易品は西の国々に売るための鹿等の毛皮だ。しかし、毛皮を入手するためにはそれなりの人手が必要だし、加工された毛皮の中には加工の仕方が悪く、価値が下がってしまう毛皮も多いので同じように一点集中にして作った物を売ろうという事だ。
「イオさん、そんなにいきなり行うと人がたりません」
「人が足りない?君はこの町に職を求めてやって来た人達は見たことないのかい?」
「まさか…」
「首都だけで浮浪人は約500から1000人いるし、国全体で見ると2000人はいる。彼らを雇ってそこで働かせれば良い。それに貴族領にいた200人の官僚もいる」
いわゆる国営の工場を作ろうと考えたのだ。まだこの世界で存在していない方法を行おうとしているのだ。
「俺の計算としては改革は五年以内に完了させるつもりだ」
「ご、五年ですか!?」
「なに、2000人の労働者とリストラされた200人の元官僚を使っての事だ。別に一から都市を作る訳じゃないから真面目に仕事をすれば絶対に終わる。アレクセイは各都市の土地の確保、スヴォーロフは『農業大臣』に任命するから農民達の指導をするように部活達に伝えておいてね。俺はこれから農民達の土地移動の要請や人材確保、法律の作り直しと新しい大臣の発表で忙しくなるからな」
二人が唖然としている中、イオは部屋から出ていった。
「…お互い頑張りましょうアレクセイ殿…」
「…私は失敗するリスクが低いですけど、これ失敗したらスヴォーロフ殿は責任を問われるので大変ですよ」
二人はこれからの仕事を絶対に成功させると固く誓った…
次回は実際に改革を進めます。